まっしろな世界





ガタンッガタッ





あたしはそのまま玄関に倒れこんだ。なんとか鍵だけでもあけることができてよかった。もう目を動かすのもだるいほどであった。




「…名前?おい、鍵開けたならドアくらいあけろ」




ガチャ、




跡部が不満を漏らしながらドアを開けた。






「…お、おい!何してんだよ!」

「…も…無理…立てない…」



跡部は血相変えてあたしを抱き起こしてリビングに運んでくれた。




「おい、どうしたんだ」

「………さあ」

「熱はねえな。どういうことだ」




跡部はしばらく考えるとあたしにたくさん質問してきた。




「…お前昨日部活中水のんだか?」

「………ん」

「じゃあ昨日ねたか?」

「………腐るほどねた…」

「…昨日夕飯は?」

「………食べてない」

「……………昼は」

「…………ない」

「朝は」

「………ない」




跡部はあきれた顔をしてポケットからケータイを取り出した。何するんだろう。



「オイ、忍足か?至急名前の家の前に車よこせ。今すぐだ」



え?なんで?跡部はピっとケータイを切ると再び誰かに電話をし始めた。



「白石か?…ああ、俺だ。今すぐ名前の家にこい。今すぐだ」




それだけいうと跡部はまたケータイを切った。え、白石くるの?やだよ。っていうか何で?





「名前、食欲あるか?」

「…ない」

「ったく、お前いつからメシ食ってないんだよ」

「……え」




いわれて気がついた。あたしご飯いつから食べてない?昨日は朝寝坊して部活帰ってきてからすぐ布団にもぐりこんだからたしかに食べてない。その前はお母さんたちが来たときか、確かアイスを食べておなかいっぱいになって…夜は食べなかったな





「…毎日少しずつは食べてたよ」

「お前の少しっていう量がよくわかんねえな。どうせ一口かその程度だろ」

「(…そのとうり)」




跡部はあたしの看病をしてくれた。ああ、助かった。今日跡部が来なかったらあたしのたれ死んでたかも…





ガチャ


「名前!」




しばらくすると玄関のドアが開いて白石が血相変えて入ってきた。




「名前、どないしたん?」

「…………んー」





だめだ、話す気力が…。




「ただの栄養失調だろ。こいつここんところ何にもくってなかったらしいぜ」

「…へ…?」

「…………」



そういえば白石には嘘ついて食べてるっていっちゃってたもんな…。ああ、逃げたい…




「名前、ご飯食ってるていうてたやんか」

「………」

「…はあ、嘘かいな…」



白石はあきれると跡部の横にしゃがみこんだ。…うう、良心がいたい…











しばらくするとあたしは病院にいた。消毒液のにおいがあたまにくる。あれ?いつの間に寝ちゃってたんだろう





「…まっしろ…」




天井は白、カーテンも白、ベットも白。まるで何もない空間に横たわっているようだった。ひとつ色があるとしたらあたしの腕に刺さっている点滴の色だった。





コンコン




「……はい…」



ガチャ、


ドアを開けて入ってきたのは白石と跡部と忍足君。ああ…忍足君にまで迷惑かけちゃったのか…




「名前具合どうや?」

「……変わらず…」

「栄養失調だとよ。あと貧血とかいろいろ」

「………すごいね」

「あほ!なんでメシ食わなかったんや!」

「………作りたくなかった」






ああ、弱ってると本音がでちゃうよ





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