小説しょうとtake | ナノ

だって、
男の子だもん☆



「結婚して下さい」











「ブホッ…………は……………!!?」


目の前の後輩は、あの女の子が可愛いだの、胸がデカいだの、ヤリマンと処女どっちがイイだの、ガリとふっくらどっちがイイだの、美乳派だ巨乳派だの、男子中学生の日常的かつ下品でリアルな話をマックでしていた時、突然、

上記の言葉を発したのである。

なんてこと言ってくれたんや。
オレンジジュースを零したやんか。


「『は…!?』ってそれだけですか。人がプロポーズしたんですからもっとロマンチックな返事して下さいよ。ロマンチストな忍足家らしく」

「いやいやロマンチストは侑士やから。」

「謙也さんも結構大概やと思いますけどね。初キスはどうせ遊園地のライトアップされた観覧車の中が理想なんでしょ」

「なっ、なっ………!!?」

「うわ、その反応はマジですか、引くわー」

ポンポンとまた進む会話にさっきのは財前なりのボケやったのか、と思う。
関西人としてはちゃんとツッコまなアカンかったな。
うん、反省せな。

「で、さっきのプロポーズの返事なんですけど」

「ブォッホ!!ゲホゲホ……………はあ?」

今度はハンバーガーが喉に詰まってむせる。
なんやお前は。
今人をむせさせるのが流行ってるんか。
てか俺は男や!!
Iam boy!!

「いっときますけど、本気ですから。結婚言うても養子縁組になる形かも知れません。ただ単に男同士で暮らすだけの結婚いう形かも知れません。けど、本気で俺は」



謙也さんと、結婚したいです。



いつにない真剣な口調で言われてドキリとする。

いやいやドキリってなんや。
俺男だし、落ち着けや。
ちらっと財前を見てみる。
じいっと俺をみる財前の目に嘘はない。
…………本気、なんや。



「あとセックスやってしたいし」

「台なしぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

さっきまでの財前の真摯さは消えて、すっかり俺をからかうモード(嘲笑うモードともいう)

謙也さんマジ愛してますわー

って、ナメてんのか!!



…………ん?
………愛してる?


「チャラ男か!!!」

バンッとマックの机をぶったたく。
マックのポテトがぴょんぴょん跳ねて床に何本か落ちた。
ああ勿体ない、今150円でお得なのに。

「うわっ、謙也さんみたいなもろチャラ男にだけはチャラ男なんて言われたくなかったわ。ないわぁー謙也さん」

「俺もお前にだけはチャラ男て言われたなかったわ」 「俺はピアスを外せばただのイケメンです」

「ナルシストか!!!」

「ただの現実主義です」

それはアレか!!
自分はただのイケメンです的なアレか!!
ゴメン言い返せない!!!

「で、またおかしくなった話を戻しまして。プロポーズの件なんですけど。」

「ゲフウィッ!!…………まだ続いてんのかその話!!」

「当たり前ですわ。いい加減その大袈裟な反応やめて下さい。公衆の真ん中の恥さらしや」

「そこまで言う!!?」

今日の財前の毒に甘さは全く混じらないからダイレクトに来る。
俺のガラスのハートはめった打ちや!!

「心臓に極太の毛を生やしてるバカがガラスのハートとか言わないでくれます?ガラスのハートは俺みたいな人間が持ってるもんです。」

「はい!!財前君がガラスのハートやったら全世界の人間誰も苦労してないと思います!!つか俺は言ってへん!!心で言ったんや!!心読むなや!!」

「仕方ないでしょ。俺やって読みたくなんかないのに。心が勝手に謙也さんが好きやから謙也さんをもっと知りたいって読めてまうんやもん」

「もんてお前な………つかお前に羞恥心はないんか?」

「ないです」

「即答!?」

ダメや、こいつがガラスのハートやったら世界の常識がひっくり返るで。

「そういう謙也さんは羞恥心があるみたいですね。俺がプロポーズした時から顔真っ赤ですよ?」

「ほっとけ!!」

しゃーないやん!!やって俺ナイーブやし!!イケメンにプロポーズなんてされたら顔も赤くなるってもんや!!!

「プロポーズの返事はまだいいです。その気にさせたりますから安心して下さい。」

「俺にとって安心する要素は皆無なんやけど!!」

「それはホラ、謙也さんだから。しゃーないッスわ」

「何気に失礼!!!!」

ガンッとトレイを叩く。
こいつ心臓に毛やなくて象牙でも生やしてるんちゃう?
信じられん図太さやで。

「で、また話戻しますけど」

「ん?おお!!」

まだプロポーズ話続いてるんか。
ええ加減羞恥が許容範囲超えるんやけど。
いや、今は身構えが出来てるから大丈夫や!!さあバッチコイ財前!!

