バレてしまいそうです
「…………」
「…………」
「…………」
「……クソメガネ、気持ちわりいぞ」
「…景ちゃん…」
次の日学校へ行くと、クソメガネ(忍足)がじっと俺の方を見てきてぞっとした。なんだコイツ。気持ちわりいな。
「…"苗字"サン、結構普通の子やな」
「ブッ」
思わず飲んでいた紅茶を吹き出した。何なんだコイツは、なんであいつのこと知ってやがる
「てめえ、何のつもりだ」
「別に、跡部が夢中になる女の子やし、気に成っただけ」
「ストーカーかてめえは」
ほんっとに面倒な奴だぜ。だからコイツには知られたくなかったんだ。
「…おそろいのカギ、もっとったなあ」
「…………」
「仲良しやん」
「……うるせえよ」
「…そういえば、立海の制服、可愛かったなあ」
「知るか」
「景ちゃんはどっちが好み?中等部と高等部」
「興味ねえよ」
「(…そうか、跡部は立海の制服を知らなかったんやな。おバカさんやなあ…)」
ペラペラうるさい忍足を置いて帰ろうとしたら、忍足が俺の手を掴む。
「なんだよ」
「なあ跡部。女の子って怖いで?よーく見ないとあかんよ」
「…何が言いたい」
「苗字サン。どこが気に行ったのかは知らへんけど、案外あの子も裏あるかもやで」
バシッ
思わず忍足の頬を殴った。メガネが飛んで、忍足がゆっくりと其れを拾う。
「何が言いたいのかは知らねえが、俺の目に狂いはねえよ」
それだけ言い残して部室を出る。だがモヤモヤが残った。このモヤモヤは何なんだ。正門には迎えが待っていたが、其れに乗ってそのまま家に帰る気にもならなかった。さっきの忍足の言葉が気になる。名前が俺に隠し事してるってか?あいつが?あの臆病なあいつが?一体何を?気になる気持ちが膨らんで、俺は迎えをそのまま帰らせて、電車で立海へ向かうことにした。
・
・
駅に着き、立海への道のりを歩く。心なしか早あるきになっている。はやくアイツに会いたい。会いたい。会いたい。あって、確かめたい。あいつのことを。
実は大変な男好きなのか?
男を金ずるにしてるのか?
そんな妄想ばかりが膨らんでいく。あいつには、真っ白な純粋なままでいてほしい。そんなあいつだから傍に置かせてるんだ。そういう奴しか、俺のことを怒れるやつはいないから
「…っ、名前…!」
「…け、い…ご…?」
やっと見つけた名前は一人で下校中だったようで、ビックリした顔を俺に向けた。鍵を渡した時以来だった。会うのは。その鞄には俺が渡したカギがキラリと光っていて、なんだか胸が熱くなった。ちゃんとつけてくれている、やっぱりこいつに裏なんて無い。忍足のアホに乗せられたのか俺は。グイっと手を引いて、名前に近づく。名前は突然のことに驚きを隠せないようで、顔を真っ赤にしていた。
「…名前…」
『名前にさわんじゃねえよ!!!』
見つめあったのは束の間、俺達の間を引き裂いたのは、どこかで見た赤髪、立海の丸井だった。
「ぶ、ブン太!?」
「…立海の丸井じゃねえか。何の用だよ」
「うっせえ!なんかよくわかんねえけど、名前にさわるんじゃねえよい!」
「あん?何言ってんだてめえは」
言ってる意味がわからなかった。名前を見ると、顔面蒼白で固まっている。…一体なんだ?丸井の後を追ってきたのか、見たことのある奴らがゾロゾロやってきた
「…何だ丸井、いきなり走り出したと思ったら……跡部?」
「今度は柳か。ったく、何なんだよ一体」
「ほーう、これまたブンちゃんの恋敵の登場じゃな」
「仁王まで…」
「バカ仁王!黙ってろ!」
「オイ、状況がわからねえ。お前らがなんで名前の知り合いなんだ」
そういうと、立海の奴らは全員きょとんとした顔をする。名前はまだ顔面蒼白で、ずっと下を向いている。
「それはこっちのセリフだぜ!なんでテメーが名前の知り合いなんだよ!」
「あーん?こいつは俺の屋敷のメイドだ。」
「メ、イ…ド…?」
「なんじゃ苗字、メイド喫茶でバイトでも始めたのか」
「ち、違う!」
「…ごめん、ごめんなさい。」
小さくつぶやいた名前は、今にも消えてしまいそうだった