哀しみの海を渡る



「同じマンション?」
「うん」
「なんで今まで気付かなかったの?」
「…さあ」







友子は机に広げた弁当を食べながらあたしをあきれたようにみた。







「そういえば明後日でしょ、全国大会」
「え」
「また知らないの?」
「あんまり話さないから」
「応援は?行かないの?」
「…うーん…いかない」
「えー、行けばいいのに」
「……いかないよ」


















「…名前ちゃん?」






部活が終わり家に帰ると部屋が真っ暗だった。こういう時はきまって名前ちゃんが寝ているのだ。昨日の名前ちゃんの様子からして何か考え事をしているのは明らかだった。また男に告白でもされたのか








「…電気つけるぜよ」




カチ





寝室の電気をつけると制服のままベッドに倒れこむ名前ちゃんの姿が目に入った。起こさないようにそばに寄ってみると、寝返りをうち顔がよく見えた。







「…こういうの、多いのう」
「…………ん」
「名前ちゃん」
「………………」
「…寝とるんか」
「……ん―……」
「…いつも家にいてくれて嬉しいぜよ」







疲れた体で家に帰るといつも名前ちゃんが笑って待っててくれている。それが一番心地よいことだった






「…もう8月、居候もあと2ヶ月じゃな」






言葉にしたことでやたらと現実味が増した。





「…クリスマスとか、正月とか、何しとるんじゃろ」
「もうお互い違う部屋で違うことして過ごしてるんじゃろな」








「……ずっと一緒でしょ…」
「………へ」
「…………………」
「……寝言?」
「…クリスマスも…雅治の誕生日も…あたしの誕生日もお正月も…全部一緒…………に……」







寝言なのか返事をしてるのかよくわからなかったが、なんだかものすごく泣きたくなった。俺は名前ちゃんに毛布をかけて寝室を出た。





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