急に出勤することになりました



「は〜」
「………」
「は〜」
「………」
「は〜」
「うるせえよい」



パチンと風船ガムを破裂させて、ブン太が鬱陶しそうな顔で言った。だって、だって、悩みが耐えないんだもん仕方ないじゃん。何か知らないけど景吾サマの専属メイドになってしまったんだから



「うるさいデブ」
「あん?やんのか」


バチバチ火花が飛んだところで私とブン太の間にスっと教科書が挟まれる。




「あ、仁王」
「何じゃ名前ピリピリして。生理かのう」
「最低」
「すまん」



なんでこうもこの二人は空気読めないかね空気。いくら顔が良くても中身がこれじゃあね





「失礼なこといってんなよ」
「え」
「声にでてるぜよ」
「アハハごめん」



ふう、とため息をつき、鞄から次の授業の教科書を取り出す。そのときハラリと一枚の紙が鞄から落ちた。仁王が何じゃコレ、と言いながらそれを拾おうとし、私は全身全霊を掛けてそれを阻止



「だ、ダメ!!!!」
「何じゃ人の親切を」
「人によって親切は変わるのよ」



だって、そこにはばっちり書かれた景吾サマの電話番号とメアド。昨日渡されたのだ。













『え』
『え、じゃねえよ。携帯、持ってんだろ』
『あ、ハイ』
『教えろ』
『…なに、を?』
『…番号とアドレスに決まってんだろ』
『え、私の、デスカ?』
『他に誰がいるんだよ』





とまあ景吾サマはなんだか青筋立てつつも静かな口調で私の連絡先を聞きだしたのだった。そしてそのとき渡されたのがコレ。…登録、するべきかな。いやでもな…ううん。しばらくその紙とにらめっこしてたら、ブン太が横から除こうとしてきたから思いっきり頭をはたいてやった。このバカタレめが。






ピリリリリリ





「「「!」」」




鳴ったのは、私の携帯。え、ダレ?見知らぬ番号に戸惑う私。もしかして借金の取立て…とか…?しばらく出るか出まいか迷っていると、仁王が「はよ出んしゃい」と催促したので仕方なく出た





「…ハイ」
『俺だ』
「どちらサマで…?」
『俺だっつってんだろ』
「オレオレ詐欺か」
『アホ、景吾だ』
「け、い、…!?」




え、まさかの景吾サマ!?驚きでガタンと大きな音を立てて立ち上がると、仁王とブン太に不審な目で見られた。二人にヘラヘラ笑いつつ、そそくさと教室を出て、景吾サマに返事を返す



「す、すみません、気付かなくて」
『てめえ、登録してなかったのか』
「…スミマセン」
『まあいい、登録しておけ』
「ハイ…」
『今日、帰り迎えに行ってやる』
「…ハイ?」
『てめえは耳垢詰まってんのか?迎えに行ってやる』
「え、え、え」
『整理したいものがある。手伝え』
「お、お言葉ですが今日は出勤日ではないのですが…」
『金はだす。あたりまえだ』
「いやそういう問題じゃなく…」




だって土日のみの勤務って決まってるじゃない!しかも迎えにって…絶対あのリムジンとかで来るんでしょう?目立つ、絶対に目立つ





「きょ、今日はちょっと…」
『立海の門で待っててやる』
「え」
『中等部には行ったことがあるからな』
「え」
『高等部もその近くだろう?』
「あ、いや、あの、…最寄り駅にしてもらってもいいですか…?」
『…別にいいが』
「あ、じゃあそれで…」




って!まだ出勤するって決めたわけじゃないのに…っ





『じゃあな』





ブチ




「…き、切れた…」





なんでだあああああああ





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