甘噛みだけなら慣れっこよ
「ついたぞ」
「ここ…」
「部室だ。遠慮せず入ってくれ」
いや遠慮するだろう。あたしはいつもどおり下校しようと思ってたのに、ていうかケーキ食べたかったのに、この雅治の友人柳君に拉致されたのだ
「あたし帰ります」
「なんだ、ドアくらい自分であけろ」
「話が噛み合ってないよ。ていうか、あたし年上…」
悲しくなってきた!とりあえずガチャ、とドアを開けてみた
ガバッ
「きゃ…っ」
「名前ちゃん!」
「ま…雅治」
部室に入った瞬間雅治に抱きつかれた。重い!本当になんなの?
「あ!仁王の保護者!」
「とりあえずここへ座れ」
赤髪の彼はまたあたしを保護者と呼んだ。ていうか、何?尋問?
「…し…失礼します」
「早速本題に入ろう」
「な、何でしょう」
柳君が椅子に座るあたしの前に立ち話し始めた
「率直に言おう。お前にテニス部のマネージャーをしてもらいたい」
「………は?」
「正確に言うと、仁王のお守りだな」
いみわかんないから
「やだよ、ていうかあたし高校生だから!」
「正式に入部させるつもりはない。あくまで手伝いとしてだ」
なにそれ!普通に嫌だし。家では雅治のエサ作りその他色々してやって学校では部活のお守り?無理無理無理無理。雅治をちらっと見てみると期待の眼差しであたしを見ている
「…嫌です」
「…………だそうだ、どうする仁王」
「俺名前ちゃんおらんとやる気でないナリ」
「は?ちょっと雅治しっかりしてよ!大体あたしがいなかった時はしっかり部活してたんでしょ?」
「以前の仁王と現在の仁王を比べると約1.73倍練習量が増えているな。」
「名前ちゃんと暮らし初めてから調子ええんじゃ」
なにその計算!あたしがしばらく口を閉じていると奥に座っていた監督らしき人が腰をあげた
「桜井といったな…仁王のやる気は確かに以前より向上している。もし本当にお前のおかげならば是非仁王のお守りをしてもらいたいものだ」
「……え…えっと」
しかも威厳がある。逆らえない気持ちがする!
「あの、柳君とか監督さんが言ってることはわかるけど…あたしにはあたしの生活もあるし」
「名前ちゃん、こいつは監督じゃのうて副部長の真田じゃ」
「え!?」
副部長?=中3?てっきり30後半の監督かと…
「あはは!真田監督とかいわれてるぜ!」
「真田副部長かわいそ〜」
まわりの赤髪君ともじゃもじゃ君もちゃかすな!あたしの立場がどんどん悪く…
「きさま中々失礼だな、」
「はいすみません」
「…で、マネージャーはできないと?」
「…ハイ」
「えー名前ちゃんのケチ!」
かわいこぶるな!大体雅治が悪いんだよ
「…じゃあさ、雅治が部活おわるまで待ってるから…それじゃだめ?」
「…待ってる間は何するんじゃ」
「図書室で勉強かな」
「………………」
雅治は不満そうな顔をしている。ああもう理不尽だ