そして僕は恋い焦がれる





「…あんた最近おかしいね」
「えっ…何が?」
「よくぼーっとしてるし…なんかおとなしいし」
「そう?…普通だけど」







友子があたしをじーっと観察してきた。だからとりあえずノートで顔を隠してみた。







「…今日の帰りはどうするの?」
「え…あー…帰る」
「仁王君、見ていかないの?」
「………うん」
「…あたし見に行きたい。だから付き合ってよ」
「えっ?……」
「だめ?」
「いや…うん、いくよ」







友子のお願いはさすがに断れず、帰りにテニス部に寄ることになってしまった。今そういう気分じゃないのになあ。




















「お、やってるやってる」






友子は小走りでテニスコートへと近づいていった。あたしはその友子の後ろ姿を目で追い、雅治の方へ目を向けた。







「………雅治だ」






頑張ってるのかただ遊んでるのかわからないけれど、ボールを追う雅治は真面目な顔をしていた








「あ、…ミスした」






少し顔を歪める雅治は何だかかわいかった。しばらくして雅治と柳生君の試合が終わり、雅治がコートから出てきた。あたしはそれと同時に木の後ろに隠れた







「………はあ、何やってるんだろうあたし…」









極力雅治との接触は避けたかった。家での会話以外はあまりしたくなかった。






「仁王に声をかけないのか」
「わっ…柳、君…」
「こんな木の後ろなんかから見てなくてもいいだろう」
「…別に…見たくない…し、」
「ほう、一体どんな心変わりだ」








「あたしは雅治のファンじゃないの」




「…あたしは、ただの同居人で」






「だから、雅治がでていったら、もう接点はなくなるの」





「だからもう、必要最低限のこと以外はしたくないの」












「…ならなぜそんな顔をする」








気が付けばあたしの目は涙でいっぱいだった










「………ぅ、みないでよ」
「…仁王に出ていってほしくないんだろう」
「……………」







でもいえない。
このままずっと家にいてなんていえない。雅治には好きな人がいるんだから







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