小説しょうと四天 | ナノ

キミとオレの関係図1


「財前アレ頼むわ」

「ほなら俺はあっちの頼みます。はい、」

「これな、ほれ」

「ども」

「そういや、アレがあそこに売ってたで」

「マジすか。ほなら俺帰りに寄りますわ。謙也、さんも確かアレ買うんでしょ。一緒に行きましょうや」

「ええでー。今日は財前のアレもあらへんしなー」

「あ、そういや、アレのアレがああなりましたわ」

「マジか?そかー。あれがなー」





「お前ら何話してるか分かっとる?」





「「?おん」」

お前らほんま仲ええよなー、と同級生に囁かれてそうかー?と曖昧に返す。
財前もそんな感じに対応しとる。

なるほど、というか今の会話も匂わせてまうもんやな。





俺と財前、いや、光が幼なじみやって。









「あー、何か幼なじみって隠すのめんどくさいな。」

「ッスね。けど、謙也と幼なじみやからってレギュラー入りしたとか思われたら嫌やし。つか、謙也コレ見てや!!昔使っとった64見つけたねん!!一緒にやろうや!!」

「あー、はいはい。それやったらファミコンやろうや。俺も見つけてん」

「OK。ほならTV設置してー……アレ、何や点かないし。オラッ!!」

「うぉぉい!俺のTV叩くな!!」

「うっさいねん。お小遣2万がケチケチと。俺なんかお小遣その四分の一やし。」

「やからってそれはひどいっちゅーねん。あ、点いた」

「お、さすが俺。謙也はコントローラー青でええ?俺黄色ー」

「何で黄色なん?」

「この年期がかかったくすんだ黄色がええねん。まるで謙也の色褪せたブリーチみたいや。もし上手く行かなくても遠慮なく床に叩き付けられる」

「この野郎……ゲームやる前に面貸せや」

「ちょ、謙也さん辞めて欲しいんスけど。キモイ邪魔」

「いきなりよそ行き用の顔になんなや!!」

「あはははっ、謙也もやろ」

「……チッ」

「舌打ち行儀悪ーい」

「光やからええねん。」

そう言って64を構える。
やるのはスマブラ、俺はここは一択、ピカ●ュウや。

「フォッ●スもまあまあ足速いけどなー。やっぱりピ●チュウやろ」

「さすが謙也。柄は変わっても低脳なんは変わらへんな」

「お前は一々喧嘩売んなや。お前はその明るさを少しでも学校で見せたら男子にも人気者やで」

「謙也は今の男前さを学校で出したらさぞかし白石さん並にモテるで」

「別に彼女今欲しないし」

「謙也プラトニックやんなー。学校のアホな謙也を見てる奴ら驚くやろな。」

「ああー!!彼女欲しい!!出来たらこう、胸がボンッてした柔らかそうな女の子がええなぁー!!!貧乳?有り得ないわー!!………ってアホな感じの俺やしな。つか貧乳も悪ないやろ。まあ女の子は今はいいからそれで通すけど。」

「ほんまお疲れさんやわ。」

「何かなー。外やとついこう、明るく気遣かってまうねん。」

「俺は外で人に愛想よくする意味が分からないわー。」

「つか俺あんな光を最初見たときは別人かと思ったでー。」

「俺も外の謙也見た時頭おかしなったと思ったもん。お互い様やし」

二人してカチカチカカカ、とコントローラーを操作する。
やっぱりコンピューターは弱い。俺と光に吹っ飛ばされて簡単に星になった。

「よっしゃ行くで謙也!一騎打ちや!」

「はいはい。座れってやれや。落ち着かんから」

まあ、ここまでの会話で分かるように、俺と光は幼なじみ同士である。そしてまあ、外面を外す数少ない相手や。
光はぶっちゃけ本当は男子中学生らしく無邪気や。無邪気クールっていう新ジャンルかと思うとる。
対して俺は、外面に比べ、かなり落ち着きがある。
光によればヘタレな男前、やなくてちゃんとした男前、らしい。
結構頭の中はぐるぐるしとるけど、気遣わんでええ分決断は早いからな。
それがヘタレさを上手いことカバーしとるみたいや。

「うっ、ああっ!」

「とっ、よ!!」

「くっ……仕方ないわ。俺の必殺技!」

「ははん、カー●ィに何が……」

「吸い込む攻撃!!」

「いや吸い込みは攻撃やな………アアアア!!!!」

「ふ、これが両刃の剣。名付けて吸い込んで自殺や!!」

「良い子のゲームなんにそのネーミングはあらへんやろ……あーあ、負けたー」

ゴト、とコントローラーを投げ出して転がる。
光も俺に習って転がった。
かれこれ光との仲はもう10年は裕に超えている。
ぶっちゃけ誰と居るよりも光といる時がいっちゃん楽。いっちゃん好き。

