小説しょうと立海 | ナノ

敵に回したらいけない


※暗いし血とか出てるしグロいの苦手な方は注意して下さい
便利屋街道を行くの続き的な





























ガシャンッと大きな音を立て、フェンスに寄り掛かる。
月の光に映えるはずの銀髪は、ところどころが赤黒く、美しさの見る影もない。
その銀髪の青年からはぽたぽたと赤い血が流れる。

「はっ………しくじったの」

ギリリ、と握りしめた拳の爪で、手の平が傷つくのも分かる。

死ぬ訳にはいかない。
死にたくない。

けど、

「も……動けん……」

ズルズルと力が抜け、べたりと地べたに転がる。
息は荒く、このままでは死ぬだろう。

いや、分かってた。
生きるか死ぬかの瀬戸際の世界で生きるのを望んだのも俺。
死ぬ覚悟くらい、出来てたんだ。

でも、

「まだ、アイツに教えんといかんことが仰山……ッア」

吐き出すた血は綺麗な赤色で、これはさすがにヤバいと悟る。

「……………大丈夫か、アイツなら……」

ポソ、と呟くと同時に意識が飛んでいくのが分かる。
俺……死ぬのか。短い人生じゃったな………








「ッんでだよ…………!!」



ジャリ、と道を踏み鳴らす音。
泣きそうな声。視線があげられないけど、癖のある声で分かる。

久しぶりに、会うたな。


「何でアンタが"こっち"側にいんだよっ………!!」



月が照らす静かな路地裏。
点々と赤い血が路面についている中、ひとつだけ美しい赤色があった。

「………久しぶり、やの、」

そういうと、月に照らされて美しかった赤い瞳は、くしゃりと歪んだ。























「はい、終わりです!」

バシッとケガした背中を思い切り叩かれ、赤髪の童顔は悲鳴をあげて床に転がった。

「いってぇぇぇぇ!!!ヒロシ何すんだよぃ!!」

「貴方がバカなケガしてくるからですよ。取り立て屋でしたら油断は禁物なのは分かっているでしょう?大体仲間だからお金を取らないだけで本当なら報酬を頂きたいところです」

