小説しょうと四天 | ナノ

キケン恋愛!
キケン求婚!



「アカン!!!」

「なんでや謙也クン?」

「いや俺達男やし!!?」

「愛し合ってたらんなん関係ないわ」

「関係あるあるめっさある!!つか俺達恋人同士でもあらへんし!!!!大体!!」

ああクソこの幼なじみは爆弾投下が大好きだなっ!!!!

「俺未成年!!光は成人しとる働く大人やろ!?」



普通のラブドラとか(月9とかでやっとる)では未成年の女の子が成人した先生を好きになるっちゅーもんや。
なんに男同士ってこと事態おかしいんにイイ大人が中学生に



「俺と生涯を共にするパートナーになって一生傍にいて。愛しとるねん謙也クン。婚約者になって下さい」



は、ありえへん!!!!!!
なにその無駄にハイクオリティーな熱い告白!!!
んな臭い台詞を何で素面で言えた!!
そして1番困るのがその台詞がどんぴしゃで光に似合っとって、それに何処かときめくアホ―――つまり胸きゅんする俺がいるっちゅーこと!!真性か俺は!!アホか!!いやアホなんだけど!!ときめく時点で!!!

「せやから俺は光と付き合ってないし!!責めて童貞卒業したいわ!」

「さすが謙也クン。自分が掘られる側って分かっとるんやな。さすが俺の嫁」

「誰が嫁じゃボケ!!!!」

「年上にボケはないやろー」

「じゃあ年下に求婚すんのもないやろ!!」

ダメだ昔のかっこよかった(いや今も昔も顔はカッコイイんやけど)光はどこに行ったんや。
俺がふざけていて誤って転んだらおんぶして帰ってくれたカッコイイ光はどこへ!!?
あの広い背中に憧れて光と同じテニス部、同じ中学に入ったのに!!
一体何があって中学生の男の子に求婚するキケンな大人になったんや!!

「………謙也クン、好きや」

「ッ……………うん」

けど、ふとした時にいう『好き』という言葉には言い知れぬ強さがあって。
俺は顔を赤くして視線をずらすことしかできない。
光に、光が好きというキモチが伝わりそうで、怖い。










愛してる、うん、そうや、俺は光が好きや。
昔からずっと好き。
だから、絶対に応えたない。
光には、もっと相応しい女の子がきっといるっちゅー話や。








「へ?光に傘?」

「そうなんよ。謙也クン悪いんだけど持っていってあげてくれないかな?光が勤めとる音楽会社に。あの子、低体温やから雨なんか濡れたらすぐ風邪引いてまうしね」
「………うん、ええよ」

「さすが光の未来の嫁。ええ子やなぁー」

「嫁ちゃう!!!!」

「え…………まさか婿希望なん?」

「もっとちゃう!!!!」

しかし悲しいかな。
光は二十歳になってから周りの目も憚らずに求婚してくるので、忍足家といい財前家といい求婚しとる事実は公式である。


「光には…………もっと普通な………」

「え?」

「んーん!!ほな行ってきます!!」

靴を履いて光の家を出る。
後ろで光のお母さんが傘やら何やら言っていたけど聞こえないことにして、
浪速のスピードスターらしく何かを振り切るように俺は全力で走った。

















「財前!この歌手次に新曲作ってるらしくて……」

「いつできる?合わせてミュージック番組2、3交渉するわ」

「財前、新譜の編曲頼んでいいか?」

「了解そこ置いといて」

「財前!!コマーシャルに出た歌手大当たりや!!仕事殺到しとるんやけど!!」

「まずは外堀からや。大手さんより常連さんに挨拶に伺わせてオファー取ってや。」






光は、昔から作曲したり何なり音楽に興味があって、
専門学校で音楽関係の仕事をたくさん学んで、
今いる音楽会社で頑張ってる。

そんな光を好きな素敵な女性はたくさんいる。
なら俺みたいな男より、素敵な女の人を嫁に貰うのが幸せやと、最近ようやく15歳になった俺は、思うようになった。
昔とは違う。




だから、いくら光が好きでも応える訳にはいかん。
光の幸せを、考えたらそれが1番なんや。



「あれ?君どうしたの?」

ふいに話しかけられて顔を上げると綺麗な女の人が立っていた。
む、胸デカッ!!エベレストかっ!!つか足腰ほっそ!!こんなお姉さんで童貞卒業したい!!

