挙動不審





ガチャ





「………………」




ドアを開けると金ちゃんと謙也と小春とユウジで枕投げをしとって、部屋のすみには千歳が小さくなってめそめそしとる。このわけのわからん空間で熟睡しとる銀は神なんやと思う。






「…おーい、ジュース買ってきたで」

「あ!白石や―!ジュースジュース〜」

「は〜喉乾いたわ〜」

「小春、ジュースやで!」

「あらユウ君おおきに〜」

「………俺ん分は?」






あるわけないやろ!てか何でおんねん!っていおうとしたけど千歳が死にそうな顔しとったから言えなかった。なんやねん。






「……千歳、どないしたん?さっきまでおらんかったやん」

「……名前が……」

「え?」

「名前が跡部んとこいっちゃったけん、…………」

「跡部?ああ、なんや明日の話するいうてたからな」

「……………」

「すねとるん?」

「……………」

「千歳!心せまいで!仕事なんやから仕方ないやん」

「ばってん、相手が跡部やけん、心配で心配で憎くて憎くて」

「ち…千歳、心配はわかるけど憎くてはようわからんわ」







千歳は半分放心状態でしばらく黙った。こいつ病気やな病気。名前病や。








「…跡部は………」

「ん?」

「………跡部は、名前のファーストキスば奪ったやつばい…!」

「あ、忘れとった」






そいえばこないだの合宿の帰りぎわに大胆にしとったっけなあ。こいつ、あんな事気にしとるんか、…いや、千歳にとっちゃ大事やな





「…跡部むかつく」

「ほんま仕方ないなあ、…せや、名前のセカンドちゅー奪えばええやん」

「え!!」






千歳の顔が一気に赤くなった。なんやねんこの初々しさは。ちゅーで赤くなる前に同棲で赤くなったほうがええやろ。







「む、無理に決まっちょるばい…!名前ときききききキスって…」

「なんや、したくないんか?」

「したい」

「えらいきっぱり言うな」






ガチャ






「あ、いた」

「え…名前!?」

「帰ったらいなかったからびっくりしたよ」

「は、はやかね」

「…千歳のために早く帰ってきたのに…」

「え…」






千歳はみるみる生気を取り戻し名前にガバッと抱きつき、二人はすぐに部屋へ戻っていった。なんなんやこいつらは。いつからこないなバカップルに…いや、前からか













部屋に戻ると何だか千歳が挙動不審っていうか、変。なんだろう




「…どしたの?」

「えっ?べべべ別に」

「………?」

「…俺もうねるたい」

「え?まだ10時だけど」

「おやすみ!!」







千歳はバッと布団をかぶり寝てしまった。なんなの?今日は変だなあ。







ピピピピ




「また電話…あれ?」




携帯に表示された名前はお母さん。久しぶりだなあ。どうしたんだろ






「はい」

『名前?お母さんよ』

「うん、久しぶりだね」

『うふふ、名前、23日、しっかり家にいなさいよっ!』

「23日…?なんかあるの?」

『相変わらずねえ。まあそのうちわかるわよ』

「ふうん………あ、23日って合宿最終日だ」

『え?今合宿中なの?』

「うん」

『なによ、先いいなさいよね』

「…もしかしてこっちくるの…?」

『え?いかないわよ〜。お母さんたち仕事だし』

「…よくわかんない」

『いいわよわかんなくて、それじゃあまた電話するわね』

「え、ちょっと、」

『じゃあねー』




ブツッ





「…き、きれた…」






いったいなんだったのだろうか。23日、なんかあったっけ?あたしは考えるのも面倒くさくなったので、その日は千歳と早めに寝ることにした。










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