「いや誰だって仲間に叩かれるとは思わねーぞ……まあ油断して背中切られたのはブン太の自業自得だけどな」

「ひでぇ!!」

ギャンギャン喚く丸井を気にせず医療用品を片して柳生は時計を見た。

「もう真夜中ですね……お二人とも泊まっていきますか?」

「え!?いいのか?!」

「ええ。」

さっき叩かれたことなどアッサリと忘れて喜ぶのは丸井の長所。
要するに扱いやすいバカ、である。

「そんな話を聞き付けジャジャジャーン」

「おや幸村くん、玄関はあちらですから玄関から入って下さい」

窓から効果音をニョキッと響かせ現れた幸村。
丸井とジャッカルが目を丸くするも柳生は相手もせずに玄関を指さした。

"彼"のパートナーは、そうじゃないと勤まらない。

「んじゃ改めて柳生やっほー」

「うむ、久しぶりだな柳生」

「柳生が中学時代に比べ図太くなった確率100%だ」

「三強がお揃いとは珍しいですね。どうぞ上がって下さい」





















「けどさー、ヒロシが裏社会に来た時はびっくりしたんだぜ?」

「紳士ってイメージも強かったしな」

丸井とジャッカルが楽しそうに話すのを見て、柳生は優雅に首を傾げた。

「私は今でも紳士ですよ?」

「いや、それはないと思うよ」

幸村が楽しげにくつくつと喉を鳴らしながら否定した。

「だって始めて柳生の仕事ぶりは鬼畜過ぎてさ、仁王の選択間違ってなかったなーって思ったもん」

幸村が始めて柳生の仕事ぶりを見たのは、柳生が闇医者を始めてまだ少ししか経っていない時のことだった。

柳生に早く治療しろと喧しく突っ掛かり、治療しないと殺す、と何ともまあ頭の悪いことを喚く暴力団がいたのだ。

これはいけない、と幸村が飛び出そうとした瞬間、血が散った。
容赦ない、柳生の手で。

「なにか勘違いしていませんか?貴方達は私に土下座して請う立場。貴方達に命令されてまで治療するほど私は優しくありませんよ。どうぞケガをしたまま帰って下さい。」

隠し持っていたメスでザックリと暴力団の腕に傷をつけた柳生はそれはそれは恐ろしい笑みを浮かべて言ったのだ。

「この下水道に流れる底辺木が」
















「いやーさすがに俺もびっくりしたよ。仁王にどんな教育受けたのか凄く気になったよ」

「仁王クンは闇医者は重宝される存在だから、幸村並にヤバい奴じゃなきゃ高圧的態度で、相手に権限を持たすな、と教えられました」

それを実行しただけです、と飄々と述べて紅茶を啜る柳生にジャッカルは青い顔で、
敵に回したらいけねぇ奴が増えた……
と心でぼやいた。




「しかし今日仁王はどうしたんだ?仕事だという情報はこの柳に入っていない」

「情報屋の柳君も知らないんですか。何でも興味深い噂を入手したから調べるとか言って出掛けましたよ。そろそろ帰るんじゃ………」






































ガタッ





















「噂をすれば、ですね。」

小さな物音に気づき、柳生は紅茶が入ったカップを置くと、仁王の分の紅茶を容れはじめた。

しかし、








「…………?何で仁王は入って来ないんだ?」

いつまで経っても入って来ない仁王に柳が不思議そうに首を傾げると同時に血相を変えて真田が立ち上がった。

「真田?どうしたんだよぃ」

出されたクッキーほうばりながら言った丸井に真田は重々しい口調で言った。















「………激しい血の臭いがする」






その言葉に、その場にいた全員の顔つきが変わった。


ガチャンッ



柳生が紅茶の入ったカップを倒し急いでドアに向かう。
それに全員が続いた。


「仁王君!!」



柳生が乱暴にドアを開けた瞬間、何かが倒れる音と共に舞った、銀と赤。














「…にお……く……ん」


ボロ雑巾のようにめちゃくちゃにされた、月に照らされた美しい青年。

間違いなく、それは、






「ッ………………仁王君!!!」



「丸井、ジャッカル!!治療室の用意をしろ!!」

「ああ!」

「任せろぃ!!」

幸村の号令に取り立て屋の二人は廃ビルの奥に引っ込んだ。

「仁王君仁王君仁王君仁王君仁王君仁王君仁王君!!!!!」

半ば半狂乱で仁王を呼び続ける柳生は目に入れて痛いくらい動揺をしていた。








パンッ!!!







