訪問者



ピンポーン



めったに鳴らない家のインターホンがなった。こんな家に来るのは千歳しかいない、て思ったけどその日は白石もくっついてきた。



「…………なんで白石?」

「名前に合宿の話しよおもて千歳に住所聞いたらこいつがくっついてきたんや!」

「名前と二人きりなんてさせんばい!」

「……………どうでもいいからとりあえずあがって」



こういう時は部屋が片付いてなくて焦るものだけど、生憎あたしの家には物がほとんどない。だらしない生活だけど、少しだけありがたかった。


「へ〜部屋きれいやん。…いや、物がないだけやな」

「うるさいな」

「よくこんなところで生活できるな」

「はいはい、そこら辺座って。なんか飲み物とってくる」




白石と不機嫌な千歳をリビングに座らせ、あたしは冷蔵庫を開いた。



「…………や、やばい」



久しぶりに開けた冷蔵庫はありえない光景だった。元々肉や魚は入ってなかったからよかったけれど、牛乳も卵も賞味期限が過ぎている。しかも最近500mlのペットボトルを登校前に買いそれで1日の水分を保っていたから冷蔵庫にはお茶すらはいっていなかった。

「ま、まずい…どうしよう」



棚をがさがさあさっても出てくるのはカップ麺ばかりだ。この時だけは自分の生活のだらしなさが憎たらしく思った。



「…あ!こ、これは」



棚の奥深くから掘り出したのは前お母さんが買ってきてくれたお茶葉だった。よ、よかった…とりあえずこれでお茶が出せる!



「あ…」




きゅうすがない。ああ、ばかだあたし。かなり時間をかけたのにあたしは手ぶらで千歳と白石がまつリビングへと向かった。




「あれ?名前、飲み物は?」

「うるさい白石のあほ」

「な、なんやねん」

「名前…お茶もなかったと?」

「…………………」



死にたい!







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