おうじさま



「おかーさーん、私の靴下知らない?学校のやつ」
「知らないわよー、家政婦さんに聞いて」
「もう、早くしないと白石君きちゃうのに!」




私は今、大急ぎで荷造りをしている。教科書、制服、私服、本、その他色々。もともとあまり物は持ってなかったし、そんなに多くはないけれど。





ピンポーン




「あ、名前、白石君きたわよー」
「えええ!ちょっとまってよ〜っ」




うわわ、やばい、待たせちゃうっ私は大きな荷物を持って、ドタドタと家の階段を下りた。






「じゃ、お母さん、またあとで電話するから!」
「名前、ちょっと待って」
「…何?」









「…あのね、…」



















ガチャ






「お待たせー白石君」
「おはよーさん、でっかい荷物やなあ」
「そりゃあね!あ、一緒に木村さんの車乗ろう?」
「ん。荷物もつで」
「あ、ありがと」





白石君は私の荷物を木村さんの車まで運んでくれた。うーん、男の子って、感じだなあ







「ちゃんと親御さんにお別れ言うたん?」
「うん、お父さんはベソベソしててうまく話せなかったけど」
「はは、あたりまえやな」
「あ、白石君、ひとつ聞いていい?」
「なんや?」




「私って白石君の家では、男…なのかな?」




















「こんにちは。今日からお世話になります、苗字名前です。よろしくお願いします。」







目の前には、白石家一同。今日から女として、この家でお世話になることになった。









「あなたが名前ちゃんね!蔵がお世話になってますー!狭い家やけど、ほんまにええの?」
「と、とんでもないです、部屋を貸していただけるだけで、本当に助かります、」
「なー、もしかして、この人がくーちゃんの彼女なん?」
「かっ…の、じょ…って…」
「うち妹の友香里ですー!名前さんてめっちゃかわええやん!くーちゃんなんかでええの?」
「あ、あの、」
「もうやめって、名前、部屋案内するわ」
「あ、ありがと」






友香里ちゃんが文句を言うのをよそに白石君は私の手を引っ張って二階へと連れて行った。…なんだか賑やかな家族だなあ…







「白石君、」
「なんや?」
「よかったの?私、女だって紹介して」
「やって、元から女やっていっとったし」
「え」
「それに、家でも男装なんて、落ち着かんやろ」
「白石君…」




じーん、とか感動してみる。本当に、なんていい人なんだろう、この人は






「…ねえ、じゃあ、この家では、私も女の子でいていいの?」
「せやで」
「……じゃあ、…その、」
「なんや?」
「白石君に、抱きついたり、とか、しても、いい?」
「え…」



あ…白石君が、赤くなった。




「べ、別にええけど、」
「はは、白石君、真っ赤!」
「あーもう、ええやん!恥ずかしいわ!」
「えへへ、」
「あ、やっぱ抱きつくの禁止」
「えっ…な、なんで?」
「抱きつくのは、俺の特権」










あーもう白石君本物の王子様に見えるよー!!


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