ってアカン!!!
思わず見とれそうになって慌てて犬のように頭を振った。
ああクソ!!こんなんやるから光に謙也クンはわんこ属性やな、なんて言われるんや!!
しゃーないやん!!癖なんやから!!!


「え、えーっと……ざ、財前光、さんの幼なな、……知り合いで傘を届けにきたんですけど………」

「ああ、財前さんの!待ってて今呼んでくるから。えーっと………」

「謙也です。知り合いの、忍足謙也」

カツカツとヒールを鳴らして光に歩いていく女の人を眺める。
あんな女の人に生まれたかった。
ああいう女の人に生まれてたら喜んで俺は婚約者になった。んで、光との子供も産めたし、歳のさカップルや、ってふざけることもできた。


現実は、遠い。


綺麗な女の人が光を呼んで、光はその綺麗な女の人と並ぶ。
あまりにもお似合いな美男美女のカップル。
そんな二人を見て、俺は急激に泣きたくなった。




やっぱり光は、遠すぎるんや。






「なんや謙也クンわざわざ傘届けに来てくれたん?ちょお待っててや、もう仕事終わるから一緒に帰ろ。」

「お、おん……」

「……………元気ないな、大丈夫かいな。気分でも優れないんか?」

「へ、平気………」

「………ならええけど」

そういって少し早足で自分のデスクに向かう光。
見えた背中はやっぱり大きくて、俺は今度こそ見とれた。

あんなに綺麗な女の人がいるのに、あんなに胸でかくて足腰細い女の人がいるのに。

やっぱり俺は光に見とれてしまうんや。



「…………つってもさすがに抜いたことはあらへんけど」

女の人のエロ本みて興奮して抜くもん俺。
俺は光が好きなだけで、真性やないんやな。よかった。
うんうん頷き下げてた顔を上げる。




…………目の前にドアップでイケメンがいた。

「ぅおわあ!!な、なんやなんや光!!そないに顔近づけたとこで見えるんは中学生特有のニキビやらなんやがグロテスクに残酷によく見えるだけやで!!?あと顔のパーツが無駄にでかなるだけや!!てかイケメンなんやからいきなり顔近づけんなや!!心臓に悪いっちゅーね…っと、ととっ!!……イダッ!!」

俺は浪速のスピードスターよろしくズサッと素早く後ずさって転んだ。
それに光はケラケラ笑いながら手を貸してくれた。
決してこれは他意なくやった訳やから不可抗力なんや、
と暗示つつ光の手を借りる(ちょっとの下心はあるんは否定せんけど)。

俺より大きい光の手。
昔はよく繋いでたっけ………

「大丈夫か謙也クン?昔っからそそっかしいところは変わってないんやなぁ。つか謙也クンニキビない綺麗な肌やん。女子は羨ましいやろな。つかなん?ときめいてくれたん?嬉しいわー謙也クン」

「ア…アホ抜かせっ!」

誰がときめくっちゅーねん!!

と言い返すが自分の心臓がパラリロパラリロ躍って速いんは否定できん。
いや仕方あらへんやろ!!
あんなイケメンがドアップやで!?
女子やなくても心臓はバックダンサーの如くパラリロするわ!

「謙也クン可愛いなあ。そうやって表情がクルクル変わるんホンマ好きやで」

「!!!カッ、帰るで!」

「カッってなんや可愛えなぁ。けど、せやな。雨降ってきたし帰ろか」

そういって歩き出した光の跡をいそいそと追う。
俺は隣より後ろから光を見るのが堪らなく大好きなんや。
決して後ろ姿フェチちゃうで!


