そしてそんで
結局白石君は私の中に、私を見つけてくれて、今までいろいろ悩んだけど、結果的にはハッピーエンドに終わりました。
終わった、はずだった
「…イギリスに、転勤…?」
白石君に送ってもらい、るんるんな気分で帰ってきてそうそうこれだ。一体なんの仕打ちなのか。お母さんは申し訳なさそうに、私の方を見ている。そんな目されても、困るよ
「なんで?私、せっかく白石君とも仲良くなれたのに…春まではあの学校に通っていいはずだったでしょ?」
「急に決まったのよ、この転勤。こないだ話そうとは思ったんだけど、あんたいろいろ悩んでるみたいだったし」
確かにこないだは悩んでた。でも、そんなの関係ないよー!こんな、幸せ絶頂なときに、そんなこと言われても…
「…私、行かない」
「え?」
「ここに残る。」
「ちょっと、何言ってるの、」
「冗談じゃないわよ。本気よ」
「無理よ、お手伝いさんたちも全員でイギリスに行くのよ、あなた一人でなんて置いていけないわ」
「知らないよ!…お、お母さんの馬鹿!」
言い返せなくなって思わず暴言を吐いた。私は本当に子供だなあ。その勢いで家を飛び出して、近くの公園まで走ってきた。…もう、なんでこう問題ばかり積み重なるのかな
私は幸せになれないの
「…名前ちゃん?」
顔をあげると、そこにはさっきまで一緒にいた人物。この暗闇でもはっきりとわかる、そのきれいな顔。白石君だ
「…し、白石君、なんでここに…」
「名前ちゃんちに行った後、そこのコンビニで油売ってん。名前ちゃんこそ、こないなとこ一人でおったら危ないで」
白石君は私の手を引いて、私が来た道を引き返そうとする。…やだ、そっちには行きたくないのに。
白石君と一緒にいたいのに。
「…白石くん…」
「…名前ちゃん…?…泣いとるん?」
下を向く私を、白石君は少しかがんで覗き込んだ。ポタ、と落ちた涙を見て、白石君は私の頬を流れた涙を、手で拭いてくれた。
「…なんかあったんか?」
・
・
とりあえずさっきの公園に戻って、お母さんに言われたことを、一通り白石君に話した。うまく、伝わったかなあ…。
「…………」
「…あの…」
「…………」
「白石、くん?」
何も返事がない白石君を不思議に思い、少し顔をのぞきこんだら、そのまま腕をひかれて胸の中まで持ってかれた。え、え、何?
「きゃっ」
「そんなん、俺が許さん」
「え?」
「やっと見つけたんや、名前ちゃんのこと、せやのに、また俺から離れてくなんて、…」
「…白石君…」
「絶対、許さん…」
私は視線を地面に向けたまま、その体にもたれかかった。
離れたくないって、心から、思った