03/18 23:27 謙也がメイドさんになったら


「お帰りなさいませ!!ご主人さ……ま」
「お帰りになられましたよけにゃさん?」
「……………お好きな席に、どうぞ……」
「ほなココ。んで、注文はハッピーオムライスで、けにゃさん御指名で」
「…………かしこまりました」



どうしてこうなった………
どうしてこうなったんや!!!(大事なことだからry


始まりは二週間前。
俺はメイドカフェのキッチンで働くというバイトの面接に受かり、初バイトに向かった俺は、何故かメイドさんになっていた。
………いやいや意味分からんし!

まあ、ちゃんと説明すると、
受かったメイドの女の子が手違いで働けなくなった→人気があるメイドカフェだからメイドが足りない→俺登場→ヘタレでそれなりに見られる顔をしている→ホモには受ける→メイドにさせられる

という頭悪い発想を店長がして俺はメイドになった。オサムちゃん並の頭の酷さや。
ちなみに期限は一ヶ月限定で。

男に尻触られる危機を逃れつつ働いていたメイドさんバイト一日目。


なぜか、財前光が来た。
財前光は、新しく入ってきたテニス部員で、天才と持て囃されとるクールなイケメン。
二人で話したことはなかったので、俺には財前がテニス部いる、という認識しか俺には無かった。
そんな財前光が、来た。
なんちゅう面白い話や。
だが俺はさらに面白い格好をしているのだから笑えないのである。

目があった瞬間、お互い目を丸くし硬直した。
けれど財前は気にせず座ったので『無かった事』にするつもりなんやな、と安心していたところに御指名。
御指名したのはなんと財前光。



……………なんの冗談や。

『けにゃさんかわええ』
『そら、どうも……』
『けにゃさんカード下さい。』
『は?!』

カードというのは一日一回しか一人のメイドが押してくれへんポイントカードのことや。
15その渡したメイドにハンコを押して貰えば、そのカードを渡したメイドと写真が撮れる。

けど、

『お、俺一ヶ月しかメイドやらんから……俺が働くんは今日からジャスト15日間だけや。やから、毎回俺がいる時に来ないと無理やで?やから、』

渡せない、と言い切る前に財前光が遮り言った。

『毎回来ますから。やから、お願いします』

真摯な目に後押しされ、渋々渡したカードに、財前は嬉しそうに微笑んだ。







それから、財前は毎日来たのだ。
雨の日も風の日も、どんなことがあろうと来た。
部活で会っても何も言わないけど、目が合えば緩く微笑んでくれる財前はかっこよくて。
そして、いつの間にか財前が来るのを楽しみにしとる俺がいたんや―――――





「けにゃさん、」
「なんや?」
「15貯まりました。俺と写真撮って下さい」
「…………ん」

約束通り財前は毎回来て、今日、俺がメイド最後の日。
無事に15貯めてしまった、らしい………

「ほな、撮ろか」

撮影室には誰もいない。
セルフタイマーやから、メイドがセットするようになっとる。

「…………なあ財前」
「…………はい?」
「何で俺と撮りたいん?やっぱり、笑い者にしたいから?」
「ちゃいます」
「じゃあ何で、」

「……………好き、やから」



「……………へ?」

今何て言ったんや、今、何て言――――


「ずっっっとずっとずっとずっとけにゃさん……いや、謙也さんが好きだったんです。謙也さんいつだってたくさんの人に囲まれてるから、話しかけることすら出来なくて。けど、遠目から謙也さんを見るのが辛くて、そんな時に新しくメイドカフェが出来たって聞いたんです。」

カタカタと震える肩に真っ赤な耳。
あの、クールで無表情が売りの財前が、こないに熱い気持ちと表情を表すなんて………

「元々、メイドカフェにはちょくちょく行ってたから。これを機に女の子を好きになろうって決心して行ったのに………なんに……」

ぶるぶると真っ赤な顔を押さえて、財前は本当に本当に辛そうにして、言った。

「あんな可愛い格好した意中の顔をした人がいたら……!ほんまに、もう……アカンくなってもうて……」

ぎゅうっと手を握り、財前はどこかほうけた表情で言った。

「可愛い謙也さん可愛い可愛い可愛い可愛い。やから、写真撮って。これで最後やから。キモいって振ってもええから。やから、最後に」

写真、一緒に撮って。

真っ赤な顔にぶるぶると震える身体。
どこか辛そうに、けど真摯な目に目が釘付けになる。

あ、ヤバい……。
アカ、ンどうし、よう。


俺、財前が――――




「ほな、撮ろか」
「……!」

ぱあっと顔を輝かせた財前が横に並ぶ。
セルフタイマーセット。

1、2、3、4、5。

ちゅ、
カシャッ


財前の頬から鳴り響いた音。
それに呆然とした財前はだんだんとただでさえ赤い顔を更に赤くしてしゃがみこんだ。

「あー、アカン。も、歯止め効かなっ……好き、好き好き好き謙也さん。……好き、でした」
「何で過去形なん」
「やって俺キモいでしょ」
「やったらメイドになった上財前好きになった俺は更にキモいな」
「………え」
「今日でメイドカフェのメイドはおしまい。これからは、財前専属メイドなんて、どや?」
「…………へ?」

顔をあげた財前に笑いかけて、好き、と呟くように囁いた。
目をチカチカさせた後、財前はそれはほんまに嬉しそうに笑ってくれた。


「もう、ほかのメイドがいるメイドカフェ行かんといてな。専属が居るんやから。財前だけの」

おちゃらけて言ったのに、財前は真剣にハイって返事するものだから、思わず笑った。










――――――――――――――
メイドカフェに行った記念
メイドさん可愛かった……←
むつちゃんと謙也がメイドになったらうんたらかんたらと喋ってました(笑)
謙也がメイドになったら可愛いよ絶対←
財前はメイドカフェ行ってそうだよねっ


ちなみに財前の叫びは私の心の叫びである。

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