恋人ごっこ、わたしはひとり
「あ、換気扇つけなきゃ」
焼肉を作るときにいつも雅治に注意される、換気扇のつけ忘れ。あたしは急いで換気扇をつけに行った。
「…雅治、遅いなあ」
どっかで打ち上げとかしてるのかな。ていうか勝ったのだろうか。時計をみたらもう9時だった。
「メール、してみるべきかな」
ケータイを手にとってみたけど、やっぱりやめた。あたしは無駄にそわそわした。雅治は勝ったのか、今何をしているのか、今どこにいるのか、何時に帰ってくるのか、
「…電話しよう!」
電話ならすぐ話せるし、いいよね。あたしは番号を打って雅治に電話をかけた。
プルルルル
プルルルル
「…でないな…」
プツ、
『こちらの番号はただいま電源が切れているか…』
「え?」
電源切ってるのかな。あ、電池切れちゃったのかも!
「どうしよう」
なんだか虚しくなってきた。
「…どうしよう」
目の前には冷め切った焼肉だけがあった。雅治が喜ぶだろう