しかしそこで俺は大事なこと――大変なことに気づいてしまった。


















「俺自分の傘持ってきてないやん」




光のお母さん、無視してごめん。
ちゃんと話しは聞くべきでした。







「で、結果こうなる訳やんな……うん、分かってた。分かってたで。男二人で相合い傘なんて寒過ぎるわ………」

光と横に並んで慣れた帰り道を歩いていく。
だけど慣れた道でもこの状態はイロイロ俺にはキケンやねん!!
心臓って人生で何回動くか決まっとねんで!!
こんな光の近くにいたら心臓まで浪速のスピードスターやっちゅうねん!!
俺の寿命縮まったら光のせいや!!責任とれ!!……なんて言うたら嫁にされるわな、うん、言わんとこ。

チラ、と光の横顔みる。
乙女か、という話しにはなりそうだが光の横顔も決して嫌いじゃない、むしろかなりときめく。(てかイケメンやからどの角度から見てもイケメン何やろうな。それもそれでムカつくけど)
鼻から顎のラインにかけても綺麗やし、整った眉に、量が多い凛々しいな睫毛、目は切れ長でかなり(こう言うのもアレやけど)色っぽい。

まあ、とどのつまり光の横顔はホンマにイロイロとクるから苦手やっちゅーことや。

「謙也クン、」

「!!ナッ、ナニ!?」

「声裏返っとるで?大丈夫かいな。」

「ヘッ、平気ヤ!!」

「……ならええけど。ちょお雨脚強なってきてん。相合い傘やから濡れてまうし、あそこのレストラン寄って行かん?」

光が指差した先にはチェーン店で有名なよくあるレストラン。
あそこは確かオムライス美味かった気ィする。

「寄ってってええん?」

「別に平気やろ。いつもより仕事早く終わったくらいやし」

「なら行きたいわ!!」

「ん、ほな行こか」

ポン、と俺の脱色してギシギシになった髪の毛に手を置いて光は微笑した。


アカン、かっこええ。






「ほな俺オムライス!!」

「夕飯前なんに大丈夫かいな。あ、俺は善哉5つな」

「俺は育ち盛りやっちゅーねん!!そういう光こそ5つも善哉食ったら太るで。将来メタボやで。メタボリックやで」

「甘いもんは別腹や。大丈夫や、謙也クンに付き合ってよくテニスやるしな」

「あ、そっか………」

なんてことない、たわいない話しをしていると間もなくオムライスと善哉が運ばれてきた。
店員さんはどっちの誰にオムライスや善哉を置けばええか迷っとったみたいやけど。

それに二人してケラケラと笑った。






「やっぱりここのオムライス美味かったわー!!ごちそうさまでした!!」

「はいお粗末さま」

光は神のようなスピードで善哉をたいらげた。
どんだけ好きやねん。
そんな光にクスクス笑うと光はまたもや爆弾を落とした。
いやこんな爆弾で慌てるほど光と短い付き合いやないけどな。

「ホンマ謙也クンの笑顔いいわー好きやわー」

ニコニコと光にしては上機嫌な態度。
………今なら、今なら、言えるかもしれへん。


「……………なぁ、光」

「ん?」

「そろそろ、彼女とかつくったほうが、ええんやない?イケメンやし簡単に作れるやろ」

「……………は?」

「いや、ほら!!光いつもふざけて俺に求婚するやん!!それで女の人避けてるんかもやけど、光今、俺と8歳差やろ?そろそろ仕事初めて5年も経つし、いい加減彼女つくっ……て……も………」


