慰められる彼女
その日はあたしはドリンクを渡す以外のときは、洗濯をしたり皿洗いしたりしてとにかくコートにいるのを避けた。跡部の近くにいたくない、しだいにそんな気持ちが強くなってしまったからだ。
「・・・・はあ」
思わずため息がでる。目の前の洗濯物は真っ白なのに、あたしの気分は真っ暗だった。さっきのドリンク、まずいはずがない。あたしが粉の分量間違えるはずない。皆もなんにも言ってなかったし、ただの嫌がらせだ。でもそのほうがタチが悪い。
「・・・・帰りたい」
無駄に弱くなってる自分、これくらいのことで情けないなあ。
「・・・・ご苦労」
「・・・!・・あ、手塚、君」
手塚君だ。意外な人物にあたしは少し緊張した。
「・・あ、お疲れさまです」
「ああ・・・苗字も仕事を良くしてくれて助かる。だが洗濯は確か竜崎の仕事じゃあ・・・」
「あ、いや、あたしがやらせてくれって頼んだの。」
「・・・・何か悩みでもあるのか」
「え・・・・っ?」
千歳といい手塚君といいどうしてわかっちゃうんだろ。
「なん、で・・」
「いや、さっき帰りたいと言っていたことが聞こえてな」
「・・!・・ああ、あれなら別に深い意味はないですから」
「そうか・・」
好い人だな、ほとんど他人のあたしを気遣ってくれるなんて。でもだめだ、マネージャーが選手に悩み相談してどうする。しっかりしろ、自分。
「・・・まあ、何かあったらなんでもいうといい。」
手塚君は一言言い残すと再びコートへ戻っていった。でもどうしてこんな物干し場まで・・・
「・・・よし、がんばろ!」
合宿はまだまだながい。