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天才とはバカの究極である2







「オサム教師いい加減飲み過ぎですわ…………」

「ええやんええやん!久しぶりに会えた生徒にテンション上がってんねて!!」

「その『久しぶりに会えた生徒』はもう潰れてますけど」

ぐでんぐでんになったスピード先輩と絶頂先輩はすやすや寝ている。
多分さっきの女男共が見たらめちゃくちゃうるさいんやろな。
あ、写真撮って売ったら結構いい値段になりそうや。
株で特にお金には困っていないからそんなんせんけど。


「てかオサム教師。ザルやからって飲み過ぎはあきませんよ」

「そういう財前クンは俺より飲んで素面やろ。ほんまに恐ろしいわ」

「ざる、わく、底無し、エンドレスのどれだと思います?」

「底無しやろ。エンドレスは怖いから勘弁してな」

苦笑いしたオサム教師にくくっと笑う。
たしかにエンドレスは怖いわな。どれだけ酒飲むんやろ。

「な、財前。お前が見てこの二人どう思う?」

「変態とロマンチスト。酒盛りしたからか本音だだ漏れでしたわ。スピード先輩が男でも女でも告白はロマンがないと嫌だとか、絶頂先輩は無駄はぶりすぎて変態扱いされてるとか。この人達、勝ち組って顔しとるから纏めれば残念なイケメンすかね」

