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そんなぼくらの
そのごのはなし


フラれた彼のセリフ番外編です











「謙也さん……最近元気なくないですか……?」

俺と謙也さんがお互いの想いをさらけだして三ヶ月。
謙也さんは俺に『白石より好きだ』、と言ってくれた。

それが嬉しくて、思わずあのあと唇を奪ってしまったけど、謙也さんは嫌がらなかったし、受け入れてくれた。かといって、付き合い始めてはいない。
謙也さんが本当に俺が好きかはまだ分からんし、今は後輩以上、恋人未満ってところだ。


だけど、少しずつ、謙也さんが白石部長を好いていた時の様に、俺を想ってほしい。なんて思ってる。

我が儘、だろうか。




とか何とか思い始めていたのだけど、最近、謙也さんの元気がない。

原因が、
「白石が最近元気なくてな…ため息ばっかついてんねん……」



と い う。

聞けば、親友をそこまで心配するのも珍しいらしい。
それは親友以上の人に対しての反応だ、と。

謙也さんはよっぽどのお人よしだけど、あそこまで落ち込むなんて、やっぱりまだ―――――







「…………という訳なんですわ。ユウジさん」

放課後の教室。

保健室で慰めて貰って以来、ユウジさんとはかなり仲良くなった。(謙也さん以外に名前を呼ぶ先輩にまでランクアップしている)
それに、意外にもユウジさんはかっこよくて、憧れの先輩でもある(口には絶対出さへんけど)。

「そりゃ当たり前やろ。例えばお前が、ずっと好きだった謙也にフラれるとする」

「やめて下さい。リアリティがありすぎます」

「あー……まあ、例えばやから、な?んで、ずっと仲良くして来た―――まあ、俺、とか?に告白されて、心の支えになったとする」

「すんませんユウジさん………気持ちは嬉しいんですけど……」

「だから例えばやって言ってるやろ死なすどお前!!!俺は小春一筋や!!!」

んな必死にならんでも分かっとるっちゅーねん。
ボケなきゃやっとれんわ。

「まあ、少しお前は俺が気になり始めてる。しかしそこで、謙也が超落ち込んでたらどうする?」

「そりゃ迷わず謙也さんのところに………!!」

「ま、そういやことや」

「……………………うっ」

「なななな泣くなやお前!!」

「あらユウくんどうしたの〜?」

「小春ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

ユウジさんが俺の頭をポンポンと叩きながら、小春さんに事情を説明した。

「あらー、そりゃ辛いわよね?だけどユウくん泣か せるんは感心しないわ」

「いや、まさか例え話で泣くなんてな……ま、気持ちは分からんでもないけど」

ぐりぐりと頭を撫でるユウジさん。
なんでかユウジさんの前では俺は甘えたになるというか、涙腺が緩むというか………

「ほら、光泣くなや」

「はい、ハンカチ。良かったから使って?」

「おおきに、ッスわ……」

ぐしぐしと涙を拭いて、ため息をつく。
いつから俺はこんな弱くなったんやろ………



「ま、恋愛は人を弱くするもんやで。俺は小春に対してへたれるし、ダメになるのも分かっとるしな。けど、好きになってもうたんやから、仕方ないやろ?なー?小春?」

「嫌やわぁユウくん。何かうざいわ」

「小春ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

「ははっ、」

さりげなく、スマートに、とは言えないユウジさんの慰めは、俺には心地好かった。

「ま、ユウくんが私を大好きなのは恋愛かどうかはわかんないけど、ユウくんの言ったことは正しいわね。」

ニコッと笑っていった小春さんに俺も曖昧に笑った。
まあ、ユウジさんが小春さんを愛してるのは、恋愛かは微妙なのだが。(どっちかっていうと溺愛みたいな感じだし)

