純狂気 前章
銀色の髪、金色の瞳。
周りから、それで何度、拒絶され、蔑まれ、嫌われてきた?
だけど、いい。
俺は、自分のことなんかいい。
こんな容姿になる前に愛した人達の幸せを願って俺は朽ちていければ、それで……
そう望んで小さな村の端っこの小屋で暮らしていた。
「そんな純粋なる気持ち、認めないよ……」
「………え」
現れた優男は、大層美形だった。
「俺、こんな醜い人間界でお前みたいな人間初めて見たよ…
悍ましい容姿にしたのに…
美しい心を消さないなんて
天使のようなそんなの、悪魔の俺達にとっては悍ましい。」
そういってゆらりと近づく優男。
「な、何をするんじゃ……??!!!」
「今度はお前の容姿、それは全ての人間が魅了されるようにしてやるよ。大体、異質な色してるだけで実際お前は綺麗だ。」
「やめ……!!俺は……!!」
ああ、幸せを願い、朽ちたいんだろう?
そんな、お前のちっぽけなデカイ夢なんか、ぶち壊してやる。
なぁ、
仁王、雅治。
ぱりん
夢が壊れた音がした
みて、なんて綺麗な方…!!
ああ、あんな人と結婚したいわ
何言ってるんだ、あの方は俺の妻にするんだ。
はは、お前立場を弁えろよ。
なに、お前こそ……!!
綺麗なシャンデリア、たくさんの貢ぎ物、愛のコトバ。
俺を取り巻く世界は、
一変した。
なんて、なんて、なんて、
都合いい、汚い世界なんだろ
俺はこんな、こんな、こんな…
こんな世界、いやだよ
ガシャーン…!!
どんなに汚いコトバを吐いて、冒涜して、怪我をさせてめちゃくちゃにしたって……
みんな、悦ぶんだ。
『貴方』がつけてくれた傷だ、コトバだ。
ああぁぁぁぁぁぁ
ああぁぁぁぁぁぁ
ざくり
心が裂けた音がした。
がちゃん
お れ は こ ん な 世 界 き ら い だ
誰かの幸せを願えない世界なんて。
「俺に魅了される人間はこの屋敷に近づくな。この屋敷には俺の本当が見える世界を作りあげた。」
だから、近づくな。
魅了されない人間しかいらない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「あ〜あ。やっぱりお前は綺麗なままなんだね」
「幸村っ……!!!」
屋敷には、悪魔が住み着いている。
名を幸村。
人間の俺が美しい心を持つことが大層嫌らしい。
「ふざけんな…!」
「はは、だってムカつくんだもん。昔、人間だった俺が恋した人間そっくりなんだから悪いんだよ。アイツも、お前みたいな綺麗な心を持っててさぁ、ほーんとムカつく」
理不尽な悪魔。
理不尽だから悪魔。
「いつ、いつになったら…!!」
俺を、元の姿に戻してくれるんじゃ
「え?言ってなかった?悪魔の呪いは永遠だよ。元の黒髪、黒目にはもちろん、蔑まれてたお前にも戻れない。上辺だけ好かれるのは永遠だ」
ああ。
なんてヤツ。
だけど憎めない。
だって、恋した人間にこんなことやれないからじゃろ?
「やったら俺はソイツの幸せを望めないお前に代わってソイツの幸せを願っちゃるよ。」
「……−−−ッ…そういうトコがムカつくんだよ!!!!!!!!!」
なんでだよ、なんで
お前も、真田も、
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
「いいだろう……お前の呪いを解いてやるよ。」
「え、だって呪いは解けないって……」
「ああ、解けない。だけど更に呪いをかければいい。呪われてから半年以内に呪いの上書きをすればね……『その前の呪いが解ける呪い』。あ、特に寿命が縮んだりしないから」
だから、お前の容姿は戻らないけど、上辺の呪いはまだ一ヶ月。
「あと五ヶ月以内……それまでにお前はたった一人だけの幸せを願えられるようになれ。それだけだよ。この際、汚れろとか言わないから。じゃあ、五ヶ月後にまた」
そういって微笑んで去って行った幸村はやっぱり綺麗な優男だった。
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「すみません……旅をしているとある国の者ですが…貴方に魅了されないと誓います。しばらく、ここに留めて頂けませんか?」
そんな会話をしてから一週間経った時だった。
ドアの向こうには一人の紳士。
『俺の容姿を見たら誰だって魅了されるんじゃ。どうやって魅了されんなんて言える』
「そうですね……私の眼鏡は曇りガラスなんです。だから、貴方の容姿が見ようにも見れないんですよね。ぼんやり輪郭が分かるくらいです」
用意周到な紳士なことだ。
「……歓迎するぜよ。悪魔がいた屋形にようこそ」
男は、柳生と名乗った。
「仁王くんはどれくらいここに住んでるんですか?あと呪いというのは……?」
「まだまだ長くないぜよ。悪魔−−幸村ってヤツに呪いを2回かけられたんじゃ。最初は目と髪の色をおかしくされて、次に誰もが俺に魅了される呪いをかけられた。だから、屋形に閉じこもったんじゃき」
淡々と仁王が告げると柳生は少し考えてから、ふわりと笑った。
「凄いですね仁王くんは。普通、魅了されるようになったら調子に乗る方が多い。なのに仁王くんはそれを頑なに拒絶した…素晴らしいと思います。例え、それが自分の為だろうと」
いつぶりだろう。
人に下心なしのコトバを貰ったのは
「ありがとさん……やぎゅ」
「?何のことですか」
魅了されるな、とは言った。
俺は魅了してもいいよな?
柳生に。
あれから、何ヶ月か一緒に暮らして、俺は幸せだった。
優しく紳士的な柳生。
俺のペテンにも付き合ってくれるヤツなんて本当に懐かしくて……
永遠に、一緒にいたいと願った罰だろうか。
「……ですから…」
『………!!』
風呂上がりに、柳生が脱衣所に忘れたであろう眼鏡を返しに来た時だった。
電話で話す声が聞こえ、思わず立ち止まってしまったのだ。
「まだ私は国には帰れません。イロイロとやりたいことがあるのです。」
「……………」
やりたい、こと?
『だからってにもう三ヶ月経ったんだぜぃ?!一国の王子がさすがにこれ以上はダメに決まってんだろぃ!!!』
柳生が、王子。
「……………あ、あ…」
いやだ、いやだ。
カシャン…
手が震えて思わず落とした眼鏡。
急いで拾うと慌てて部屋に走った。
ばたんと音をたてて部屋に入る。
柳生と別れるかもしれない。
たったの三ヶ月だけど、俺にとって、この三ヶ月は…!!
震えながら柳生の眼鏡を見つめていた、ときに気付いた。
「ただのガラス張り…!」
曇りガラスなんかじゃなかった。
柳生は最初から、最初から……
俺に魅了されていた。
「出ていきんしゃい」
「……え」
「お前の眼鏡、曇りガラスなんかじゃなかった。俺の容姿が見えていたなら魅了されるんじゃ。だからもう、出ていけ」
「仁王くん!!」
「じゃあの柳生」
俺は柳生を追い出した。
また、ひとりぼっち
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「久しぶりだね仁王」
「幸村……」
「へぇ…随分と変わったね仁王。心は相変わらず純粋だけど」
「俺……今、初めて自分の幸せを願ってしまったんじゃ…。柳生が、恋しいぜよ……」
ぽたぽたと涙を流す仁王に幸村はほくそ笑んだ。
後章に続く
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軽く暗いのに初挑戦(^O^)
あまりの出来損ないに泣きたい
後章求める人っているか…?
いる訳ないナリ