帰りたくなった彼女
「名前、どげんしたと?」
良かった。千歳にはきこえてなかったんだ。千歳はあたしが元気ないのに気付いてるから、これ以上心配させちゃいけない。
「先輩ら何しとるんですか」
「あ・・・財前君」
「邪魔っスよ」
「財前、随分えらそうったいね〜」
千歳もあたしから離れて財前君と席にむかいはじめた。あたしも席につこう。跡部のことなんか忘れよ。
***
「白石福神漬け〜」
「ほい。ってうわ、謙也福神漬けこぼすなや」
「は―!めっちゃうまいわ〜。おかわりー!」
「ちょっと金太郎さん!食べたまま喋らんといて!」
「小春〜俺の福神漬けやるで!」
なんかホッとするなあ。みんなといると。なんだかんだいってやっぱり四天宝寺が一番落ち着く。
「名前はん、水つぐで」
「ありがとう石田君」
このカレーおいしいな。さすが跡部の合宿所、てことか。あたしの中でなにかもやもやするものが広がっていることに気が付きはじめた。
***
「名前〜皆で枕投げするばい」
「え・・皆寝ないの?」
「せっかく皆でお泊りや!あそぶで!」
遠山君、絶対合宿の意味を取り違えてる・・・。あたしは明日のことを考えて丁重にお断わりしておいた。(この枕投げ、四天宝寺全員参加だったらしい)
***
合宿二日目、天気は快晴、脱水症状になるかってくらい暑かった。あたしは今日は四天宝寺と氷帝の担当。不安はあったが気にしてなんていられない。頑張って仕事しよう。
「休憩!!」
四天宝寺は休憩の時間になり、あたしは皆にドリンクとタオルを渡していった。みんなかなり暑そう。あたしも暑さ対策しなくちゃなあ。そんなこと考えていたら、氷帝も休憩にはいったのであたしはみんなにドリンクとタオルをもっていった。
「ありがとうな。名前ちゃん」
「ぷは!生き返るぜ!」
「わるいな」
侑士君と向日君と宍戸君がドリンクを持っていく。みんないい子だ。ちゃんとお礼もいうし、だけど・・・・
「跡部君、はい」
こいつ、跡部だ。氷帝全員ドリンクをとりにくるのにこいつだけはこない。そんなにあたしがいやですか
「・・・・・・・」
「・・?・・・いらないの?」
あたしの言葉には無反応で、ばっとあたしからドリンクを奪い取って一気に飲んだ。
「・・・まずくてのめねえな、もっとましなの作れ」
「・・・!!!」
合宿二日目、家に帰りたくなりました。