気付いた彼女
「名前は!?」
「まだどこにもおらん・・っ」
「どこいったんばい、名前・・」
どこにも名前の姿は見当たらなくて、もうなすすべがなかった。あんな長身の女が誰にも目撃されないなんておかしい。
「白石!」
「小春・・、名前みつかったか?」
「名前ちゃんみかけたゆうてる子みつけたんや!」
「なんやて!」
「あ、この子、3組のミスコン出場するかなこちゃんやん」
「あ・・・・あたし、ミスコン説明会の途中気分悪なって・・、隅で休んどったから、帰るの遅なってん。で少し遅れて体育館出たら、・・・・高橋さんが苗字さんの頭殴ってどっか連れてくのみたんや」
「高橋!?」
「うあ〜やっぱあいつか!やるとおもたわ・・・」
「白石、高橋てだれやねん」
「ほら、たまにテニスコートにくる、テニス部ファンクラブの会長や」
「そんなんあるんたいね・・・」
「ってことは体育館の近くやな・・、探すで!」
***
「・・・うっ・・・う・・」
「アンタも泣くんだ。最近少し変わったもんね。」
「・・・あたし考えてた・・・あたしが変わった理由」
「え?」
「多分、皆のおかげなの・・。たくさん話しかけてくれて、あたしのこと必要としてくれて、だからあたし少し明るくなれたんだと思う・・・。あたしにとってテニス部の皆は本当に大切なものになってたの。だからわかるよ、皆あたしのこと顔でだけで仲良くしてくれてるんじゃないって」
「・・・凄い自身だね。やっぱりアンタむかつく!」
パシィンッ
平手で殴られた。うぅ・・・痛すぎる・・・。
「あたしはずっとガマンしてきたのよ!いくらマネージャーになりたくても普通の子じゃいじめられるのがオチだから誰でもなれるようなものじゃなかった!なのに急にあんたが転校してきて・・、ミス四天宝寺も、学年首席の座も、マネージャーも、全部奪っていって・・・・」
・・・やばい、何かこのひと可哀相だ。っていうかこの人の不幸全部あたしのせいじゃん。うわ〜どうしよ
ガン!
「!?な、何!?」
ガン!ガン!
鉄のドアを蹴る音がする。もしかして、白石が気付いて・・・!
ガシャン!
うわ。蹴りで南京錠を壊しやがった。さすがはテニス部(関係ない)さすが白石……
「名前!」
「ち・・・千歳・・・?」
え、うそ。千歳?なんで千歳?あたしはてっきり白石が来るのかと思った。もしかして皆で探してくれたのかな・・・
「名前!大丈夫か!」
「う、うん大丈夫・・・・・あ」
ぽろっと涙がごぼれて来てしまった。ああ、まずい。千歳の前で泣くのは二回目だ。ホント迷惑かけてばっかりだなあ・・
「ほっぺた、赤かよ」
「あ、大丈夫だから・・」
千歳はギロリと高橋さんをにらんで立ち上がった。この長身ににらまれたら誰だって怖いかも、高橋さん、すごいおびえてる
「ち、千歳、だめ!」
「え・・?名前?」
「その人に手出したら、あたしが怒るよ!」
「だってこいつは名前を・・っ」
「でも・・・っ・・。あたしのせいでもあるの、お願い。やめて・・・」
「・・・・わかった」
千歳は高橋さんから視線をはずし、あたしの頬を撫でた。
「・・・高橋さん、あたし高橋さんからいろんなもの奪っちゃってたことわかんなかった。でもそれ、あたしにも大切なことなの!だから高橋さんに譲れないし、譲りたくないの!ごめんね」
「名前・・・」
「いこう、もう大丈夫だから」
高橋さんはその場に泣き崩れてしまった。あたしたちはあまり気にかけずに体育館の倉庫をあとにした。