おなべ


冬の季節がやってきた
冬といったら鍋をするしかない。




「鍋買え」
「何なんじゃいきなり」



こたつに入りながらみかんをむさぼっていた雅治が嫌そうな顔をしながら私をにらんだ。こわ



「鍋がしたいんだよ」
「あいにくうちには鍋はない」
「だから買ってって頼んでるんじゃん」
「無理。かねない」





カネないのか。やっぱり世の中カネで回ってるんだと思った。カネのせいで私は鍋をすることもできないらしい。
どうでもいいけど雅治の手が黄色くなってる。みかん食べすぎだろ。はげるぞ





「鍋のシメはやっぱりラーメンかな」
「何いっとるんじゃ、米じゃろ」
「邪道」
「ちょっと黙りんしゃい」
「米はね、汁を吸うからだめだよ、だめ」
「まあ…確かに時間がたつと汁なくなるな」
「自分の愚かさわかったかい?」
「だまれ」





机に広がる無数のミカンの残骸がヒトデに見えた。しばらく雅治がミカンを食べる様子を観察することにした





「…何見てるんじゃ」
何照れてんだハゲ


まあそれはいいとして




「雅治、ミカンの白い所もたべなよ」
「無理。まずいじゃろ」
「そこに栄養があるんだよ?学校で教わらなかった?」
「うん、教わんなかった」
「あと、手が黄色くなるまで食べると命にかかわるよ、学校で教わらなかった?」
「うん、教わらなかった」



さすが出身地不明の男、匂う雅治。
「仁王じゃろ」
「でさ、鍋の話だけど」
「俺は金ないぜよ」
「だからさ、だれかの家でやろうよ」
「だれかって、だれじゃ」
「真田くんとかさ、」
「あー、あいつの家なら土鍋とかありそうじゃ」
「あ、でもあたし柳君好きだから柳君の家にしよ」
「浮気か」
「うん」
「浮気なんかしたら泣いちゃうなり」

だる




ぴゅ!
「いて!」
「なに?」
「みかんの汁が目に…」
「ざまあ」
「黙りんしゃい」




ふと机をみるとヒトデが増えていた。ああもう、せっかく買ったミカン、全部ヒトデにしやがって。





「みかん食べたかった」
「早いものがちじゃ」
「ねー、ミカンかいにいこう」
「…そうじゃな」
「ついでに鍋セット買って柳君の家にいこう」
「ああ、いい考えじゃ」




よし、雅治には内緒でラーメン買ったろ。そんで肉はムネ肉にしたろ。きっと雅治は歯に挟まったとかいって苦しむんだろうな




「何たくらんどるんじゃ」
「え」
バレた



「…ミカン、柳の家に大量にありそうじゃな」
「ああ、たしかに」
「買ってくのやめるか」
「うん、いいよ」

これ以上買ったら雅治の命にかかわるもんね。

寒い道路を二人手をつないで歩いた。
はたからみたらカップルにみえるかな。でもわたしは雅治の手が黄色くなってることに目がいって仕方なかったんだ。おしまい。



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