「さすが分かってんやん財前クン。あの二人をああ見えて結構めんどくさいと思うし、関わるの大変やろうけど、仲良うしたってな」

そういって微笑んだオサム教師に、俺は仕方がないな、と頷いた。

だって、なかなかに興味が湧いたんや。白石さんと、謙也さんに。










「は?バンド?」

「せや、ライブを俺と白石で結構やってんのや。んでな、今回はギターとベース以外にも入れたいから三人でやりたかってん」

「せやけどやりたがる奴皆ミーハーでな。そんなんや完璧なライブに出来へん。けど財前はそういうのにミーハーやないやん。やから財前、後ろでキーボードやってくれん?」

「………どっちにしろやらな夢バラされてまうんでしょ。やったりますわ」

「「イエイ!!」」

嬉しそうにハイタッチした二人のテンションはおよそイケメンのなるテンションやないけど。

それでも、

「今みたいな二人のが観察甲斐がありますわ」

「……………ありがとお財前」

ふわん、と嬉しげに笑った謙也さんに、俺の胸がまた痛みをともなって、胸骨圧迫。







三人で、それからは大学で生活してはバンドの練習を重ねた。

二人といるのは、楽しかった。
アホみたいでバカみたいで一生懸命な二人を、俺は大事に思うように、なっていった。



大事に思うように、なっていったからこそ。




二人については敏感になってしもた。

「ライブのチケット、が?」

「おん。何でかは知らんが前より売れてないんやって」

オサム教師が不思議そうにレポートをめくっていくのを横目で見つつ、インターネットに接続した。

「…………………やっぱり」

チケットが売れてない理由は、俺のせい。

「『偏屈天才変人が勝ち組二人を買収。バンド参加』………ね」

そんな悪口、俺は気にせん。
けど、あの二人にとって大事なライブを潰すのは、あの二人の笑顔を消すのは、嫌や。

「しゃーない、か………」

結構、楽しんでたんやけどな。











「……………え?やめる?」

謙也さんは意味が分からん、と言いたげな瞳で俺を見つめてきた。
白石さんに話せばきっと理由を当ててしまうから。

狡いけど、俺はこうしないとやめれない。

「ライブ出れません。夢ばらして構いませんから。」

「ちょちょちょ!!!財前!?」

「めんどくさいんです。謙也さん知ってるでしょ。俺は偏屈天才変人なんです」

「けど!!!」

「迷惑なんです。辞めさせて下さい」

俺の腕を掴んだ謙也さんを振り払う。
一応、演技やって極めたから自信はある。

「さよなら」

逃げるように練習場を出ていって、ぎゅうっと目をつむった。

謙也さんは、俺をどんな目で見ていたんやろ。
絶望?失望?悲壮?それとも―――――



「………アカン」


いらんことを考える頭を振って走って研究室に向かった。



「うおっ?!!どうした天才財前クン!!」

「うっさいわ!!何が天才や!!そんな称号いらん!!!」

飛び込むように研究室に入ったらオサム教師が目を見開いて、そして、すまなそうに笑った。

「……すまん、な」

パタ、とドアを閉めて出ていってしまったオサム教師。
静かになった研究室にぽたぽたと雨が降ってきた。

雨?いや、涙や。

涙って感情が高ぶると流れるんやったよな。

人が悲しくて泣く理由なんて俺はまだ分からんかったけど、今なら分かった。

まるで、何か身体から抜け落ちた喪失感をごまかすように、涙は流れる。

ああ、どうしよう。
俺、好きやったんや。
あの二人が大好きやったけど、謙也さんにはドキドキする好きもある。
どこか性欲が沸き立つ。




「レンアイ…………」


俺は謙也さんを好きになりそうやったんや。
後少しでレンアイが分かったんに。
もったいないことしたな――


「……なんて、これっぽっちも思えないやなんて。研究者失格や」

















「はー、ユウジさんおおきに」

「へいへい。ばれないようにライブ見に行くからってアイデンティティーを手放すやなんてな。財前も単純やな」

「それ、褒め言葉ッスか。おおきに」

「どこがじゃ!!!」

喧しいユウジさんは服飾科。
この人とは中学以来の付き合いや。


「ホンマにもったいない事してんなあ………」

そんなユウジさんの言葉は頭に入らなかった。
ライブの舞台に現れた二人の、雰囲気っちゅーか、オーラに呑まれたから、やな。

『えー、ライブ参加して皆様おおきに。けど、俺達は一曲しか歌わないつもりや。』

『本当は三人目のメンバーが居たんやけどな。何や、ライブのチケットが売れてないんが自分のせいとか責任感じてな』

「………お前のことやな」

ボソッとユウジさんに囁かれむっと黙り込む。
やって、仕方ないやん。

『俺達、偏屈クンとライブやりたかったけど、今日会場見渡しても目立つはずの白衣が見えんから、来てないんやろなあ』

ガッカリとしてる二人を見ながら、きゅ、と唇を噛んだ。
当たり前や。今俺は普通の格好やし、舞台袖に繋がってる2階から見てるから。
………俺やって、やりたかった。


『やから、歌うわ。その偏屈クンに届くことを願って。偏屈クンが作曲した歌を』

俺が目を丸くする前にジャジャカ!!というバカデカイ音を響かせ二人は歌い始めた。





それは、三人一緒にいた時の俺の思いを詰め込んだ歌で、バラードのような、ロックのような、演歌のような、意味不明な歌。
そんな、三人だと思ってたから。


「…………ユウジさん」

「何や」

「俺を、舞台に出て平気な格好にして下さい」

「よっしゃ!!」

偏屈やから、遅刻はお似合いやろ。
あの、俺が作曲した歌は、二人が歌えばええ。
三人では、万人受けする歌を、歌いたい。





『……ええ歌、やろ?』

『財前を、俺達のメンバーに誘った理由分かってくれたら嬉しいわ』

『ほな、これで――――』




『ちょっと待って下さい』

『『!!え、』』


コツ、と踏み鳴らした靴。
無人だったキーボードの前に立つ。
体から溢れる興奮が俺を、強気にさせる。
楽器が絡めば、性格が変わってまうのはしゃーない、やろ?

いかつい黒眼鏡を投げ捨てて、前髪をかきあげて、白衣を脱ぎ捨てた。
ユウジさんに、そうするように言われたからや。


ザワッとライブ会場が驚いてる。
まあ、俺の素顔はユウジさん以外知らんからな。

だからって白石さんと謙也さんまで驚愕しないで欲しい。

「財前……?」

「やんな……」

驚愕した顔をしたままの二人に頷く。
そして、キーボードを構えた。

『ライブは―――これから始まるんや!!!』

キーボードを鳴らせば、白石さんと謙也さんは嬉しそうに歌い始めた。



















「あ―――疲れ、「財前!!!」

ライブが終わって舞台袖に戻れば、ガバッと謙也さんにのしかかれて俺はひっくり返った。

「何すかいきなり……」

「ありがとう!!来てくれて!!財前めちゃくちゃカッコイイで!!」

「………まあ、しゃーないッスわ」




好きな人と、大事な人の為や。

「また酒盛りしようや!ライブの反省会も―――」

「ね、謙也さん」

ユウジさんがジャケットの胸ポケットに入れてくれた赤い薔薇を差し出す。

「今すぐとは言いません。けど、」

いつか、偏屈な俺を好きになって下さい。


ふ、と笑えば謙也さんは赤い薔薇のように、顔を真っ赤にした。

そして、ゆっくりと謙也さんは頷いた。
そんな謙也さんが可愛くて、性欲が絡む思いごと、そっと抱きしめさせて貰った。


偏屈やって、恋愛していいやろ?
バカとか言うなや。











――――――――――――――
どうしてこうなったwww
無駄に長い!!めんどくさい!!意味不!!
けどそれを桃雨殿に押し付ける!!
リアともだから許される気がする!!これからもよろしく!!
サイトも私生活も!!



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