戦慄した。
日常で暮らしていく中で、戦慄するなんてこと経験するかしないかかなり微妙なとこやろうけど、俺は今まさに経験してしまった。

俺の中に恐怖が渦巻く。

それほどまで、光の顔は鬼気せまっていた。

「謙也クン、それ本気で言うてる?」

「ッ………!!」

光の目が怖い。
いつも光は目で人に語りかけるから、目を見れば光が何を考えてるか分かる。
伊達に何年も幼なじみをやってきた訳やない。

だから分かってしもうた。

光は今、かなり本気でキレてるんや。


「………俺がそないに軽いキモチで求婚してると思ってたんか、謙也クンは」

「……………………」

「…………もうええ」

だんまりを決めて下を向く俺に、光はため息をついて立ち上がった。
伝票を持ってさっさと歩いていく。
その大好きな後ろ姿が急に遠く感じた。


















そのまま、光は俺を置いて帰ってしまった。


残された善哉が入っていた容器5つ、オムライスの皿、水滴が滴る黒い傘。
そして、泣きそうに顔を歪めた俺が、窓ガラスに写っていた。





















―――――――――――


「…………ただいま」

「あ、お帰り謙也……どないしたん?傷ついたような顔して」

「………べつに。求婚を正式に断っただけっちゅー話や」

自分で言って傷つく。アホみたいや。

「なんか謙也が断るってのも変な話やなー。やって最初に求婚したんは謙也なのに」

「……………………え?」

オカンが言ったことの意味が全く分からんくて、思わずほうけた声を出すと、オカンはあらやだ、と言って話し出した。

「謙也が小さい頃から光クンと結婚する言うたんやで?毎日毎日フラれても懲りずにお嫁さんにしてっ!!って。ホンマアホみたいに光クン追いかけてたわー懐かしなー」

…………ありえへん。
俺が求婚してたくせに光の求婚を冗談にして、最低やん。
最低区最悪町にお住みの忍足謙也さんやん。



ホンマ、最低最悪やん…………















―――――――――――――

朝、フラフラしながら学校に向かう。
浮かぶんは光のことばかり。
通学路で既にここまで考えてたら学校じゃどんくらい考えてまうんやろ。
そう考えると少し、いやかなりげんなりする。
てかどんだけ俺は光が好きなんやっちゅー話や。


でも、光にはもっと相応しい………相応しい………分かってた。
そうやって相応しいとか男同士やから、ってそんなんただの建前や。
ただ自分に自信がなかっただけ。
光は男の俺から見てもかっこええ人種で、幼なじみっていう義理なんや無くても素敵な男の人で、高卒で大手の音楽会社に入ってエリートなんて囁かれる凄い奴なんや。

そんな光に釣り合える男であれる自信がなかった。
こんなしがない中学生である俺が、光に釣り合う訳、って。

逃げてたんや、逃げてただけ。
挙げ句光の気持ちを嘘にして、冗談にして、



素直になればよかったんや。
求婚される度に叫んでたやん。
心の中で必死に、





光が好きや、お嫁さんにして欲しいって。



「そんなん……今更や………」


俺はもう、光に求婚されることなんてないのだから。




















学校に着いたら着いたで白石から皆から帰れ帰れと言われた。
そんなに酷い顔してるん?と白石に聞くと、白石は顔を引き攣らせて、

「謙也Theゾンビ的な感じや」


例えはよく分からんかったけど、本当に酷い顔らしい。
白石が自分で鏡見ぃ、と言われて渡されたコンパクトミラーには、なるほど、

「謙也Theゾンビやな……」

やつれていて目が真っ赤。
うん、ゾンビかもしれへん。
















結局精神的にも体力的にも部活なんてやれる状態やあらへんかったから白石に家に帰された。
かといって家に帰ったところで光のことをぐるぐる考えるだけやから、寄り道をフラフラするしかなかった。

「あ、珍しな。このコンビニ善哉売ってるんや………」

光に買ったろ、と言いそうになった口をバチコンと叩いてため息。
雑誌でも立ち読みして気分を変えよう思ったら、窓の外に光がフラフラ歩いてたら奇声も出るっちゅーもんや。

店員さんの不審な目を感じつつこっちには気付いてない光に目をこらす。


「…………………ん?」

光に違和感。
その違和感の正体に気付いた俺は急いでコンビニで買い物を済ませ、光を追った。



「光!!」



後ろから光を呼んで、光の手を掴んでコンビニで買ったものを袋ごと渡してダッシュで逃げた。
走って走って、頭の中に呼んだ瞬間目を見開いた光がぐるぐる回って、それを振り切りたくて必死で走った。



着いたのは、小さな公園。


ハアハアと息を切らしながら公園の奥に進む。
















せや、ここで俺は光を好きになったんや。

雨がざあざあて降って動けなくて、家に帰れないからわんわん泣いてた俺を、自分の傘に入れてくれた。
肩を濡らしながら一緒に歩いてくれた最近引っ越してきたお隣りに住む8歳差の男の子。

