大ダメージ
「ごちそうさま」
今日は人一倍静かに人一倍早く食べた。そして、人一倍早く食堂を去った
「あ…名前…」
謙也が何か言おうとしたのに気がついたけど、あたしは風呂入ってくる、と一言いって食堂をあとにした。ちゃんと笑えていただろうか、それだけが心配だった
▽
「…ふう…」
真っ白な湯船につかりながら、あたしは色々と物思いをした。
「…あったかい…」
温泉は温かくて、なんだか心が溶けそうな感覚におそわれ、涙がボタ、と一滴湯船に落ちた
「…ぐすッ…」
はあ。謙也のあんな一言でここまでダメージを受けるだなんで。今まではあんな言葉散々いわれてきたのに
「…あたし、どうしたんだろう」
「先輩、調子わるいんですか?」
え?誰?ふと顔を上げるとそこには桜乃ちゃんがいた。
「あれ…桜乃ちゃん」
「なんかお風呂一緒になるの、久しぶりですね…っ」
桜乃ちゃんが湯船に入ると、水面が揺れた。どうしよう、今めそめそしてたの見られちゃったかな
「…先輩、何かあったんですか?」
「え」
「なんか…悲しそうですよ」
「え…顔、が?」
「はい」
顔が悲しそうって…隠しようがないじゃないか
「…桜乃ちゃん」
「はい」
「…あたしって、前より笑うようになった…よ…ね?」
「…笑うっていうか…表情豊かになったと思います」
「え」
「なんか、前よりも感情が表にでてるっていうか…」
「………」
「あっでも私合宿のときの先輩しか知らないので…」
「…そっか」
自分が前と変わったのはわかってる。まわりだってそう言ってくるし、自分でも実感してる。でもやっぱりあたしのイメージの中に「無表情」っていうのがあるんだ
「…悲しいな」
「え?」
謙也から言われたからこんなに打撃が大きいのだろう