05/08 00:49 ヤマタノオロチ謙也



「………………死ぬ」

極寒の地でただ今俺、財前光は死にかけている。

「……………寒いわ畜生」

はああ、と白過ぎる息を吐き出し、洞穴の中を見つめる。
真っ暗で何も見えやしないこの洞穴には『ヤマタノオロチ』が存在するらしい。

「………逃げてー……」

だが逃げる訳にもいかない。
なんと言ったって、俺は『生け贄』やから。
ヤマタノオロチに捧げる、『童貞』。それが俺である。


「…………生け贄やからって逃げない訳あるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!つか童貞ってなんでわかったんやぁぁぁぁ!!!!!こんな眉目秀麗な俺を見てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

逃げたかったら逃げたいわ!!
けど外は大吹雪!!身体はカッチコチやっちゅーねん!!!!
なんでカッチコチやって?

怖 い か ら に決まっとんやろ!!!!

悪いが俺やって恐怖心は持っとる!!!
つか死が怖くない人間なんか居るか!!怖くないっちゅーんならお前が代わりに生け贄になって死ね!!!

と頭の中で盛大に毒を吐く。

頭に蘇るは村人達の俺が生け贄に選ばれた時の顔。

それはそれは嬉しげな顔!!
あの厄介者払いが出来ると言いたげな(特に男)あの、顔!!!!

正直、俺は周り(特に男)から一歩引かれていた。
なんでかなんて、簡単な話し。

俺が天才でイケメンやったからっちゅー話しやぁぁぁ!!!!!!!
悪かったなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!




「いやいやいや………生け贄がそんなテンションっておかしいやろ……つかそれ俺の口癖やっちゅー話や……」


後ろから響いた呆れた声に振り向く。

「………………なんや夢か……」

尻尾生やした人間……言うなれば擬人化っぽい変な化け物が居たっちゅーねん(着物着て)……もう身体弱ってきたんかー……

「すまん、イメージとちゃうんやろうけど、俺、ヤマタノオロチ。」
「…………はあ?」

嘘つくならもうちょいマシな嘘つけやこのアホ!!!ヘタレ!!!!

「聞こえてるからな?お前の心の心聞こえてるからな?誰がヘタレやって!?アホやって?!」
「アンタ」
「死なすどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

あー喧しい、と言わんばかりに耳をほじくる。
殺すなら一思いでお願いします。

「もう怒ったで……!ヤマタノオロチをナメるならお前をそのナメるヤマタノオロチにしたる!!!!」

え、と呟く前に、人間とは思えない(あ、てか人間やないな)スピードでヤマタノオロチは俺に張り付くと、カリッと小さな音を建てて俺の首筋を噛んできた。
ぞわり、と体中に駆け巡る快感に、俺の息子は簡単に勃ちあがった。

「へえ……お前、童貞なんや」
「っが、なに、うっ………」
「そらこの快感はキツ――――ふああああっ!!?」

快感に耐えようと必死に何かを掴むとそれと同時に甲高い声。
何かと思い視線を動かせば、ピチピチと動くヤマタノオロチの尻尾。
ピチピチ動くのに合わせ、目の前のヤマタノオロチはそれはそれは性的な声を上げ、ハアハアと息を荒くした。

………なるほど。

「アンタ、尻尾性感帯なんやなー……?」
「ふっ、うう、んん、は、や、違っ、あ、ああっ、だめっ」
「触っただけでこれなら、アンタ舐めたらえらいことになるんちゃう……?」
「ひいいっ、やめっ、あ、あんっ!こ、の童貞、め……!!」
「減らない口やなー……」

尻尾を、はむ、と噛み、れろ、と舐めた瞬間思い切り甲高いエロ声を出して、ヤマタノオロチは煙りに包まれた。

「、え、え?」
「ふ、ううっ……」

現れたヤマタノオロチ、……だった奴は、普通の人間の姿、に、なって、自分のを勃たせていた。
なんや、着物が着崩れとって、エロ可愛い……。
つかなんや人間の姿になるとかおかしない?

