消しゴムの客



深夜のバイトってさ、とにかく時給いいんだよね。でもさあ、同じだけ稼ぐことができるなら、楽な仕事を選ぶ、当たり前でしょ。だからコンビニの仕事を選んだんだけど、どうやらここのコンビニの店長は頭がおかしいらしい。女の私を深夜のシフトに一人だけいれるだなんて。強盗がきたらどうすんだよ。まあそれはさておき、コンビニって結構面白いんだよ。いろんな人くるしさ。覆面かぶったヒトがきたら困るんだけどね。で、最近思った。ここ、イケメンがくる。最近。今日も私はレジでイケメンを待ちます。




ピンポーン





自動ドアがあく。今は深夜の2時。さあ誰だ、こんな時間にくるやつは。






ビンゴ!イケメンだ!






今日のイケメンは、金髪の子だった。なんか、結構凛々しい顔してて、少しくしゅくしゅした金髪がカッコ良く見えた。彼は雑誌のコーナーへいき、ジャンプを読み始めた。ふうん、まあよくある光景だよね。私はというと、深夜のコンビニで頑張っちゃうはずもなく、レジで店内を眺めていた。仕事しろよ、とか自分でも思うけど無理だ、だってコンビニだよ?



「すみません」





あ。金髪のイケメンだ。私はただ普通の店員を気取る。




「いらっしゃいませ、ありがとうございますー」




あまり気の入ってない、マニュアル通りの言葉を言う。私は商品に手を伸ばすと、思わず吹き出しそうになった。だって!だってさ、消しゴム五つだよ??!え、何?まあ何買うのも自由だけどさ。私は笑をこらえながらバーコードを読み込む。どうやら彼は全く気にしてない様子。



「あ、あとSチキ一つ」
「Sチキをお一つですね、ありがとうございます」



私はSチキを取り出して、紙の袋に詰める。


「合計で630円になります」
「あー、すんません、一万で」
「お預かりします」




しかもぼんぼんかい。福沢諭吉で消しゴム五つとSチキ買うとか何事。


「先に大きい方お返しします。5.6.7.8.9千と、こちら細かい方になります。お確かめください」
「おおきに」
「レシートはご利用ですか?」
「あー、いいです」





彼は消しゴムたちを受け取り、お釣りを財布に入れながら、出口へ歩き出した





チャリーン!



「おわ!」



音のしたほうをみると、どうやらイケメンがお金をばら撒いた模様。仕方ない、手伝うか




「大丈夫ですか?」
「す、すんませんっ」
「はい、これで全部です」



お金を渡す時に、少しだけ彼と手が触れ合った。途端彼の頬は真っ赤に染まった。…この子、イケメンだけど、ヘタレだ、消しゴム好きだし、そんな事をおもいながら彼を見送った深夜だった。

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