「俺は美乳派ですね。貧乳でも形が良ければ萌えられるし。逆に巨乳って形が崩れてなくてもなんか生々しいですわー」

「そっちの話ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」





とりあえず今日分かったのは財前が美乳派であること(俺は巨乳派やで!!)、そして財前は俺と結婚したいということ。



そして1番大事なこと。

「てか結婚もなにも俺ら付き合ってすらいないやん」

財前とまた明日ー、と別れてようやく俺はその事実に気づいたのであった。


















――――――――――――


「……………どういうことや」

昨日告白なんてしてきたあのゴーイングマイウェイをいく後輩は、まっっったく俺に構わなくなりました。


「意味分からへん………」

まさかアレただの冗談?いや冗談だったらあんな真剣な目できんて絶対!!

ちらっと財前を見ると四天が誇るラブルスと仲よさ気に話している。
あ、ちょ、小春にユウジ!!財前に近すぎやって!!
財前嫌がって……………
嫌がって…………
嫌がって…………

嫌がってるか…………?

普通に笑ってへん?
え、そんな。財前って懐いた人にしかああやって笑わないやん!!

やから、俺にはそうやって笑ってくれるから特別な先輩やって思ってたけど………いや実質プロポーズまでされたからかなり特別な先輩やけど!!

けど、けど、なんか…………


「………なんかムカつく」

吸い込まれるように、俺の言葉は地面に落ちていった。






その後、財前とは全く話さない毎日が続いて、俺は、俺は――――――





















「……………ハ ラ タ ツ」

朝の通学路。
ガンガンと電柱に頭をぶつけて周りに変な目で見られる。
いや、確かに精神異常者っぽいけど!!!

あれ、てか目の前が赤い。

「オハヨーさん謙也。今日も今日とて俺はエクスタシィやな………ンーッエクスタ……シィ………!!?」

白石がいきなり顔を青くして俺を見つめる。
お前もしかしてようやくエクスタシィをいう恥ずかしさに気づいたんか。

「ちょ、謙也おまっ……!!血!!血!!」

「恥?痴?そうか白石お前やっとエクスタシィがダサいことに気がついて………」

「ちゃうわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!つかエクスタシィはダサくあらへん!!謙也のNoスピードNoライフよりずっとイケてるから!!!」

「なんやて!!?ちょ、白石お前表で出ろや!!頭かちわったる!!」
「お前の頭がかちわれてるんやドアホぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

白石の叫びを最後にぷっつりと俺はエクスタシィ……いや、意識が途切れた。




















―――――――――――

あれ、なんやろう……
頬に暖かい………いや、全然暖かくないモノが触れてる……
めっちゃ気持ちい………
ああ、一瞬でも暖かいって感じたんは……なんかコレが触れてるだけで心が温かくなったからや………
知っとる……この冷たい感触知ってる……
もっと感じたい……………
あ、離れてく……いやや……離れんといて………寂しい……行かないで………







行かんで………財前…………

俺、俺は財前が………!!
















 好   き 




















「ん……………?」

「起きましたか謙也さん?」

「……………財前?!」

ガバッと起き上がると頭にズキリとした痛みが走って思わず眉をしかめる。

そしてぼやけた意識で呼んでいた存在が目の前にいるが財前だということに胸がしめつけられた。

ぼやけた意識の中で俺はたしかに財前が………

「アンタなにやってんスか。電柱に頭ぶつけたところでアンタの頭の弱さは治りませんよ」

「…………うっせ」

「……………謙也さん?」

いつもなら怒涛の如く男らしいツッコミを入れる謙也の珍しい気弱なツッコミに財前は眉をよせた。

「謙也さ……「なんやねん一体」

財前の言葉を遮るようにくぐもった声を出してきた謙也の声は少し上擦っていた。

「意味わからん………」

「謙也さん?」

「ッ……!なんでもないわ」

謙也は起き上がりベッドの脇にあった上履きを踏み締めると、財前の傍らを通って保健室のドアに向かった。

「ちょ、謙也さん!!もう少し安静にしとかないと……「やかましわ!!!」

保健室に響くように叫んだ謙也の声は、完全に、

「泣いてんの……?謙也さん……?」

泣き声だった。

「なんやねん本当……!いきなりプロポーズしてきた思ったら俺に全然構わなくなるし……なのに今わざわざ保健室に居てくれてるし……!!1番分からんのは………」

ぐるっと振り向いた謙也の目にはキラキラと星が瞬くように涙が溢れていた。

「財前に構って貰ってる奴達にモヤモヤしとる俺自身や……!!!」

ガラッ!!バンッ!!
バタバタバタバタ………


ガラッと保健室のドアをあけてと走り去った謙也に財前は目をしばたいた。

そして、

「…………、しゃっ」

小さくガッツをして最悪に人が悪い笑みを浮かべたのだった。





















―――――――――――


「大丈夫か謙也?俺の完璧な応急処置のおかげで血はあんま出ぇへんかったで。けど、電柱に頭ぶつけるなんてよっぽど嫌なことあったんやない?」

「…………白石」

白石にそろそろと顔を向ける。
白石はにこやかに

「まあへたれな乙女顔っ」

いや、まだ俺なにも喋ってないやん!!

「どうせ納得できないような事でもできてムラムラでもしてるんやろ。」

「ムラムラしてへん!!」

ダメやコイツホンマ残念なイケメン過ぎる!!

