専属にされました
天井の高い、気品あふれる広い部屋。聞こえるのは鳥の声。隣では、まつ毛の長い、端正な顔立ちの少年が読書中。そんな中、私は必死でテニスラケットとシューズの泥を落としていた。もしかしたら、最高の仕事場、と思う人もいるだろうが、なんだか私は心中複雑だ。さっき、あんなに怒鳴ってしまったのに、それに、なんか景吾サマ、悲しそうな顔してて、
「…ふう」
「……疲れたか?」
まずい、ため息が思わずもれてしまった。其れに気付いた景吾サマは本を閉じて私に声をかけた
「あ、いえ、すみません」
「だいぶ綺麗になったな」
シューズを手に取り、じっと見つめる景吾サマ。うーん、顔だけなら満点…
「あ、あの、他にも何かしましょうか?」
「何かって?」
「え…えっと…掃除、とか…?」
掃除しか出てこない私って
「…これはもういい。手洗ってこい」
「え…」
「はやくしろ」
「あ、はい」
景吾様に雑巾を取り上げられて、私はお手洗いへと向かった。手をあらい、大きな鏡に映る自分をみる。
「…がんばれ、ワタシ」
こんなキャラじゃないけど、でも、こうやって自分を励まさないとやっていけないと思った。しばらく一息ついて、また私は気合を入れて景吾サマの部屋へと戻った
コンコン
「入れ」
「失礼しま…す…」
ガチャ、と中へ入ると、先ほどまで景吾サマが読書をしていた机の上には、ケーキやらお茶やら、アフタヌーンティーと言えばいいのか、そんなものが用意されていた。誰か来るのか?
「あ、もしかして、今から誰かとお会いになるのですか?私、席をはずしたほうが…」
「座れ」
え?私?景吾サマは椅子をひいてくれた。座っていいの?戸惑っていたらギロリと睨まれたから、おとなしく椅子に座る。景吾サマも、その隣の椅子に座った。
「…お前のことを聞いていなかった。名前も、どこの誰なのかも」
「…わたし?」
いやでも、使用人だし、別にどうでもいいんじゃないかな
「そんなこと聞いても、多分、つまらないかと…」
「良いから話せ」
「…………」
自己紹介、ってこと?かな。とりあえず、名前年齢、くらい言えばいいのかな…
「え、っと…苗字名前です」
「名前っていうのか」
「はい…ち…高校一年生、です」
「高一?俺様の年上じゃねえか」
「え、あ、そうです、ね…」
くうう胸が痛い。本当は同い年なのに…
「名前」
「あ、ハイ」
「お前はこれから、俺の専属メイドだ」
「え」
「ずっと隣に居ろ、それだけでいい」
「え…?」
なんかややこしいことになってきたぞ