抱きしめられる彼女



「跡部やだなあ・・・」



部屋までの道のりでぽろ、とこぼしたあたしの言葉に千歳と財前君は目を丸くしてふりむいた。



「ほんま鈍感や」

「・・・?なに?」

「名前はしらんでよか!」



***



次の日、気が付けばもう合宿五日目。残りもあと少しだ。今日の担当は立海と青学だった。不二君とか菊丸君とか知り合いもいるし全く不安はなかった。皆がコートで打ち合いをしている。休憩時間がくる前にドリンク準備しなきゃ。あたしはコートから少し離れた水道でドリンクを作りはじめた。丸井君のドリンクだけ「濃いめに!」と要望がでている。濃くて大丈夫なのかなあ・・・。



「名前先輩!」

「・・・!あ、赤也君!」

「ドリンク作るの手伝うっスよ」

「赤也君・・・練習は?」

「ちょっと休憩っスよ!」



サボりか。見つかったら真田君が怒るだろうなあ・・・・。巻き添えくいたくないし、マネージャーとしてでもなんとかして練習に戻らせなくては・・・



「赤也君、あたしは大丈夫だから練習に戻って」

「え〜」

「え〜じゃなくて。ほら、早く・・!?」



グイッとひかれる手。包み込まれる体。今赤也君に抱きしめられてる。頭が働かなかった。なにが起こってるのかわからなかった。ダメダメ、頭働かせて、なんとかこの状況を抜け出さなきゃ・・・!



「こ・・こらっやめなさい!」

「少しだけですって」



赤也君は全く離そうとしてくれない。その時、何か違和感を覚えた。赤也君てこんなに背高かったっけ・・・・?確かにあたしより小さかったような、同じくらいだったような・・・・



「・・・・だ、誰?」



あたしは頭が混乱してそんな言葉が出てきてしまった。すると赤也君らしきひとは少し反応し、あたしを抱く腕の力を少し弱めた。



「ほ、ホントに赤也君?」

「・・・ぷり」



へ?






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