鳩は前にしか進まない




雅治には好きな人がいる。たったそれだけであたしは何だか変な気分になった。しかしまた新たにあたしを悩ます気持ちが生まれた。



「…あと二週間……」






10月まであと二週間。それは雅治の居候期限と同じだ。雅治がこの家を出ていく日が近づいている。なんともおかしな気分だ。







「名前ちゃんおはよ―」
「…ん〜…雅治…?」
「もう7時半ナリ」
「…………え、嘘」
「ホント。目覚めないならちゅーするぜよ」
「あ、起きたわ」







雅治の冗談を軽くかわしながら、あたしはバッと布団をはぎ、急いで学校の支度を始めた








「よし、雅治準備できた?」
「できたー」
「じゃあいくよ。雅治はやく靴はいて」
「名前ちゃん、手」
「…………」
「手繋がないなら学校なんていかん」
「…なによそれ、…じゃあ途中までよ」







そういうと雅治はニコニコしながら靴をはいた。嬉しそうだなあ。ていうかあたしなんかと手つないでていいのかな。雅治、好きな人と登校しなくていいのかなあ








「…ま、雅治さ」
「ん―?」
「………なんでもない」








自分意気地なし。



















「じゃ、いってくるぜよ」
「はいはい、また後でね」








中学の校舎へと向かう雅治の後ろ姿を目で追った。こんな生活もあと二週間…か。







「……あたしも学校いかなくちゃ」






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