ありがとう


つまり白石君の言いたいことは




「ショートヘアのウィッグかぶれば、名前だってばれないってこと…?」
「せやで。名前はめっちゃロングヘアやったろ?せやからばれへんて」
「で、でも…」
「ええやん、俺が見たいんやけど、男装時の女装」
「いや、見てるじゃん、ていうか家ではちゃんと女してるじゃん私」
「せやから、学校の中で見てみたいの。一緒に横並んで歩いたらカップルみたいやん?」





白石君が耳元でコソっと言った。瞬間、顔が燃えるように熱くなって、私は白石君からバット離れた。なんでこの人はこんな人前でそんなセリフ吐くかな、しかも耳元で!あああしかも謙也が怪しいまなざしでこっちをにらんでる、早く戻ろう









「ぜえーったい女装なんてしないからな!!」
「はは、はいはい」






私はそのまま白石君を無視して席へと戻った。












「なあ、白石と2人で何の話してたん?」
「え?あー、ええと…」
「俺だけ仲間外れとかさみしい」



椅子の上で体育座りをして小さくなっている謙也。なんか犬みたいだ…




「あー、だからあれだよ、何色のメイド服が好みか話し合ってたんだ」
「…何色が好きなん?」
「えー、えっと…く、黒、かな」
「結構マニアックやな…」




謙也とアホ話をしていると、ヌっと2人の上に影ができた。隣を見上げてみるとそこには千歳が。ああ千歳か。











…!?千歳!???






「おお、千歳。どないしたん」
「英語の課題やり忘れとったばい、辞書かして」
「ああ、ええよ、ちょい待ってな」



謙也はそのまま辞書を探しにロッカーへと走って行った。はやっ




「…(ていうか…)」



そういえば、千歳とはものすごーくきまずい感じで終わったのではなかったのだろうか、ううう、顔あげられない、どうしよう、どうしよう、




「話、全部聞いたばい、白石から」
「え…」





予想外の言葉に私は思わず顔をあげた。話って、どの話?白石君、何話したの?




「白石と、うまくいったばいね」
「え、あ、…うん」
「しかも白石と一緒に暮らしてるって、すごかね」
「あ、ああ…」
「―――――まあ、」





ぽん、





「俺はずっとお前の味方ばい、いつでも頼るとよ」




千歳は私の頭に手を置き、やさしく微笑んだ。ああ、この手、千歳の手は安心する。ずっとずっと、私のこと、考えてきてくれて、助けてくれて、












「じゃ、もういくばい、白石が睨んでる。辞書はもうよかよ」
「え、あ、」




千歳はそのままひらひら手を振りながら教室を出て行った。しばらくしたら、謙也が戻ってきた。謙也に遅かったねって言ったら、ちょっと泣いていた。次千歳に会ったら、ちゃんとありがとうって言おう、







「男装時」
「ん?」
「千歳に何言われたん?」
「…んー、別に」







今まで私を支えてきてくれたのは、千歳なんだから



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