…………男前なんやと言われる度に、不安感が湧く。
そんなんじゃ光に好きになってもらえない、って。
けど、1番バカなんはそんな有り得ないことを考えとる事や。

何で、年下の同性の幼なじみに惚れたんやろ、アホみたいや。

確かに俺と光は異常に仲はええ。
けど、俺が想う好き、と光が俺に想う好きはちゃう。
いや、光が俺に想う好きも俺にも確かに存在すんねん。幼なじみ愛、っちゅーやつ。
けど、俺はその好きともう一つ、恋愛感情なんちゅう好きを持ってんやから、笑えへん。

光の前でええかっこしとるけど、実際は乙女な俺………


ああ、気持ち悪い。



















「んで、新レギュラーは……財前!お前や!」

「!……え、マジですか」

「マジも何も大マジや。頑張りや、財前」

「はあ………」

今光の手はぴくりと動いていた。恐らくガッツポーズをしたかったんやと思う。
一応外面の財前はクールな毒舌って感じやからそれを守ったんやろな、光も大変やで。

「よかったやん財前!!おめっとさんっちゅー話や!!やった、やったな!!」

「何で謙也さんがそないに喜んでるんスか………」

「そりゃあ大事な後輩がレギュラー入りしたら嬉しいに決まって―――」














「ほんまにただの後輩なん?」














小春の言葉に俺の表情が固まったのは、光は分かってしもたかな。
いや、分からないやろなー。
やってコイツ、激ニブやし。

しん、と静まり返った部室に、ああやっぱり怪しまれてたんやなー、と思った。仲良過ぎたんやな。

「あー……じゃあ俺レギュラー入りした訳ですし……」

「え?あ、ああ。せやな」

『幼なじみ』っちゅーことを、ばらすんや。
他には何もあらへん、分かってんやろ忍足謙也。

「俺と謙也さん、幼なじみなんですよ」

「「「…………は?」」」

どこか間の抜けた、見当違いでしたというような声を、レギュラー皆が出した。

「え、いや……」

「付き合ってるんや、ないん?」

「?確かに10年以上の付き合いですけど……」

「そ、そうやなくてやな、謙也と財前はホモで付き合ってたんやないかって話や」

あくまで冷静にそう言った白石に財前は目を開いて、ポカンとした顔をした。
あ、容量オーバーの顔や。

ゆっくりとばれないように息を吸う。
そして覚悟を決めてゆっくりと話し出した。

「そんくらいにしたってや。財前が意味不明って顔してるやろ。残念ながら皆の期待には応えられないわ。俺と財前はただの幼なじみや。それ以上でも以下でもあらへん。俺達の仲をそうやって簡単にホモにせんといて。」

少し呆れたようにそう言えば、今度は皆が俺を見て驚いたように俺を見てきた。

「謙也が……謙也が落ち着いとる!」

「天変地異の前触れや!!!」

皆が皆俺を驚いたように見てくるので、ああ、と合点が言った。
今、外面外れてもた。

「………あ、ああ。ほなら、……ちょちょちょ!!堪忍してや!!俺とひか、財前はそんな変な仲やないわ!!どうしてそうなんねん!!ホモはラブルスで十分やろ!!……ってのが俺っぽいやんな、スマンスマン」

へへ、と笑えば皆が皆は鳩が豆鉄砲を喰らった顔をしてびっくりしていた。
それに更に笑う。

そうや、そろそろレギュラーの皆にも外面外さなアカンかったし、頃合いやろ。


光にだけ、っちゅーのが俺ずっこいねん。

光を特別扱いしたところで何も変わらん。繋がれることはあらへん。分かってるばすや、忍足謙也。落ち着けや。

いい加減、割り切れ。

「なあ光。お前も――――」

振り向いた先には、眉にシワを寄せてどこか考え込んでる顔をした光が立っていた。

「………光?」

「!あ、いや……何でもないッスわ」

どこか複雑そうな、それでいて上手く物を飲み込めなかった、というような変な笑顔をした光にふつり、と希望が一瞬湧いた。

もしかして、て、アホみたく。

「いや、何か謙也とホモとか考えられんな、って思っただけやから。気にせんで」

「っ………あ、あったり前、やろっ。なにいきなり光まで変なこと考え出してんねん。やめてくれやー」

困ったように笑えば光はへにゃり、とした笑みを浮かべながら言った。

「謙也をそんな風には絶対見たないわー」


その言葉に俺は、スコップで土が簡単に掬えるように、ザックリと、心がえぐられた。
















つらい。


















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