「やったら聞くなりなんなり行動しろや。待つなんて高等技術お前にはできないやろ。」

「……………せや、な。」

確かに俺に待つなんて高等技術なんか………

「なんで高等技術!!」

「………てか謙也恋愛したんやな」

「はぁ!!?」

てか話逸らすな!!そしてなんで分かった!!

「ま、頑張りや。あんまボヤボヤしとったら簡単に盗られてまうからな」

「うっせ!!」

ガンッと机に座って伏せる。
頭には俺以外と楽しげに話す財前の姿がぐるぐる回る。

「………………けっこん」




すれば、俺は、財前を……


「独り占めできるんかな……?」




ああもう悔しい。
色々すっ飛ばしてプロポーズされてから振り回されてばっかや!!
あんなロマンのかけらもないプロポーズやったのに!!

あんなプロポーズで好きって自覚とか、かっこつかへん………


本当に……………プロポーズで自覚したんか?俺?

違う、自覚したのはプロポーズされてから財前が気になって気になってしまった。

それで、それで――――







モヤモヤして……………

だから財前が好きって……

「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!???」

ガタガッタンと立ち上がり叫ぶ。
クラスメートに完全に精神が危ない人みたいに見られとるけど!!

まさか俺……!!

「ッ……………………」

嫉妬………してた?










なるほど、男の嫉妬は犬も食わないとはこういう訳や。

やって、精神的にヤバいし、ぶっちゃけ醜いしめんどくさいわ!!




















―――――――――――

「…………………」

自覚してからも嫉妬というんはめんどくさいもんや。

自覚したって自然としてしまうなんてああ、なんて俺マヌケなんやろ!!

コートのはじ、ぽつんと立って話してる財前を見つめる。
今日は白石と話してるんやな。

つかプロポーズなんてもんしてくるってことは財前、俺が自分のこと好いてるって分かってたんやろな。

まっっったく自覚なかったけどな!!悪かったな鈍感で!!
つか返事どうすりゃええねん!

いい加減俺も、財前と話したい!!


ああ、もう!!考えてたらもう頭ん中めちゃくちゃや!!

こうなったら白石のいう通り行動あるのみ!!
キョロキョロ見渡して人がほとんどいないのを確認。
よしOK!
いくで俺はスピードスターや!!!

「財前!」

「あ、謙也さん頭だいじょう、」

「勝手に俺の処女貰ってけバカァァァァァア!!!!!!嫉妬なんてさせやがってぇぇぇぇぇぇ!!!好きやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

叫ぶだけ叫んで回れ右。
1、2、3、4、5!!

「逃げ、「はい逃がさない」

いっそ清々しく綺麗に決まった財前の足払いに俺はすってんころりとすっ転んだ。

「いったぁ!!!」

「言い逃げなんて許しませんよスピードスター?」

腹に乗っかられて変な声が出る。
いや単純に潰されたからやで?

「つまりそれ、結婚してくれるってことですか?」

「ちゃ、ちゃう!!まずは結婚を前提としたお付き合いをすることからや!!」

「………ようそんな一昔前の付き合いを提案できましたね。」

でもまあ、

財前がはニイッと嫌な笑みを浮かべた、と思って背筋を震わせた瞬間、ちゅ、と頬から効果音。









……………エ?



「へたれ鈍感な謙也さんにしては合格点ですわ。嫉妬してた事実に気づけたのもプラス点」


ご褒美ですわ、


ちゅう、と本日二度目の効果音。
今度は唇から響きました。まる



「ッ〜〜〜〜〜〜!!!??」

「男前な謙也さんをこんな可愛い顔にできるなんて光栄ですわ。めちゃくちゃ顔真っ赤ですよ?」


ニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべる財前。
コイツ、全て計ってやがったんや!!!

「何を今更。安心して下さいよ。ちゃんと幸せにしますから」

「ッ………!!」

ムカつく!!腹立つ!!
こうやられっぱなしとかホンマありえへん!!
俺やってやったる!!!
ギュッと座り込んで財前のジャージの袖を握る。
白石が随分前に俺に無理矢理レクチャーしたテクや!!
おおきに白石!!役に立ったで!!
喰らえ!!

「い……いじわる……」

恥ずかしさで涙目、上目遣いや、完璧やろ!!



「……………………………………………………………謙也さん」


……………………………………………………………………………………アカンしくった。
よく考えたら俺がやって萌えるテクやないやん!!アホ!!白石のアホ!!

恐る恐る財前を見上げる。




見た瞬間、俺の人生の終わりを告げるゴングが鳴った。

史上最強の嫌な笑みを浮かべた財前が、舌なめずりをして立っていました。(でもそれもカッコイイってイケメンってホンマ犯罪やない?)


「そっかーそんなに俺と早く夜の営むをしたかったんですね」

「エ………!?」

「じゃ、やりますか。謙也さんの美乳、見せて下さいね?」

「へ………?!」



「部長早退しまーす」

「エクスタシィやな☆」



「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」





















だって、男の子だもん☆
















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