「いきなり何すんねんアホ……エロいとかありえへん……!ヤマタノオロチは力が強いから時々人間の姿になったりせんと自然崩壊してまうの!!今色々と俺が切羽詰まってもて危なかったから人間の姿になったんや!!」
「……てかアンタ俺の心をさっきから読みやがってますねとりあえず死ね慰謝料払え」
「ひどっ!!」

なんやコイツ童貞で生け贄なんに……とか不満げに呟くヤマタノオロチ。
まあまあ随分と可愛いヤマタノオロチが居たもんや。

「可愛ないわ!!!」
「やから心読むなや!!!」
「やってコレは仕方な……アレ?」
「何スか?」

ほんまにヤマタノオロチってこんなんなんか。
ほんまなら村人に見せたりたいわ。お前らが信仰しとるヤマタノオロチはこんなアホですーて。

「何でや……?!読めへん……!!何となく無茶苦茶ムカつくこと思われてるんは分かるんに……!!」
「はは、そら残念……どわっ!!?」

いきなりヤマタノオロチを飛び越え、俺を襲ってきた黒い陰を慌てて避けた。
驚きながら見れば、それは、狸のような姿をした擬人化。
……え?めちゃくちゃハアハア言って俺見てんけど、え?何事?

「!!まさかお前――うわマジか!!白石、白石に連絡――の前に退散しや、豆狸」

明るいイメージから氷結するようなイメージが湧く口調に変えて言えば、豆狸(?)は悔しげに俺を見ながら去った。

「……何、やねん」
「あー、も、どないしよ。これって俺の責任やよなー。ウワァァァ最悪やー……まさか生涯童貞を目覚めさせてまうなんて……ほんまにヤバいわぁ……」
「何やねんコレェェェェェ何でヤマタノオロチとか神に会ってんの俺ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「遅ッ!!!!!!」




















「ほな、改めて。俺はヤマタノオロチの謙也。永遠の18歳や」
「……ヤマタノオロチに捧げられた生け贄の財前光や。17歳」
「あー…うん。でな、君は今神並の力をお持ちやねん……」
「はああ?」
「いやほら、噛みついた時にお前が生涯童貞て知らんくて……その時にお前に力目覚めさせてもうたみたいで……」
「………生涯童貞って、何ですか?」
「……魂が財前光を形成してから、何度もお前は転生しとる。しとるんやけど、お前の魂、童貞やねん」
「……………は?」
「やから、お前は、魂が形成されてから転生ずっと……ってかかなりしとんやけど……君の魂が宿った身体が一度も棒を穴に入れてないねん。それが生涯童貞。で、その生涯童貞は純粋な身体やから、さ……神並に力があって……で、今俺噛み付いたから、君の神力目覚めちゃってん……」
「………………………」
「で、人間やのに神並の力持ったから、君の力……半年後あたりに、暴発しちゃうかも……」
「暴発………て」
「ゼウスになる」
「神の世界観ぐっちゃぐっちゃ!!」
「しゃーないやろ!!!!神様にも事情あんねん!!!!複ッ雑な!!!」
「……で、ゼウスになったらどないなんの?」
「………めちゃくちゃ仕事あったり、異常にモテたり……?」
「………」

なにそれめんどくさい


「じゃあどうやったら暴発せんのですか」
「………童貞や、なくなれば」
「…………ああ、なら簡単ッスね。」
「ついでに相手が処女、なら……………ちなみに、今君と寝た人間は死ぬ、かなーみたいな………やから相手は神様やないとアカンし、けど神様って性別あらへんようなもん、やから……処女はほとんど居ないみたいな………」
「………………何やとコラァァァァ!!!!!!」


「居るやんココに。生涯処女やったから神様になった、未だに処女の神様が、なあ、処女謙也?」

ふわっと揺れた金色の尻尾九本。
現れたのは大層綺麗な狐、やった……。















って感じで力尽きた。
自ネタって……尽きないね。
力は尽きるけど……




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