例の彼女
あたしは急いで帰る支度をして千歳の待つ門へと向かった。階段を勢いよく降りていったらなんだか息が切れた。あたしちょっと運動不足かも…。乱れた息を整えながら小走りしてると門とでっかい巨人が見えた。あれ…誰かいる。あれ誰だっけ。あのかわいい子…
「あ、名前」
「…おまたせ…」
「名字さん?」
千歳の横にいたかわいい子がおっきな目をあたしへと向けた。あ、誰だっけこの子、最近よく見た気が…
「もしかして千歳君と名字さん…一緒に帰るとか?」
「そうばい」
「…あの、…えーっと…(名前がわからない)」
「あ、ごめんね。あたしは山本奈々子」
「山本…さん、」
「名前、この子こないだのミスコン優勝者ばい」
「あ!思い出した」
そうか、あのおいしいクッキーやらケーキやら作った子か(あたしもしかして食い意地はってる?)
「ごめんね、あたし邪魔しちゃったね」
「そんなことなかよ」
「ふふ、じゃあね。」
山本さんはひらひら手を振ると門を出て帰っていった。かわいい子だなあ。
「かわいい子だね」
「名前の方がかわいか」
「…あっそ」
ほんとすんなり恥ずかしいこというよなあ。あたしたちはたわいない話をしながら帰り始めた。
「さっきあの子と何話してたの?」
「え、あー、」
「何?」
「…こないだ告白ばされたばい」
「え!?」
なにそれ!すごい少女漫画みたい・・、ミスコン優勝者に告られるなんて…。っていうか、あたしと千歳よりも山本さんと千歳の方がよっぽどお似合いな気が…
「ばってん、断った」
「え!…あ、そうか…。そうだよね」
「名前ってたまにボケてるばいね」
「・・・・・」
あたし今すごい失礼なことしたんじゃ…。なにが『え!』だよ。アホか
「俺は名前一筋たい」
「…うん」
「名前?」
「千歳、ありがとう」
あたしも好き、って返事ができない自分が少し嫌になった。いつまで千歳に不毛な思いをさせるんだろう。ごめんねって言いたかったけどそしたらあたしは完全に最悪な女になるだろう