「てかアレや。白石ナニカに悩んでるんやろ?やったらその悩み事を解決したればええやん。ちょっとシャクかもしれへんけど、こればっかりはしゃーないやろ」

「……………ユウジさんもその手ですか?」

「おん、小春はイケメンが悩むと親身になって悩んでまうからなっ!!やから、俺が喝を入れにいくんや!!」

「俺ン時も、ッスか?」

「あ、いや――あれは、光が純粋に心配やったんや。言い方悪いけど謙也に振り回されて、今にもぶっ壊れそうやったし」

照れ臭そうに笑ったユウジさんに続くように、俺は笑った。


「「……………………………」」


それを、小春さんが死角になって見えない形で、謙也さんと白石部長が見ていたなんて、知らずに。






――――――――――――


「白石部長。最近元気ないッスけど、何かありました?」

放課後の教室に部長を呼び出すと、部長は所在なげにフラフラと立っていた……末期や

「あぁ財前……いや何もないで、気にすんなや……」

そりゃ気にせずにいる予定やったわ畜生。
けど、周りまわって俺のトコにも気にする要素が出来てもうたんやふざけんな

と、白石部長に言ったら完全にふさぎ込 むようなことを考えながら話を続ける。

「嘘つかんといて下さいよ。俺はアンタが落ち込んでるとか全然全くかけらほども気づいてへんかったけど、謙也さんが言うなら間違いないやろ」

「さりげに酷いわ財前……」

「当たり前ッスわ。謙也さんを泣かせまくった部長を俺は怒ったまんまッスから。そこは忘れんで下さい」

せや、大体この部長がイロイロと謙也さん傷つけたんや。
ぶっちゃけ俺は、謙也さんが白石部長好きな時点で諦めてたのに泣かせるし………ってチャウチャウ話ズレとる。


「ええから吐いて下さいよ。謙也さんの為にもさっさと解決したいちゃいたいんで」

「どこまでもゴーイングマイウェイやな財前……真面目に自分の利になることしかやらんし」

「アンタと謙也さんの騒動で利にならないことは腐るほどやったんでええやないッスか」

「それはその………スマン…」

「ほな吐いて下さい」

さすがに三ヶ月前のことを言われると頭が上がらないらしい。
あんまこういうんは使いた無いけど、謙也さんの為ならしゃーないわ。
天国のおばあちゃん、もしいるなら神様に謝っといて。

「……最近自覚したんや………好きに、なってもうたんや、って」

「………………は?」

え、ウソ、まさかの恋患い?

「最近、ざ、財前の隣にいる奴でな、財前以外にあんないい笑顔見せたりするんは一人くらいしかおらんくて……。けど、偶然財前と話してたの見て、その時の笑顔に一目惚れしたんや……」

「……………………………」

俺の、隣、だと?
俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の隣俺の…………

「アンタふざけんなや!!!!!!」

今更謙也さんに惚れるなんて許さへんっ!!
俺がどんだけ心押し潰して謙也さんに尽くして振り向かせたと思ってんねん!!!

それを一度振ったくせに惚れるなんてダメや!!
ようやく俺に少し振り向いた謙也さんが白石部長のとこに行ってまう!!

「アンタ分かってんやろ!?俺はあの人が凄く大事なんや!!!心の支えなんや!!それを一度ならず二度も俺の大事な人を奪うんか!!嫌や!!絶対許さへん!!!!」

「スマン……」

お願いやから、これ以上俺から奪わないでや。
白石部長は何でも持ってて、いつも俺は敵わないやん。
それなのに、また貴方は俺から奪うんですか………!!

「光………?」

「!!! 謙也さ……」

振り向いたとこには、切なげな顔をして佇む謙也さん。
嫌や、謙也さん……!!なびかないで……!!
白石部長は謙也さんの方をみて少しバツの悪そうな顔をしていた。
ダメや、奪わせへん!!

「謙也さん!!!」

「!?ひか……?」

ガバッと謙也さんに抱き着き、謙也さんを壁際に縫い付ける。

「ど、どしたん光……!」

「謙也さん」

カッコ悪いと言われても構わない。けど、ようやく俺の太陽が手に届くとこにきて、また盗られるなんて嫌や。

「ちょ、白石見てる……」

「嫌や謙也さん、白石部長なんか見ィひんで、俺だけを見てや。ずっと好きなんです。アンタだけずっと見てきた、ずっと好きでした。ようやく俺を謙也さんが例え一瞥でも見るようになったんや……嫌や……」

白石部長に盗られるなんて。




「白石部長なんか俺が忘れさせたります。ずっと謙也さんが俺を好いてくれるまで待つつもりやったけど、もう無理や。謙也さん、俺を見て。俺だけを想って。俺から離れへんで、俺のものになって――――……!!」

