初々しい
コンコンコン
「名前ー、名前ー？」
あたしは今、あの巨大ベッドのある自分の部屋にいる。ドアには鍵をかけて、誰も入ってこれない。あたしは逃げたのだ。あの雰囲気にたえかねて
「…名前でてこんばい」
「千歳あほやろ！名前ちゃん、名前ちゃん、でてきー」
「名前！今からコントするで！はよでてき！」
今度は小春とユウジだ。やだよー、恥ずかしくて死にそう！
ガンッ！
「わっ…」
ビックリした。今までコンコンドアを叩いてたのに急にドアを殴るような、蹴るような音がした。一体だれ？
「おい！名前！食器が片付かねえだろ！早く飯くえ！」
跡部だ
コワイ
「…………今取り込んでます」
「何言ってんだてめえ」
ガンッ！
再び跡部がドアを蹴る。うう…なんか借金取りみたい。怖いよー
「名前、ごめん」
「…千歳？」
今度は千歳の弱々しい声が聞こえてきた。なんか心苦しい気分になってきたなあ…。あたしは少しだけドアを開けてみた。そしたらガッと開かれて、転びそうになった。跡部だ…
「チッ、早くしろよ」
「………は、はい」
もう、跡部が怖くて死にそうになった。
「名前」
「あ、千歳…」
なんだか千歳がしょげて弱々しくなっている。ちょっと冷たくしすぎたかな。
「…………ばか」
「ごめん」
「…………あほ」
「ごめん」
「…………千歳」
「………ん？」
なんだかうさぎみたいだった。こんなにデカイうさぎいたらたまんないけど。
「………あ、名前笑った」
「え」
「むぞらしかね」
「わ、笑うよあたしだって」
「そうじゃなくて」
「何？」
「名前がそげん幸せそうに笑ったの初めてみたったい」
「……そっか」
千歳をみてたら幸せな気持ちになったんだよ
「あら、仲直りしたやん」
「わっ、…いたの小春」
「ずーっと真横でみとったで」
「ユウジまで…」
小春たちはあたしにはやくご飯食べるように言った。そしたら千歳が後ろから抱きついてきて顎をあたしの頭の上にのせた。なんだかすっかり元通りだ。あとでしっかり千歳のことしかってやろう
▽
「名前先輩！！！！」
「げ、赤也君」
「先輩に彼氏だなんて信じられないっす！しかも相手が千歳さんでしかもしかもキスシーンまで目撃して……うわあああ」
「あ…ちょっと」
赤也君はすごい勢いでどこかへ走り去っていった。っていうか柳君と乾君が二人してノートになんか書いてる。コワイ
「あーあ、ばれちゃったね」
「不二君…」
「せっかくの弱みだったのになあ」
「…不二君そんなに性格悪かったっけ」
なんだか怖い反応ばかりで視線も痛い。真田君なんて目があうと顔を真っ赤にして顔を背けてくる。初々しいにもほどがある