現実と夢
「……もー無理」
現在地山の中。あたしは何をしてるのだろう。何故登山?何故?マネージャー業は?
「名前―おいてくで―」
あたしの今の位置は登山列の最後尾。あたしの後ろには誰もいなく前にはユウジと小春がいるだけである。この二人に離されたらあたし遭難する!嫌!
「ま、待って……」
「ほんま体力ないな―。千歳もう前いってまったで」
「名前ちゃん、ファイトや!」
千歳は謙也と一緒に随分前に手塚君や真田君について先にいってしまったのだ。まあこれは練習の一部だし仕方がない。千歳は何げに真面目だし…
「名前―!なにしとるん?上で千歳がまっとったで!!」
「げ、遠山君…随分前に先に行かなかったっけ」
「もう頂上ついたんや!白石と千歳に言われて名前引っ張りにきたで〜」
「え、いい、やめて」
「いくでぇ!」
「あ、ちょっと」
遠山君はあたしの腕を掴んで思いっきり走りだした。追い付けないから、足もつれるから、ああ前に白石に掴まれて学校まで走った悪夢を思い出した。死の一文字が頭をよぎった瞬間だった。
▽
「…はあ、はあ、…あ〜」
遠山君に手を引かれてあたしは走って山の頂上まできた。途中半分意識を失いかけたし、鳳君とか芥川君とか不二君とか、あの辺の穏やかな人たちを抜きまくったし、あたしは現実と夢の境目がどこかわからなかった
「名前!走ってきたと?」
「チャレンジャーやな〜」
「……おまえらが遠山君よこしたせいだろが………」
あたしはこれまでにないほど千歳と白石を睨んだ。暫くするとあたしが抜いた鳳君芥川君不二君、あと小春とユウジが山頂へたどり着いた。あたしも穏やかに到着したかったよ
「名前、これ」
「…あ、ありがとう」
千歳はあたしに水とタオルを渡して頭をぽんぽん撫でると、テニスコートへ走っていってしまった。今気付いたけど広いコートが四面もある。さすが跡部…。あたしはテニスコートへ向かう千歳の後ろ姿を眺めながら水を飲んだ。なんだか少し胸がちくちくした気がした。