しんじゃった



せかいでは、いちにちに、なんにんものひとが死んでいる。だれかが死んだ、そんなはなしが、せけんをにぎわせるとき、おれはただ、すこしみみをかたむける、それだけ。しばらくしたら、もうかたほうのみみから、ぬけていってしまう。そのていどだ。そういうはなしをきき、たいていのひとは、「かなしいね」とかいうけど、ほんとは、こころのおくそこでは、かなしいだなんておもってないんだ。たにんのはなしをきくだけで、かなしいとか、つらいとか、そういうむずかしいかんじょうは、きょうゆうできない。できるわけがない。だって、ひとごとだし。

いえをでた。とおりにはたくさんひとがいる。いちらくのラーメンに、ナルトがいる。となりにはイルカせんせいがいる。このはびょういんには、サクラとシズネがいた。おれのとなりを、このはまるがとおりすぎた。たいきじょには、アスマとくれないがいた。

かわらない、まいにち。なにも、なにも、かわらない。かわったのは、おれのまわりだけ。あさおきて、からっぽのとなり。つかわれなくなった、はぶらしとマグカップ。きられなくなった、ワンピース。そとにでても、からっぽのおれのひだりて。ぽかんと、こころにあながあいたようだ。どこをさがしても、いないんだ。ぬくもりも、ない。



でも、


めをとじたら、




君がどこかで笑った気がした




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