面倒事を押しつけられました


私の家から跡部財閥のお屋敷までは電車で一時間半くらい。少し遠いけど交通費も支給されるし、まあ文句を言える立場ではない。そして私は今、電車に揺られている。




「…はあ」




本当に、私なんかで大丈夫なのかな。向こうはあの跡部財閥で、こっちは先日リストラくらったような家なのに…。ブルジョアの人はよくわからない。もしかしたらイジメにあうかもしれないじゃない(妄想)



そうこうしている間に電車が止まり、降りる駅についた。改札を出て、お母さんに渡された地図を頼りに歩き出す。








「…あれ…?」





なんか、おかしい。駅出てすぐのとこって書いてあるのに。全然入口らしき門が見えてこない。跡部財閥だっていうんだし、すごい門があると思うんだけど…





「…あ、れ、この壁…」







そういえばさっきから左側に高い壁が続いている。…もしかして、これって







「ここが、跡部財閥のお屋敷?」




速足で歩き、やっとつきあたりまで出た。左を見ると、その壁はまた長く続いてて、それをたどって行ったら、ようやく門が見えた。




「う、わ…すご…」




なんか、ヨーロッパっていうか、お城っていうか、言語力ないから申し訳ないんだけど、表すならそんな感じの家。うそ、この家、うちの何倍あるの?





「………」





私がここで、メイド…?














そのあと、思い切って門をくぐり、やっとの思いでお屋敷の入り口へたどり着いた。(門から玄関も長かった)アルバイトの者だということを伝えると、使用人らしき女の人が私を客間のような場所へ連れて行き、しばらく待つように指示した。




「…わ、いいにおいのお茶…」



他のメイドさんが持って来てくれたのは、いい香りのする紅茶。家では絶対にのめないような、紅茶だった。くんくんにおいをかいでいると、さっきの使用人の人が部屋に入ってきた。わ、緊張





「あなたが苗字名前さんね。現在高校一年生、ね」
「は、はい。よろしくお願いします」
「ずいぶん若いのね」
「え…あ、はい。まあ…」



ぐ、心が痛い。嘘なんてつきたくないけど…家の為だよね、うん。






「調度よかったわ、あなたのような若い方が入ってきてくれて」
「…は、い?」
「実はね、このお屋敷には旦那様の一人息子が住んでるんだけど…まあ結構やりにくい方でね。部屋を掃除しようにも、私のようなおばさんは入れてくれなくて」
「…はあ」
「でも、あなたなら大丈夫かもしれないし、」
「あ、あの、私は何をしたら…」



なんだか何を言われてるのかよくわからなくて、思わず口が開いてしまった。そしたら使用人の女の人は、ニッコリ笑ってこう言った。





「そうね、景吾様のお部屋のお掃除、また身辺整理、その他いろいろ…ってとこかしら」
「(掃除しか伝わってこなかった…)」







「じゃ、じゃあ、私はその方の部屋の掃除をしたらいいんですよね?」




ズバリ聞くと女の人はまたニッコリ笑って、聞きわけのいい子ね、って言った。え、何、怖いんだけど





「じゃあ、之に着替えたらすぐに部屋の掃除に入ってくださいね。もうすぐ景吾様が部活からお戻りに成るので」
「部活?」
「ええ、彼は優秀なテニスプレイヤーなんですよ」
「テニス、プレイヤー…」




ってことはテニス部?優秀ってことは、もしかしたら丸井とか仁王と知りあいだったり…?






「…アハハっなんてね」
「何をいってるのですか?早く着替えて」
「あ、ハイ」





うん、そんなわけない。そんなわけない。もしそうだったら困る。私働けなくなる。だめ、そんなのだめ。お母さんのためにも、お父さんのためにも、自分の為にも、私は働かなくちゃいけないんだから…っ





「(なんか、結構やりにくいお子さんらしいけど、でも大丈夫よね、掃除したらそれでいいんだから、私はやる事をやればいい、)」







メイド服に着替えながら、私は頭の中で色々な思いを巡らせていた。この後のことなんか、全く見当もつかないまま、、






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -