小春好きな彼女
無駄に長く感じた1日がおわった。今から部活である。ほんとはテニス部マネージャーになる気なんて一ミリもなかった。ふつうに帰宅部になって自由な毎日を送る。それがあたしの夢だったのに・・。一年の文化祭の後、白石に半分強制で入れられたのだ。
「は〜めんどうだなあ」
「名前!今から部活?」
振り向くと愛子がこれまたまぶしい笑顔で立っていた。
「そ。めんどくさい・・・」
「そんなこといいながらも完璧に仕事するやん。そこが名前のええとこやな」
「仕方ないよ。仕事は仕事だし・・・」
「ま、がんばり〜。あたしも今から部活やねん。」
愛子はバスケ部の部長だ。かなり運動神経がいいのだ。あたしは機敏な動きは苦手だから少し羨ましい。
「じゃあまた明日な。しっかり働き!」
手をぶんぶんふりながら愛子は体育館の方へとかけていった。
あたしも女子更衣室で着替えたあと、テニス部の部室へむかい、ドアを叩いた。
「苗字です。入りますよ。」
がちゃ、とドアを開けると顔面になにかがぶつかってきた。ぼすっと微妙な効果音のあとに、あたしの足元にぽと、と落ちた。
「・・・いった・・なにこれ・・」
「あ〜〜〜名前ちゃんやったんか!もう!なにしとんのユウ君!」
「げっすすすまん名前!てっきり財前かとおもたんや!」
・・・・・・あたしの手にはかわいらしいくまのぬいぐるみ。またあのアホ二人か、とため息がでた。しかしあたしは小春は好きだからゆるそうと思う。
「ごめんなあ〜名前ちゃん。怪我とかしてへん?」
「大丈夫。あんまり変なことはしないでね」
小春は男って感じがしない。でも女でもないからいやな女らしさもなく、なんだか好き。
「名前大丈夫か?これ、部誌や。今日もよろしくな。」
白石が部誌を渡してくれた。軽くお礼をいって、あたしは早速今日のドリンクやタオルの準備をしようとテニスコートへ向かった。
「ほんまに名前は小春にはなついとるな」
「うふ、名前ちゃんとは友達やねん」
「なんか名前からきいとらん?ほんまに自分の意見とか言わん子やからよーわからんわ」
「名前ちゃんとの会話は秘密やねん。プライバシーや」