嫌われました



キラキラ。私のキーリングに、まるでどこかの宮殿のもののような鍵がつきました。キラキラ光って、すごくきれい。


昨日、私は景吾にドレスを買ってもらえるということで嬉し泣きしてしまった。だって気分はシンデレラだもん。家に帰ったらリストラの重苦しい空気が待ち構えてるんだよ。仕方ないよね。そして昨日の帰り、景吾は一つのカギを私に渡した。




『これ、持っとけ』
『…これは…鍵…』
『ああ、俺様の部屋のカギだ。普段は鍵をかけてるからな。俺がいないときでも中に入って構わない。絶対なくすなよ』
『これが部屋のカギ?すごくかわいいカギだね』
『お前専用に作らせたんだ。』
『え!?そ、そんな、申し訳ない』
『それくらいなんてことねえよ』
『ごめ…ありがとうございます』


そういうと景吾は満足そうに笑って私の頭をなでた。うう恥ずかしい




『…この光ってるのって…』
『オパールだ』
『オパール…?』
『10月の誕生石だ。てめえも10月生まれだろ』
『えっ、なんで知って…』
『履歴書に書いてあったぜ』
『あ、そう…』




なんかガクっとなったけど、感動したことには変わりない。まさか私の誕生日まで把握してくれてるなんて。





『俺と同じ誕生石だからな』
『え?』





景吾は自分のキーリングを取り出して、私はそこに光るものを見た。それは私と同じ鍵。私のはゴールドだったけど、景吾のはシルバーだった。





『…これ…おそろ、い…?』
『ああ』
『………』
『なんだよ、俺様とおそろいだぞ、光栄に思え』
『……っ』








恥ずかしいよ!











そんなこんなで次の日の朝。私は机で頬杖をつきながらその鍵を眺めていた。素敵。あんな演出してくれる人、私見たこと無い。すべてにおいて完璧な人っているんだな、と思うと同時に、その鍵を見ると心なしか心が温かくなった






バタンっ





突然の大きな音で、私はビクっと体を震わせた。なんだと思ったらご立腹のブン太がカバンを机に叩きつけた音だった。





「あ、おはよブン太」
「………はよ」
「何おこってんの?ご機嫌ナナメだね」
「うるせえよ!」





ブン太はフンっとそっぽを向いて机に突っ伏してしまった。そんなブン太の頭にポンと置かれたのはラケット。




「おーいブンちゃん。ラケット忘れてたぜよ」
「わ、におっ、てめえ頭ぐしゃぐしゃにするなよ!」




仁王はにんまりと笑うとブン太にラケットを渡した。



「すまんのう苗字。こいつ昨日から機嫌悪くてのう」
「どうしたのブン太。にぼしでも食べたら」
「うるせえよぃ!」
「ま、恋の病じゃ。そう簡単には直らんぜよ」
「恋…?」
「ああああああ仁王てめええ」
「何ブン太、好きな人できたの?教えてよ」






そういうと、ブン太の顔がひどく曇った。あれ、もしかしてフラれた後だったとか?やば、私地雷踏んだか





「………」
「あ、ごめんねブン太、お菓子食べる?」
「…いらねえよ」
「……えーっと…」
「もうしばらく俺には関わるな」
「え…」





ブン太はそういうと静かに教室を出て行ってしまった。あれ、これなんかやばい雰囲気?






「に、仁王、ブン太怒っちゃったよ、どうしよう」
「苗字は何も気にすることなかよ。俺からもあいつに言っとくぜよ」
「う、うん」







うーん、ブン太も難しいお年頃だな。うん。




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