気付いた時には遅かった


雅治のために朝早く起きる。雅治のために朝窓をあける。雅治のために朝食の支度をする。雅治のために彼を起こす。雅治のためにネクタイを結んであげる。雅治のために彼を見送る。雅治のために食器をあらう。雅治のために洗濯物を干す。雅治のためにスーパーへ買い出しに行く。雅治のために部屋の掃除をする。雅治のために洗濯物を畳む。雅治のためにアイロンをかける。雅治のために夕食をつくる。雅治のために彼を出迎える。雅治のために夕食の片づけをする。雅治のために風呂掃除をする。雅治のために寝具を整える。雅治のためにセックスをする。雅治のために、ために、ために、そんなものばかりでいつの間にか自己を保つことを忘れるほど、彼を愛していたらしい。恋は盲目、そんなかわいらしい言葉ではない。愛とは大切なものだけど、それひとつに人生を注いだらろくなものにはならないんだろう。死んでからこんなことを思ってももはやおそい。目の前にはやせ細って硬直状態になった私のシタイが横たわっていた。



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