小説しょうと他 | ナノ

これぞ素晴らしき家族!!
〜謙也視点〜


ジュー、という何かを焼く音にパチ、と目を覚ます。
と、手からガシャ、とPSPが滑り落ちた。
せや、昨日は赤也とモンハンやっとって、そのまま寝てもうて……

ハッとPSPを見ると画面は真っ黒。
ヤバい、これ点けるのが怖い。


あーあ、とどこか朝から憂鬱な気持ちを纏って俺はベットから起き上がった。
そして下に布団を敷いて寝とる弟を踏まないようにベットから降りる。
昨日ベットで寝る日やったのが俺やったからで、六畳三人の寝室の簡易ベットは交互に平等に使うてるんやで。

……って、誰に喋ってんねん。


「おーい、光、リョーマ、朝やぞー。高校遅れるでー。今日天気ええから蔵に言われる前に布団干すでー」

ふわぁ、と欠伸をしつつ布団で転がる二人の頭を軽く叩く。
二人とも寝顔はこんな天使なのに、とあまり起きてない頭で朧げに思う。
口を開くとあんなにくそ生意気じゃコイツら将来やってけんぞ。

なんて言おうものなら二人は口を揃えて

「「謙也さんウザイッス(わ)」」

って言うに違いないからこれは心に留めておこ、うん。



「ん……?朝……?」

「せやせや。おはよ光」

「……おはよ謙也さん」

光は低血圧やから頭が動くのは俺以上に時間がかかるけれど、一度起きれば二度寝はしないのは分かってる。
そこはリョーマと違う。

「悪いんやけどリョーマがちゃんと身体起こすまで起こしてくれへん?俺、蔵と朝食作るの変わらなアカンねん」

「………分かったッスわ」

おおきに、と言ってぽふ、と頭を撫でる。
そうすると光は気持ち良さそうに目を細めた。

「謙也さん、」

「ん?」

可愛いなぁ、と思って光を見つめていると光はふわり、と笑った。
ぐっ、これやからイケメンは……。コイツほんまに計算しとらんよな……?

「な、何や?」

「今日も可愛えですね。朝勃ちしそうです」

「アホかい!!!」

スッパーンと頭をブッ叩くと光はまだまどろみが残る声で、『どめすてぃっくばいおれんすやー』と言ってようやく隣で寝てるリョーマを起こしにかかったので部屋を出る。
ドア越しにスッパーンと言う音とリョーマの『いってぇ!』という声は気にしたら負けや。
寝起きの光は恐ろしい。


「赤也ー朝やでー。起きやー」

カチャ、と俺ら三人の部屋と廊下を挟んだ真っ正面にある部屋を開ける。
いつものことながら敷かれた片方のベットは既にもぬけの殻。
もぬけの殻どころかきちんと干す用意まで出来とる。
さすがやな、蔵ノ介。

一方は昨日夜遅くまで俺とモンハンしとったからぐうぐう寝こけてる。
兄としてちょっと申し訳ない。

「赤也ー朝やでー起きやー」

「ん〜……」

ゴソゴソ動いたので起きたと思えばまた布団を被り直してしもた。
こりゃ蔵じゃなきゃ起きひんな。

早々に起こすのを諦めて蔵と赤也の部屋を出る。
前に無理矢理起こすのは赤也をデビル化させた時に参ったっちゅー話や。
それからは同じテツを踏まんように早々に諦めることにしとる。














少し寝起きに難アリの弟を一応起こしたので、2階の脱衣所で顔を洗って髪の毛を整える。
ある程度シャッキリした気持ちで腹を掻きつつ、欠伸をしながら階段をトタトタと降りる。
と、ふわぁ、と漂う甘い匂い。

