ただし本当は何ひとつ


ガチャ




「…ただいま―」






静かに家のドアをあけると、なんだかいい匂いがした







「おかえり〜」
「…雅治……何してるの」
「今日はイモがあったからカレー」
「え…あ、ありがとう」







やばい。あたしもカレーのルウ買ってきちゃったよ








「…今日は、練習なかったんだ?」
「おう」







雅治はガスコンロに向かい、あたしに背を向けたまま答えた。








「あたしお茶とか用意するね」





















「どーぞ」
「わー、おいしそー」
「力作ナリ」
「へ〜、何かいれたの?」
「隠し味」
「りんごとか?」
「オクラ」
「………」
「嘘じゃ」




一瞬ネトネトのカレーを連想してしまった。あたしは安心してカレーを食べはじめた。それにしても頭が混乱しそうだった。まさか雅治の実家がこのマンションだったなんて。確かに一番初めにこのマンションに雅治を連れてきたときに、雅治がマンションを眺めながらぼんやりしていた気もする。一体何号室なんだろう。今まで家族と遭遇したこととかなかったのかな。ああもう!聞きたいことばっかりだ








「名前ちゃん?」
「…え?な、何?」
「手とまってるぜよ」
「…あ」
「まずかった?」
「まさか!おいしいよ」


あたしは再びカレーを食べはじめた。でも頭の中がごちゃごちゃで雅治と会話することができなかった


















「…名前ちゃん」
「……ん〜」
「…ぼーっとしすぎ」
「…ん〜」
「…はあ」






あたしは色々考えた。雅治の親に言ったほうがいいのか、とか、雅治をほっといていいのか、とか。でも答えは何もでなかった







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