天然な彼女



「めっちゃみとるで!あの女!」

白石には聞こえないくらいの声で愛子が耳打ちしてきた。集団全員が横目でこっちを見ている。でもほかには手出しはしてこないから、まだタチが悪くはない。しかしじろじろ見られるのは気分が悪い。時計を見るとまだ授業開始には30分もある。(ショートなんて無いのと一緒!)


「愛子、白石君、あたしちょっとトイレ行って来る。」



二人はえっという顔をしていたが、声をかけられないうちに足早に教室をたちさった。




***




名前が姿を消すのはいつものこと。部活中もたまに姿がみえなくなる。まあマネージャーの仕事は完璧にこなすからええけど。




「・・・ホントに困るな、あの鈍感ぶり」

「せやなあ。名前絶対なんで自分が手出しされないかわかってへんで」


名前の鈍感ぶりについて春野さんと話とったらキリがないことに気付いた。名前は成績は校内一位、さらにはミスコン優勝、こんな強力な強みは名前以外はもてんのや。せやからいくら親衛隊の女の子たちが名前に不満を持っとっても手出しはできない。名前と自分の格の違いを思い知らされるから。問題なのは名前や。自分がすごいから手出しされない、ではなく相手が優しい人やから手出しされんおもっとる。とんだ勘違いや。



「天然・・・ゆうんかあれ」

「さあな―。まあ人工やないのは確実や。」



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