それが光だった。


それ以来毎日毎日光にアタックして、毒舌だった成人する前の光にめげそうになりながら好きだと叫んだ。

成人してから光は俺をすごく大切な人間として扱うようになって、けど、その欠陥がない光を見て、俺は怖くなった。


俺なんかが光を、って。
女の人が相応しいんじゃないか、って。



「光……光………ひか……」




「見つけた謙也クン」


バッと振り向くと息を切らした光が立っていた。
あ、追いかけさせてもうたんや。大丈夫なんかな、風邪気味なんに。

「………バカ」

光はそう呟くと、俺を後ろから抱きしめた。

「やっ……光!!」

「何で……なんでなん……?」

「…………光?」

光らしからぬ何か壊れそうな声音で囁かれ、俺は暴れるのをやめた。

「親すらごまかせたんに何で俺が風邪気味やなんて気づけたん………?」

それに、だって、ずっと俺は光を、

「光、無理してるとき、意地になって、少し背筋伸ばすから。いつも猫背っぽいから、何となく、わかった、だけや」

絞り出すようにそういうと更に強く光は俺を抱きしめた。
ガサ、と光に渡したコンビニの袋が落ちた。
光に渡したコンビニの袋の中身は風邪薬にポカリ。
風邪にはこれがいいと思った。


「好き、謙也クン、好き。軽い気持ちで求婚なんてしてへん。そうやって俺を分かってくれた謙也クンに惚れたんや、好き、好き、好きやで、謙也」

光が俺を謙也、と呼び捨てにするのはそれほど本気だということ。
それに俺の胸が大きく高鳴った。


「…………ゴメン謙也クン。迷惑やんな、」

スルッと俺に回していた手をどけた光。
これできっと最後や。光はもう、俺に―――――

「聞いて、光。俺学校で浪速のスピードスターって呼ばれるようになったんやで。足が速いから」

「…………謙也クン?」

「足が速いからな、追われたらすぐに撒いてまう。けどな、追う側やったら俺凄い有利なんやで」

「……………うん」

「だからな、俺光に求婚されると逃げてまうねん。俺なんかが光に釣り合わない、って。けど、今光が離れていきそうになるのがもっと怖いんや。だから、」

ゆっくりと振り向いて、俺は光に抱き着いた。


「ゴメン光、好き、好き。傷つけてゴメン。けど、好き。光のお嫁さんにして下さい」


「…………謙也、クン?」


驚いたような光の声が聞こえる。
けど、これが俺の気持ちなんや。
光の背中を追ってきた。
光に追われるのに慣れなくて、ずっと逃げてきたけど、今光を追う側になって、気持ちが抑えられんくなった。
キケンな気持ち、光が大好き過ぎて、壊れそう。


「謙也クン、ちょお離れて」

ゆっくりと離されてじわりと涙が浮かぶ。
俺、フラれたんか?

「あー違う違う。そんな泣きそうな顔せんで謙也クン。」

光はゴソゴソとポケットをまさぐると小さな箱を取り出して俺に渡した。

「開けて?」

よくわからないままカパ、と開けると綺麗な指輪。
………かなり高そう、何円したんやろ。

「はい謙也クン空気読んで値段とか考えない」

ばっ、バレた!!
アカン光エスパー!?

「こっちやって長い付き合いなんや。謙也クンの考えとることくらい分かる。そうやって昔から真っ直ぐで素直なとこに惚れたんや」

光は指輪を取るとゆっくりと俺の右手の薬指に嵌めた。

「予約。謙也が18歳になったら結婚指輪渡すから、受け取ってくれる?今は右手の婚約指輪や」

「ひかっ………」

「好きやで謙也。俺のお嫁さんになって下さい」

「うん、うんっ。なるっ!光が好き、お嫁さんにしてや!!」

そう応えると同時に光は俺を強く抱きしめて、ゆっくりと俺に唇を重ねた。



まるで、誓いのキスのように―――――
























キケン恋愛!!キケン求婚!!







(お、なんや今日は謙也The天使みたいやな)
(あんな白石。俺お嫁さんになりました)

そういって首にチェーンでかけた指輪を見せた。
光がテニスするなら邪魔やろ、って付けてくれた。

白石の鳩が豆鉄砲を喰らったような顔を、多分一生忘れないだろう。

もちろん、光の熱い求婚も、生涯忘れへん。




















―――――――――――

あれ、光が訳ありで謙也に求婚する話だったんだがどうしてこうなった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -