偶然の帰り道
「俺らここ曲がりますけど」
「名前一人で大丈夫か?」
いつもの帰り道、みんながいつも曲がる道であたしに声がかかった。今日は千歳がいないから一人だったのだ。一人で暗い道を行くのもなんだから、遠回りして街のほうを通っていこうかなあ。
「大丈夫、今日は寄るところがあるから」
「そか。じゃー気いつけて。」
「名前―!またあしたな〜」
最後に遠山君のでかい声がひびいた。ここ住宅街なのに…。みんなに手を振って、いつもとは違う道へ進む。なんか変な感じだなあ。しばらく歩くと街にでて、道が一気に明るくなった。
「(………つまらん)」
一人で歩いててもつまらない。お金ないから店にも入る気がでない。あたしは暇すぎて地面のタイルを数えながら歩くことにした。(小学生だよね)
ボスッ
「ぶっ……す、すみません」
やばい。下向きすぎた。あたしは見知らぬ誰かの胸に顔をぶつけた
「名前」
「あ…あれ?千歳?」
全然見知らぬ人じゃないじゃん。ていうかよりによって千歳かよ
「名前、なんてこげんとこに…」
「え…あ〜…いろいろと…。千歳こそ部活さぼって何してたの」
「ん」
千歳が横の店を指差した。え?将棋?何歳だよ。てゆうか部活より将棋?
「将棋部入れば…」
「え?」
「なんでもない」
「せっかくだから一緒にかえるばい」
そういうと千歳はあたしの腕をひいて歩き始めた。
「…千歳って普段何してるの」
「ん〜、昼寝とか猫遊びとか」
「(猫遊び?)そ、そうなんだ」
「名前…、…今日…」
「なに?」
「あ〜、えっと、その、告白…」
「ああ、……健君?」
「それ。…その、安心したばい」
千歳はあたしの手を引いてあたしの前を歩き始めたから、千歳の顔は見えなかったけど、耳が真っ赤になってた。こんなでかい図体なのになんだかかわいく感じるなあ。その後の帰り道、あたしはタイルを数えることなく歩いた。