青色の革命時代U




"さようなら"


ぼくの前を歩く彼女は先生に挨拶していた。僕はしない。するもんか。ささやかな反抗だった。いま思えばかなりばからしくおもえる



"挨拶も出来なくなったか"



先生とすれ違う時にボソリと耳元で聞こえた発言。僕のなかで何かが弾ける音がした。



ぱし




彼女は僕の手を取り、ニコリと笑う。



"うちに行こう。作成会議"


このとき彼女が僕の手を掴まなかったら、僕がナイフでも持っていたら、きっとあのオヤジを斬り殺していただろう、恐ろしくてぶる、と震えた。





"あがって、ゆっくりして"


彼女の家に足を踏み入れた瞬間、彼女の匂いで全身を包まれた気持ちになった




"どうかした?きょろきょろして"
"や、何でもない"




彼女は僕の前にミルクティーを置いた。ふわりといい香りが漂う。




"ありがとう"


少し冷ましてから飲んだ。ロイヤルミルクティーだった。彼女も僕の前に座ってロイヤルミルクティーを飲んだ。スカートが長過ぎて、座ると靴下と一体化していた。色気は皆無だ。



"私、ストーブの灯油を持ってくるわ。あなたはマッチを持ってきて"

"げほ!"

"なあに?"

"本気だったんだ…"




僕は吹き出したミルクティーをティッシュで拭った。彼女は無表情で僕の方を凝視した



"私、ウソは言わないわ"



また、ミルクティーを啜る彼女



"私はね、小さな事はしたくないの。やるなら大きなことをしたいの"




果たして学校を燃やすことは大きなことなのか、このときの僕らは小さ過ぎて、そのような考えにも至らなかった



"それとも、怖くなっちゃった?幸村くんは"






がしゃん





"ちがう!"


僕はバカにされた怒りに震えながら机を叩いた



"ちがうっ僕は、僕はもう、いやなんだ、絶対、絶対、燃やしてやる、あんなとこ"




僕は我を忘れて叫んだ。ひやりと、彼女の冷たい手が、僕の熱い頬を包んだ




"なら…早く共犯になろう…?"



甘く、そして冷たく囁いた彼女の唇と、彼女の匂いに侵食された僕の唇とが重なった。その匂いと、唇の冷たさは、何故か僕の心を温めた


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