ああ、また目の前が霞む。
なんで俺は謙也さん絡むとこんなに泣き虫なんや……

ぽろ、と涙がこぼれる前に俺の目の前が真っ暗になった。
目の回りがモフモフしてる。

「よく頑張ったな、光」

優しげな声、

「ユウジ、さん……?」

俺がユウジさん、と呟いた瞬間、ユウジさんが俺を光、と言った瞬間、謙也さんと白石部長がぴくりと眉を寄せたのは目の前が真っ暗な俺は残念ながら気づかなかった。

「ほれ、俺の貸したるわ」

どうやらいつもユウジさんが頭に巻いてるヘアバンドを目に当ててくれたらしい。
くそっ、やっぱりかっこええ……

「大丈夫や光!!白石が言ってる好きな人は少なくとも謙也やないで!!やって謙也、白石にいつも笑顔見せとったやん!!笑顔に惚れたってことはそれはないやろ!な、白石!!」

「あ、ああ大丈夫やで財前。俺が好きなんは確かにテニス部の男やけど、謙也やないから…」

ぐしぐしと涙を拭いてヘアバンドを外して、白石部長を振り返る。

白石部長の視線が向かっているのは、ユウジ、さん……………

俺の隣。
俺以外には一人だけ。
俺とよく話す。



………………あ、俺読めたわ。



そして読めたと同時に、俺は猛烈な恥ずかしさを感じてしゃがみこんだ。
顔に再度ユウジさんが貸してくれたヘアバンドを当てる。
ヤバい、めっちゃ顔熱い。


俺はなんちゅう勘違いして、なんちゅう告白してもうたんやぁぁぁぁぁぁ!!!!


「光………」

アカン謙也さんの顔見れへん!!

「………嫌、や」


うっ、わ、俺恥ずかしい奴や。
あんな告白してそしてごめんなさいという控えめな答ではなく拒絶。

はは、俺しばらく立ち直れへん………


「光が、ユウジんことユウジって呼ぶん、嫌や、俺」

「………………は?」

え、今嬉し過ぎる言葉が聞こえたんやけど。

「俺は、光がユウジに対してだけ甘えたりするんが嫌や。俺が好きなんなら俺に甘えてや。気にくわへん」

「……………謙也さん、あの、」

それって、

「ええぃそうや!!ヤキモチや!!ユウジに俺は嫉妬しました!!なんか文句あるかボケ!!!!」

まるで喧嘩腰。
だけど、嫉妬して、くれたんや……

「聞きましたユウジさん!?謙也さん結構俺に振り向いて来てくれてるみたいッスわ!!」

「………………あー、うん…」

なんかユウジさんが微妙な顔をしている。
謙也も大概鈍感やけど、光はそれに並べるやら何やら呟いて。

「けどまぁ、よかったな」

「はい!」

そういったら、ユウジさんがニヤリと笑って肩を組んできたので、思わず笑った、ら


「「離れぃ!!!!」」


ベリッという効果音と共に引きはがされた。え、てか白石部長まで混じったし。

「光!!」

「な、なんすか謙也さん」

「好きや!!!」

しばし何かイロイロ吹っ飛んだと思うくらいには、俺は呆然とした。

「やから、お前のモノになったるわ!!」

フンッと照れ臭そうにいった謙也さん。

「はい!!!大事にします!!!!」

俺はこれ以上ないと思えるほどの笑顔で頷いた。



「…てか……おい……白石?」

「見てろや」

「はっ?」

ユウジさんを後ろから抱きしめた白石部長は今までみた事のないかっこええ顔をしていた。

「絶対、振り向かせたる」




………………どうやら俺とユウジさんの仲の良さに危機感を感じたらしい。
なんやイロイロ吹っ切れた顔をしとるわ。


「………………俺は小春一筋やけど、ま、ええわ。落としてみろや白石」

といったユウジさんは更にかっこええ男前な顔をしていた。

うっ、と白石部長が顔を赤くしたのを見てクスクス笑う。

これはどっちが攻めになるか分からんわな、と思いながら、そっと俺は謙也さんの手を取った。

はっ、とした謙也さんは俺を見て、照れ臭そうな笑みを浮かべた。




















そんなぼくらの
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「ん〜♪美味しい状況やなぁ、堪らんわぁ!!」


確信犯:小春









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