もらっちゃいました


景吾に私の秘密がバレてから一週間がたった。私は相変わらず、前と同様にメイドとして働かせてもらっている。ここまで来ると景吾様様だ。あのとき、私の秘密がばれたと同時に、景吾に対する好きという気持ちにも気がついたのだけど、私は思ったよりも冷静で、その身分の違いをきちんと理解しているのか、この後自分が景吾とどうこうなるとか、そういうことを考えることは一切なかった。



「身分が違い過ぎるもん…」




大企業の御曹司と、借金まみれの一般、いやそれ以下の家庭の娘。時代劇のヒロインにでもなった気分で、私は窓の外を眺めながらポツリとつぶやいた。




「あ?なんか言ったか?」
「…ほんとブン太は地獄耳なんだから」
「喧嘩売ってんのかよい」
「はいはい、前向いて、先生に怒られるよー」


今はHRの最中で先生のながーいお話の最中だ。私の方を向いてぶつぶつ小言をいうブン太に、先生が「丸井ー」と注意する。ほらみろ…





「ちぇ、お前のせいで怒られたじゃんか」
「しらないよ」




ブン太がこんな風に前みたいに話してくれるようになったのは、つい先日だ。あの景吾との修羅場をみられてからは、しばらく口をきいてくれなかったのだ。多分、私がメイドとして跡部家で働いていたことを隠してたから。








「なあ名前」
「なに?」
「…なんかあったら、ちゃんと言えよ」
「え…」
「アイスぐらいは奢ってやるし…」




それはお金に困ったらってこと?と疑問に思ったけど、ブン太なりの優しさなのだと思っておとなしくうなづいた。ありがとね、って言ったらブン太が少し笑ってくれたから、嬉しかった。






「じゃ、今日はここまで、気をつけてかえれよ――」





HRが終わると、私は急いで帰る支度をした。今日は平日なんだけど、景吾お呼ばれされてるんだ。なんか見せたいものがあるとかないとか、早くいかないと、電車を逃したら次が来るのは大分遅い




「…もしかして今日もバイト?」
「うん、早くいかないと電車逃しちゃう」
「……がんばれよ」
「ありがとう」
















走った。とにかく走った。全速力で走った。駅に着いた時、私の目の前を電車が走って行った。







「あ〜…やっちゃった、」





あんなに全速力で走ったのに、電車を逃してしまった。ああもう、ついてない、先生の長い話のせいだ!なんてことを考えながら、一度駅をでた。まだ時間がだいぶあるし、その辺をプラプラしようとおもった、のだけど。





「…な、なんで?」
「テメー、またメールみてねえだろ」






駅を出た瞬間、私の目の前に止まった一台のベンツ。ひい、景吾が鬼のような顔で窓から顔を出した。メールなんて見てないよ!






「ゴメン、電車に遅れそうだったから」
「基本的に平日は俺が迎えに行くからおとなしく待ってろ」
「…ハイ」




のれよ、と景吾が促し私は後部座席の景吾の隣に座った。





「今日はお前に見せるものがあるからな」
「見せるもの?それって何?」
「まあお楽しみだ」
「…ふうん」




なんだろう、自分の写真とか?いや、そこまでナルシストじゃないよな、などと思いを巡らせながら車に揺られて数十分、あっという間に跡部家についた。





出会うメイドさんや執事さんに挨拶をしながら景吾の部屋へと向かう。そして、部屋に入った瞬間、私は目を見開いた







「……こ、れ…」








そこにあったのは、黒い、ドレス。イブニングドレスだった




「…これ、もしかして、景吾の…?」
「アホか」


バシ、と頭を叩かれた。イタイ…





「お前のだよ」




そういうと景吾は跪き、私のローファーと靴下を脱がせると、可愛いヒールの靴を私に履かせた。なにこれ、王子様みたい…





「私、の?」
「前にカタログみせたじゃねえか、今度パーティーがあるからお前もって。」
「あ、あれか!…本当にこれ、私がきていいの?」
「お前の為に特注したんだ。お前が着なきゃ服がもったいねえ」
「…あ、ありがとう…」





内心すごくうれしかったんだけど、同時に不安もあった。パーティーって、何のパーティー…?いろんな企業の社長さんたちや、その御曹司が集まるようなパーティー?そんなのに私が行ってもいいの?





「きてみろよ」
「え…」
「パーティーは今週の日曜だからな」
「う、うん。わかった」
「…………」
「…………」
「…………」
「……もう!出てってよ!」




グイグイと景吾の背中を押して部屋から追い出すと、景吾は小さく舌打ちをした。なんでだ









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