時 間




一人でいるのが好きだった。なにも考える必要がなくて楽だ。私は未だあの「人は一人では生きていけない」という決まり文句を否定しつづけたかった。今は、仁王くんが隣にいる。まるで気配がないかのように、そこに、いる。でもそれだけで良いのだ。この空間に、私と仁王くんがいる、それに価値がある。嗚呼、夏だ。この二人だけしかいない屋上を太陽が照らし付ける。暑い。あと少し動いたら、触れてしまいそうな距離の腕と腕は、ほんのり汗ばんでいた。「昨日ここで三組の鈴木が女の子とセックスしとった」「ふうん」仁王くんの無意味な報告に反応してみる。もしかしたら、昨日は私たちの汗とはまた別の、汗がこのコンクリートの床に落ちていたのかな。嗚呼、夏だなあ。「…セックス、しよ」「いいよ」「ゴム、あるし」「ここやだ」仁王くんは私の手をとり歩き始める。少し涼しい階段を掛け降りる。この瞬間、仁王くんと繋がれたこの瞬間、世界から音が消えるのだ。彼の動きのみで思考が働く。この気持ちを、表したいけど不可能だろう。でもなんでかな、涙がでるんだ。二人だけでいるのも悪くないかもな。でもその時間は果てしなくあったとしてもきっとすぐ経ってしまう、あなたとともに過ごすなら。だから私はあなたから離れる。ずっと一緒にいたいから。でもセックスは断れないの女の子だもの


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