戻らないもの







「おい」

「もうかえらんと」

「雨ふってくるで」




白石が傘を

持ってきてくれた





「…ありがとう」

「はよいくで」

「まだここにいるよ」






雨が

ぽつりぽつりと降ってきた





「もう来ないやろ」

「くるよ」

「…来ないって」

「くる…よ」





本当はわかってた

謙也はこない

もうあたしの事は

忘れたんだろう






「風邪引くで」






白石は傘を広げて

あたしの上でもっててくれた。

こっそりと、

白石の優しさなんだと、

思った。

傘であたしは白石が見えない。

白石はあたしがみえない。

涙が見られないために、

なく場所を

作ってくれたんだと

勝手に思った
























泣いても無駄だと思った








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