しかし、そんな柳生を容赦なく真田は思い切り鉄拳制裁を浴びせてドアに叩きつけた。

「柳生!!貴様は闇医者だろう!!そして仁王のパートナーなら気をしっかり持たんか!!今仁王を救えるのはお前しかおらんのだ!!」

「…………真田、くん……」


ガクガクと震える柳生の顔は青白く、これはとても治療などできない、と柳が違う闇医者の要請をしようとした瞬間、





「…………やぎゅ」





小さく、しかしハッキリと響いた、仁王の声。


「しっかり、しんしゃい……お前を裏社会に誘った俺の、面目が、潰れる、じゃろが………」






そういって人が嫌がる嫌な笑みを浮かべた仁王に、柳生の血相が、徐々に落ち着いていくのが目に見えた。





「………仁王君を治療室まで運んで下さい」





ゆっくりと立ち上がった柳生の目には、もう、弱さなどどこかにいっていた。






































「………仁王君は、無事です。もう命に別状はありません」

そう言って治療室から出てきた柳生の言葉に、全員がホッとした瞬間、全員に戦慄が走った。

あの、幸村にですら。




「………仁王君には、私は曲がりなりにも感謝しています。彼には、どんなに返しても返し切れない大事な恩がある」


血走った目。
歪んだ口元。
吊り上がった眉。

おおよそ悪人としか言えない顔をした柳生は、今、この世の何よりも恐ろしかった。



「柳君、」

「もう仁王を傷つけた奴は調べ終わった。裏社会の沽券に関わるアホだから消しても構わないだろう」

「いつぶっ殺せますか」

「お望みなら今日の夜作戦会議をして、明日の夜には決行できるが」

「分かりました。では作戦会議を開きましょうか」


ニッコリ、と笑って全員に言い放った柳生の威圧感は、言葉にできないほどの重さだったという。



































プルルル…カチャッ



















「………もしもし。クレナイですけど」

『ああ、クレナイ君?ハクやけど。仕事は順調かいな?』

「……まあ。ただ、あいつ等は、俺の大事な人を傷つけたんで、ね。まさかこっち側とか驚いたけど、大事だったのは変わらないし。多分他にも動く人いますけど、トドメは俺がハクさんが造った世界一えげつない薬で刺しますよ」

『何やー、クレナイ君に大事にされるとかうらやましいなぁ。便利屋君』

「え、もうそっちに情報いってんスか。」

『まあ、な。中々に優秀な情報屋軍勢がおるさかい』

「そうッスか……」

『ほな、俺の造った毒薬重宝してなー。また連絡するわ。愛してるでー』

「電話での愛の囁きは軽いんで直接でお願いしまーす」

『ほな、無事終わったら遊びにおいでぇな。歓迎したる。』

「はーい。じゃ、またねハクさん」


プチッ












「ハクさん………知ってたのかよ。」


けど、知ってても知らなくてもどっちにしろ、あの人は俺に言わないつもりだっただろうけど。
俺がまたあの仲間に戻るのが怖かったんだろうし。


「バカだなー……」


たしかにさ、大事な人だけど。
仲間愛と恋人愛じゃ、違うっつーの。




「この"仕事"終わったらタコ焼き持ってってあげよ……」

































作り物ながら、美しく綺麗な銀髪。
金色の瞳。
口元のほくろ。
独特の口調。



すべて、擬態できる。
覚えてる。



リラックスした状態で、少し血が残る路地裏を歩く。
さあ、いつでも。
来い。





カラン、






小さな物音。
振り向けば大量のアホな裏社会の人間共。


「………しつこいのぅ、お前さんらも」

「当たり前だ!お前が嗅ぎ回っていた"奴"は関東圏にはほとんどいねぇから捕まえるのが大変なんだよ!!なのにてめぇが"奴"庇うから……!!」

ぎらついた目で威嚇してくるアホ達の話に、少し興味が湧いたのは、仕方ないだろう。

いや、この興味を消失させる為の任務だ。

任務、もとい、仇討ち、敵討ち、どれをとっても古臭い。

けど、悪くない。

「しゃーないじゃろ。俺の興味を引き付けたんじゃから」

「てめぇ……!!クレナイに何人俺らの仲間が殺されたと思ってやがる!!?」




"クレナイ"



「おまんらの事情なんて常に中立の俺には関係なか。」

「クレナイに肩入れしたのに中立……?笑わせんな!あれだけ痛めつけて置いたのに懲りないなぁてめぇ……!!本当は立ってるのもやっとな癖によ!!」

その瞬間、ぴくりと銀髪の青年の眉が動いたことに、気づかなかったのが、運命の、別れ道。


「なるほど……やはり貴方達が便利屋をやったんですか」

バサ、とカツラを外して、柳生はそれは、それは、嬉しげに笑った。

「貴方達は、盛大にやらかしましたね。とてもめんどくさく厄介なのを敵に回したんです」



鈍い、痛い、きつい、そんな言葉じゃ足りないくらいの悍ましい破壊音。
人間が、破壊された音。

柳生にずっと怒鳴っていた暴力団の組長は、顔を青白く染め、(そうあの時の柳生のように)振り向いた。



「いいね、肉弾戦は嫌いじゃないよ」

「まあ誰だって平気だろう幸村。俺一人で十分な人数なのだからな」

「こいつ等が五体不満足になる確率99%……」

「いやー、久しぶりに本気で人を再起不能にしたけど気持ち良すぎだわ!なっ!」

「おいおい趣味悪いな。ま、俺が言えた話じゃねー、けど!」

ガッと蹴飛ばされ意識が飛んだ暴力団。

ニヤニヤと笑う五人。

裏社会では有名過ぎる五人。
すべてをひっくり返すほどの裏社会の実権をほぼ握る幸村
暴力団の中の"最強"である真田。
その男に自分の情報を握らされれば、身を滅ばされると有名な柳。
捕まったが最後、骨の髄まで全てをしゃぶりつく取り立て屋の丸井とジャッカル。



