貴方は誰?






「名前、かえるで」

「え?」





帰る?どこへ?なんていうボケに襲われたが、あたしはすぐ正気に戻った。そうだよ、今山にいるんじゃん!今から下山するのかあ…めんどくさい






「え?やないで!はよ荷物まとめて行くで」

「あ、はい」

「下山するときはちゃんと千歳についてくんやで」

「あ、はい」







気付けばもう4時だ。今日もおわりかあ…つかれたあ。あ、千歳発見







「名前っ」

「千歳」

「体調もうよかたいね」

「え?」

「さっきは顔色悪かったけん、もう大丈夫そうばい」

「……そ、そう?」








千歳、みてないようであたしのことちゃんとみてるんだ






「…………ありがと…」

「へ?」

「…なんでもない」








あたしはリュックを背負い、山道へ足を踏み入れた。朝よりも薄暗くてちょっとこわい






「名前」

「あ、ありがとう」





千歳はあたしの手を取るとゆっくり歩いてくれた。







「あ、名前ちゃんええなあ」

「これで下山はビリにならんな〜」

「い、行きだってビリじゃなかったし…っ」






小春とユウジが茶化してきてうるさい。ゆっくり歩くあたしと千歳を抜かす皆の視線がいたい。でもなんだか気分がよかったのは千歳が隣にいたからだろう















ドサッ




「も、もうだめ…」





旅館につくとすぐあたしはロビーのソファーに倒れこんだ。今から風呂かあ…あ、その前に今日使ったもの片付けなくちゃ







「桜乃ちゃん、あたし今日はやめに洗濯しとくよ」

「ありがとうございます!じゃあ私ボトル洗いますね」






そしてあたしは一息つくと皆から汚れ物を回収してランドリーへいき、洗濯を始めた。






「…………暇」






静かな部屋に響くのは洗濯機の音だけでぼーっとしてしまう。今日のご飯はなんだろう。少なめならいいなあ…








「これもいいかな?」

「…あ、はい」






あたしは話し掛けられたほうを向いて無意識に洗濯物を手に取った。……あれ?この人誰………?








「…………………」

「僕の顔に何かついてる?」

「…ついてない」







こんなひといたっけか?…うん、いないよ絶対。あ!従業員のひとかな?一応こっちは客なのに洗濯頼むなんて、非常識な…








「………………」

「………………」

「………………」








何故いる?何故?彼はあたしの横に立って離れない。なぞだ。そういえば服装も従業員っぽくないし………不振者?








「………………」

「くすっ、言いたいことがあるなら言っていいよ?」

「え…っ」







内心をつかれてドキッとした。なにこの人!こわい!







「赤也の言ってたとおり面白いなあ」

「………あ、かや君……?」

「じゃあまたね、名字さん」







ホントに誰ですか?








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