いかないで1
あたしは謙也がすき。大好きで大好きで、やっとの思いで告白して、そして付き合うことになった。とてもよく覚えている。あれは二年の冬。一面に広がる銀世界の真ん中で、あたしは彼に愛を叫んだ。嬉しくて嬉しくて涙がでて、あたしの頬に落ちた雪と間違えたのが印象的で。でもいつからだろう、あたしの頭はあの人じゃなくて、違う人がいるようになってしまった
「あれ、久しぶりたいね」
「…ち…とせ…」
「…最近サボりが被ること少なかったとに」
「…そだね」
久しぶりに裏山にいったら千歳がいた。いや、いることはわかっていた。あたしは千歳に会うためにここにきたのだから
ふと感じた手の温もり。ゆっくり隣に目を移すと、あたしの手を覆うように握りしめる千歳の姿
「……お願い、やめて」
「…なして?」
「これ以上…入って…こないで…」
「…それは間違いばい」
千歳はそのままあたしの指に自分の指を絡め、まるで猫のようにあたしの胸から肩にかけて頭をすり寄せる
「…ん、くすぐった」
「…なあ、触って」
「…だめ……」
「前みたいに、優しく」
「だめ…だめなの」
これ以上彼をあたしの中に入れてはいけない。なのにこの手を離したくない。離したくないよ
「…いかないで」
あたしは今裏切ろうとしている