「蔵、おはよーさん」

「おー、おはよ謙也。あんまだらし無い顔を晒してんやないでー」

「へいへい……あ、朝食作り変わるわ。ふ、わあぁぁ……」

「いやに眠そうやな……夜更かししたんか、もしかして」

「あー…赤也にな。モンハンやろーって誘われてん。むちゃくちゃ協力プレーは完璧やったから、あと少しでS級モンスター倒せそうで、そこで意識が飛ん、うぎゃっ!」

いきなり後ろからゴスッという音を立たせてダブルで来た攻撃に悲鳴をあげる。

慌てて振り向けば得意そうな顔をした、さっきまで天使の顔だった悪魔、もとい俺の弟。

「何すんねん!!光!リョーマ!」

「「制裁ッス(わ)」」

声を揃えて抜け抜けと兄に言いきった二人にこめかみがピクピクする。
ホンマこいつ等育て方間違うたかも……
いや、でも確かに夜遅くまで赤也とゲームしたんは確かやしな。
制裁はないけど間違っちゃないか……

「謙也さん何赤也と浮気してんねん。」

「次からは誘ってよね。命令だから」

「お前らただ妬いただけか!!」

浮気て何や命令て何やッ!と軽くツッコミを入れれば弟二人はツーンと拗ねて相手にしない。
ホンマ何やねんこいつら……

「ほな俺は赤也起こしてくるわー!朝飯頼んだで謙也!!あとはフライパンからよそうだけやからな!」

ランランと言いながら(それが似合うから余計に腹立つ)階段を駆け上がる蔵にため息。
ブラコンは大概にせいっちゅー話や。

「光、リョーマ、ちゃちゃっとよそうで。」

「了解ッス」

「めんどくさいわー……」

ブチブチ言いながら目玉焼きとフレンチトーストとサラダを五人分よそう。
ドレッシングはお好みやから何種類かだしておく。
つくづくこの家族は趣向が似ていない。

「……蔵にい、遅いッスね」

「また赤也の寝顔でも眺めてんやろ」

「いや、にしても遅いやろ……」


アイツの変態性は、俺がよく分かってる。
こんな長い時間眺めるだけで終わるはずあらへん。

ザッとテニスラケットとボールを持って三人で階段を上がってドアを開けた。



「「「…………………」」」

ハアハア言いながら赤也の上に馬乗りになる変態がいた。

「…………始め」

「「うーす」」

バコッといい音を出して蔵にボール(硬球)を打ったリョーマと光のボールは、見事蔵をその場にいい音出して転がした。


だがしかしそこで手加減したらアカン。
こいつの変態性はゴキブリ並やからな!
俺も思い切りボールを打ち、それは蔵の(自重)にクリーンヒット。
情けない声を出して蔵は地に伏せた。



「い、きなり何すんねん!」

涙目で見上げてくる蔵に思い切りため息。
自重をしれやこいつ。

「兄を止めるのは弟の役目や。蔵がちゃんと赤也起こすまで繰り返す。第二陣」

「「はーい」」


ザッ


「うぉぉい!"ザッ"やないわ!!ラケットは人に対して振りかぶるものやありません!!つか何で光とリョーマはこういう時だけ従順やねん!!」

「ええから早う赤也起こせや。遅刻するやろいい加減。」

「ちぇー……これからせっかく赤也にチョメチョ」ゴスッ


「スマン、手が滑ってもうた」


勝手にラケットが反乱起こしたんやから俺は悪ない、ということや。
これが本当の満身創痍やな。

「朝から何やねん……」

えぐえぐ泣きはじめた蔵ほどウザいものはあらへんなぁ、と思いながら踵をかえす。

「もう俺大学に行く時間やから先に食べるで。家族五人で食べたいんやから早うしてな。赤 也 は お 前 で し か 起 き な い ん や か ら」

光とリョーマの肩を押しながらドアを閉める。
俄然張り切って赤也を起こす蔵の声が聞こえたからこれで万事OKやろ。

蔵のことはこれでもちゃんと分かってりつもりや。
つかアイツ扱いやすいのか、扱いにくいのかどっちなのかはようわからん。

「朝飯食おか。光とリョーマも早うせんと遅刻してまうからな!」

ニッと笑えば二人はちょっと視線をそらしながら頷いた。





こんな風景が、俺の毎日。
白石謙也な、毎日や。





















素晴らしき家族!!〜謙也〜





















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reportでは小話。
小説では家族全員分の家族への思いをやりたいです!
短めなのはさーせん(^O^)



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