彼の優しさを知りました
「金、かそか?」
「へっ?」
オシタリ君のその言葉に、私はパっと顔をあげた。いやいやいやでもそれって借金じゃんか、、、
「い、いいですよそんな…」
「遠慮いらんで?利子もつけんし」
利子って!怖い!
「…やぱりいいです。お金もないし、景吾の趣味も知らないし、彼が喜ぶものなんて、わからないし…」
「…………」
沈黙が続いた。チラリと顔をあげてオシタリ君の顔を見ると、何やら考え込んでいるご様子。
「あいつは姫さんがあげるならなんでも喜ぶと思うけどなあ」
そういうと、オシタリ君は私の腕を引いて、再び伊勢丹へとはいって行った。
「ちょ、ちょっと、本当にいいですって、!」
「ええから、ちょっとここでまっとって」
ある店の前で、オシタリ君は腕をはなし、店の中へ一人でずかずかとはいって行った。どうしようもない私は、とりあえず近くにあったイスに座り込んだ。まるで妻の買い物を待つダンナみたいだ…
オシタリ君、どういうつもりなんだろう、そう思いながらしばらく待っていると、オシタリ君が戻ってきた。
「これ、跡部に渡し」
「…これって…」
「俺が適当なモン見繕ってやったし、中身は大丈夫や」
「…でも、お金…」
「金はいらん。俺からの頼みや、それ跡部にあげたって」
「……どうしてここまでしてくれるの?」
「跡部が喜ぶ顔が見たいから」
ああ、彼は景吾のことがすごく好きなんだ、そう思った