今日は晴天
「名前、作業が遅いよ!」
「………スミマセン」
目の前にあるのは書類の山。ちょっと多いかも、とは言われてたけど多すぎだよ!ホントに1日かかるかも。千歳のこともあるしなんだか落ち着かないな―手元が狂いそう
「何ボサッとしてるんだい」
「………スミマセン」
心のゆとりがありません
▽
バコッ
「ぐっ………」
「先輩、なにしとるん」
財前の返したボールが千歳の顔面にヒットした。あほや。見るかぎり千歳の集中力はゼロやった。あかんなあ
「………白石」
「自分、あほなん?」
しょぼしょぼした千歳が寄ってきた。普段はめっちゃでかいのに今日はめっちゃ小さく見える。名前の攻撃めっちゃきいとるなあ
「………俺は知らんで」
「………うう…」
「昼御飯んとき話せばええやん」
「…………………」
魂が抜けたような千歳はなんだかいつもよかおもろかった。
▽
「えっ、いない?」
「名前先輩なら、まだ仕事が終わらないとかで当分ご飯は後回しって、おばあちゃんが言ってました」
「うわ…最悪ばい……白石―どげんしたらよかと?」
「いちいち俺に相談すな!」
「ばってん名前が…」
「たまには俺に頼らんで思った通りやってみたらどや」
「……例えば?」
「えっ、せやなあ、だ、大胆に行動、…とか」
あかん、どないやねんこの提案。千歳は俺の方見つめてうごかんし。ん〜失敗や失敗。かと思たら千歳は急にばっと立ち上がって、どっかに走っていった。…俺変な事いうたかも
▽
「おわんないなー…」
目の前には朝の半分くらいのプリントがのっている。竜崎先生は自分のノルマを終わらせてお昼ご飯にいってしまった。てつだってくれればいいのに…。おなかすいたなあ、なんて思ってたら急にドアが開いた。竜崎先生かな
バンッ
「名前っ」
「…え、千歳?」
なんで千歳が?あたしの頭の中は一瞬混乱した。そしてその瞬間今朝の記憶が蘇り、急に恥ずかしくなって顔をぐるっと背けた
「……なっなんか用?」
「名前、こっち向くたい」
「…………やだ」
「名前」
いつになく真剣な声だったから少し動揺したけど、やっぱり恥ずかしさはかわらないわけであたしは千歳に背をむけたままにした。うーん、どうしようどうしよう。あたしが動揺してるうちに後ろから手が伸びてきて、あたしの頬にふれた。は、恥ずかしい…
「……………」
「名前」
「……………」
「……仕方なかね」
千歳かえるのかな、と思って少し気を抜いた瞬間だった。千歳があたしの首もとに顔を寄せて小さくキスをした。
「……名前、また後で」
「………………」
千歳が部屋から出ていくと一気に体の力が抜けた。何?今のは。ほんの少しの間だったのになんだかとっても顔が熱くなった。どうしよう、顔が真っ赤だったのは気付かれちゃったかな。今日は晴天。気温は30もある真夏。だけどこの顔の火照りは嫌じゃなかった