そして、



「申し遅れました。私は柳生。闇医者です。貴方がボコボコにした便利屋仁王君のパートナーです」



その言葉に、その組長は膝をついた。
顔は青白いどころの話ではなく、血が通ってるとは思えない真っ白さだ。



「………許して、」


「誰が許すんでしょう?」



月明かりの下、激しい効果音が鳴り響いた。




















「全員殺してないんですね」

「あとが残るのは面倒だし、こいつ等はもはやまともに喋る事もできないからな。必要ない」


柳の言葉に少し不服そうにしながら、柳生は転がる暴力団を見つめて、一言。



「…………汚らわしい」























「甘いよあんた等」



ヒュッという軽い音と共に組長の倒れ伏した身体が浮かび上がったと思うと、壁に思い切り組長はたたき付けられた。



「………もう内臓もヤバそうだな、アンタ」


赤い瞳。
挑発的な口調。
独特な髪型。


その姿に、その場にいた誰もが目を疑った。






それは、誰より純粋で、ちょっとバカで、けど真っ直ぐに生きていた、彼等の後輩の、



























「赤也………!!」


幸村がそう呟いた瞬間、組長の腹に思い切り何かを突き立てた赤也は、薄く微笑んだ。


少し、切なげに。



ドサ、と倒れた組長の心音の静けさ、むせ返るほどの血の臭いが、路地裏を覆った。


一呼吸置いてから、静かに赤也は話し出す。

「"こっち"では、始めてッスよね。はじめまして、コードネームはクレナイ。裏社会でフリーの、」















殺し屋をやってます。

















「切原赤也ッス」




まるで、懺悔のように。






































「ほんに赤也が無事でよかったのう。解決じゃな解決」

「仁王先輩アンタ俺がクレナイって分かってたんスか……?」

「まぁな」


よく街中がわかる廃ビルから響く明るい声。
紅茶をそそぐ音はとても平和を象徴しているようだが、如何せんこの場にいる全員、くそ恐ろしい裏社会の住人であった。


「けど皆裏社会堕ちって面白いッスね!」

ニカッ、と笑う赤也の顔は純真無垢そのもの。
しかし赤也は相当の手練れであるれっきとした殺し屋である。

「いやーまさか赤也が1番嫌な裏社会の仕事につくなんてお天道様でも思わないだろうねー」

苦笑いを浮かべた幸村に、赤也は少し申し訳なさそうに笑った。

「して、赤也。お前は一体どのようにあの組長を殺したんだ。腹を殴ったようにしか見えなかったぞ」

柳の質問に赤也は少し自慢げに言い放った。

「特注の毒薬をぶっさしたんすよ!」














「………入通経路は?」


「それは企業秘密ッスよー!」

簡単にかわすが、こっちの範囲内であそこまで強力な毒薬はそうそう作れるものではない。

となれば、


「誰か遠い奴とコンビなのか?」

「うわー、さすが柳さん。よく分かりましたね。まあ、そういう訳なんですよ」

苦笑いしてゴソゴソとケータイを取り出しながら、赤也はゆっくりと立ち上がった。

「じゃ、俺そろそろ」

「仕事か?」

丸井の質問に、柳生と仁王に視線を向けてから、赤也は笑って言った。




「大切な人に、会いに」




その赤也の顔は、とても美しかったという。






































「仁王君。もうお願いしますから無理はしないで。私、本当に貴方を無くしたら半身を無くすように辛いです」

「分かっとるよ、ゴメンな、柳生」

「まだたくさん教えて下さいよ、裏社会のこと……!!」

「うん、おまんが泣き止んだら教えちゃるよ、たくさん」







裏社会にだって咲く、幸せの花――――









































―――――――――――――

内容うっすっいっ!
なんか赤也でばったし!
あのcpの要素高い!!

けど楽しかった!!!

ちなみに四天でもこのパロディを考えてたりするパロディ好きの鬱丸でした。



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